コンビニ離れの原因は「値上げ」ではない

黒坂岳央です。

「高すぎてもうコンビニには行けない!」

最近、こうした意見がニュースやSNSで目立つ。主な原因としては、値札上の価格上昇、シュリンクフレーションといった「商品値上げ」とされる。本当だろうか?

よく見ればコンビニの売上自体は伸びている。ならば離れなど起きていないようにも見える。この問題は単に「値上げ→ユーザー離れ→コンビニがダメ」という単純な構図ではないのだ。

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売上増はインフレによるかさ増し

まず押さえるべきは、名目売上である。売上高は「客数×客単価」で決まる。インフレ局面では客単価が上がりやすいため、客数が減っていても売上は伸び得る。つまり「売上が増えているから離れはない」という反論は、統計的には成立しない。

客数は微減傾向にある。公表統計でも「売上は伸びているのに客数は伸びない」という状態が続いている。特に痛いのは、コンビニの生命線である「朝食・軽食」領域だ。おにぎり・パンといった定番カテゴリは、以前ほど“習慣買い”されなくなっている。つまり、客数は「微減」だが、購買の中身はより速く劣化している可能性がある。

売上は増えているのに、客数が伸びない。これはコンビニの健康状態が良いというよりインフレによるかさ増しであると考えられる。

コンビニ離れ最大の理由は「価格」ではない

コンビニ離れの理由として、真っ先に挙げられるのが価格である。実際、おにぎりは平均20円値上げ、弁当も体感で1.5倍近い水準になった。これを見て「もう無理」と感じるのは自然である。

しかし、価格だけで説明するのは不十分だ。なぜならコンビニと競合するスーパーもドラッグストアも同様に値上げしているからだ。それでもコンビニだけが選ばれにくくなっているなら、原因は「価格差」ではなく、生活導線の中での役割の変化にある。

コンビニだけが値上げしたなら一人負けだがそうではないし、「コンビニは近くて便利な代わりに割高」という認識は今に始まったことではなく、何十年も前から変わらない。

では一体、昨今のコンビニ離れは何が決定打なのか。最大要因は代替手段の台頭である。

ドラッグストアは今や、医薬品よりも食品で稼ぐ店が珍しくない。もはや「安い日用品の店」ではなく、小型スーパー化している。まいばすけっとは1000店舗超、TRIAL GOのような小型・省人化店舗も拡大している。徒歩3〜5分圏内に複数の選択肢がある環境では、コンビニの最大の強みだった「近くて便利」という機能性が消えつつある。

この仮説を裏付ける統計もある。ドラッグストアが食品を強化した地域とそうでない地域で、コンビニの客数推移を比較した実際、ドラッグストアや小型スーパーが増えた地域ほど、コンビニの存在感は薄れる。これは価格競争ではなく、生活導線の奪い合いだ。これは代替手段の台頭が、単なる相関ではなく、離脱の直接要因であることを示唆する。

ここで起きたのは、価格競争ではない。生活導線の奪い合いである。消費者は「コンビニに行かない」ではなく、「コンビニに行かなくても困らない」状態になったのだ。

客数は減らないが利益は減るカラクリ

もう一つ重要なのが用途分解である。

以前は、朝食・昼食・夜食・日用品までコンビニで完結していた。ところが今は、朝食は家で用意し、昼はスーパー惣菜、夜食はドラッグストア、日用品はAmazonやドンキで済ませる。こうして生活が分解されると、コンビニは「急場しのぎ専用」になっていく。

こうなると客数統計だけでは実態がわからなくなる。コンビニに行く回数は前と変わらないが、「目的買い」が進んだ結果、買う点数が減る。結果として、売上の伸びが鈍るのだ。

つまり、コンビニ離れの本質は「来店の消滅」ではなく「点数の減少」なのだ。

シュリンクフレーションは”心理コスト”を上げる

さらに、シュリンクフレーションへの不信も無視できない。容量減少は数値以上に不満を生む。「高い」よりも「騙された」という感情が残るからだ。SNSで拡散されることでブランド毀損も加速する。

シュリンクフレーションは直接的な離脱要因ではなく、「コンビニ=割高」というイメージを固定化させる触媒として機能している。実購買行動への影響は限定的だが、ブランド毀損による長期的な客離れリスクは無視できない。特に情報感度が高く、価格比較を当然のように行う若年層にとって、心理的な反発は行動を変える。

「コンビニ離れ」は起きているが「値上げ」が決定打となったというより、コンビニ代替店舗の増加など複合的な理由もあるだろう。筆者は地方に住んでいるがコンビニのすぐ隣にドラッグストアやスーパーがあるので、まったく同じ目的買いなら安い店舗への引力を感じる。

もちろん、コンビニのすべてがすぐさまダメになるわけではないが、店舗の多様化もあり、財布の紐が固い消費者は「近くて便利」という理由だけではこれまで手軽さでコンビニを使わなくなっていくだろう。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。