90歳女性が心不全で死亡し遺族が2000万円の損害賠償請求は現代社会の縮図か

2024年6月に兵庫県西宮市の谷向病院で入院中だった高齢女性が死亡した事案をめぐり、遺族が医療法人「喜望会」を相手取り提訴した。だが、90歳という高齢や誤嚥後の状況を踏まえると、結果責任を直ちに医療過誤と結びつけることには慎重な検討が必要だとの指摘も出ている。

【参照リンク】入院後の90歳女性に表れた心不全の症状、検査や治療薬を処方しておらず「適切な治療怠った」…遺族が2000万円の損害賠償求め 読売新聞

  • 20日、遺族は医療法人「喜望会」に対し、約2000万円の損害賠償を求めて神戸地裁尼崎支部に提訴した。
  • 女性は2024年6月、自宅で食事を喉に詰まらせて入院。その後、心不全の症状が現れ、約3週間後に死亡した。死亡時は90歳だった。
  • 原告側は、心エコー検査が実施されず、心不全治療薬も処方されなかったことが死亡につながったと主張している。
  • しかし、誤嚥後の高齢患者では全身状態が急速に悪化するケースも少なくなく、心不全の増悪が直ちに検査不足や治療怠慢によるものと断定できるかは争点となる。
  • 高齢者医療では、侵襲的検査や強力な治療が必ずしも予後を改善しない場合もあり、患者の年齢や基礎疾患、全身状態を踏まえた総合的判断が求められる。
  • 病院側は訴状が届いていないとしてコメントを控えているが、今後は診療経過や当時の医学的判断の妥当性が法廷で検証されることになる。
  • 医療関係者を中心に、現場の実情を無視した安易な「結果責任」論に懸念を示す声があがっている。
  • 医療の限界を理解せずに訴訟に踏み切る風潮が若手医療者の意欲を削ぐと指摘し、冷静な議論を求める声や、高齢者救急の構造問題に触れつつ、個別医療機関だけに責任を帰す議論に疑問を呈した。
  • 原告側の主張をそのまま医療過誤とみなすことへの慎重論が目立ち、医療現場への過度な萎縮効果を懸念する声が広がっている。

本件は、超高齢社会における医療の限界と責任の範囲を問う事案でもある。90歳の誤嚥後患者の死亡をどこまで医療機関の過失として認定できるのか。感情論や結果論ではなく、現在の医学水準と具体的状況に基づく冷静な司法判断が求められている。

imacoconut/iStock

コメント投稿をご希望の方は、投稿者様登録フォームより登録ください。

コメント