高市早苗首相が27日の衆議院予算委員会で行った皇位継承問題についての答弁は、台湾有事についてのそれと同じように、繊細な神経で緻密な言葉遣いで扱うべき問題を、酒の場でのおしゃべりレベルの感覚で扱ったトンデモ大放言だった。

高市首相 自民党HPより
これまでの首相が内閣官房と緻密に打ち合わせて言葉を選んで論じ、その積み重ねが政府見解となってきたものを、粗雑にぶっちゃけトークで扱うことは憲政の土台をゆるがす暴挙だといっても言いすぎではない。それを分かりやすくて良いとか弁護するのはもってのほかである。
首相は「(皇位は)皇統に属する男系男子に限る」「過去の女性天皇を否定することは不敬にあたる」「皇位が女系で継承されたことは一度もない」「有識者会議の報告書でも、皇統に属する男系の男子に限ることが適切とされている。政府も私も、この報告を尊重している」と、2021年の政府の有識者会議の報告書を引用する形で述べた。
これは、高市首相が有識者会議の報告書の内容を十分に理解していないことを露呈したもので、このような独自の解釈を総理として述べるのは危なっかしいことといったらない。
報告書は、悠仁さままでは既定路線という前提を念頭に、悠仁さまに男子がなかった場合にどうするのかという議論は、悠仁さまが結婚し家族構成が確定する時期(15から20年後くらい)になってから、その状況を前提に議論をしようとしている。
つまり、現在のルールで悠仁さままでは決まっているのであるから、その先のことをいま議論すると、悠仁さまか愛子さまかといった議論をする人も出てくることを念頭に、いま議論しないことにしたのである。
ただし、公務の担い手が不足する事情もあり、旧宮家の男子を皇族の養子にする道をひらくことと、女性皇族について結婚後も夫や子供は皇族にしないが、本人だけは皇族であり続けることを提案している。
この養子やその子孫や女性皇族は、悠仁さまに男子が得られなかった場合に、ほかに皇族がいないわけだから、有力な皇位継承者の供給源になるかもしれないが、それを明示はしていない。
現実の判断としては、この有識者会議の報告書どおりの処置がとられた場合には、悠仁さまに男子が生まれなかった場合には、旧宮家から皇族の養子になった人やその子孫、女性皇族で皇族として残留した人が有力な候補になる。
ただ、悠仁さまの皇嗣であるから、悠仁さまより年長者は、事故が起きない限りは候補たり得ない。つまり、養子になった本人でなく(本人は悠仁さまと同世代であるから意味がない)、その子孫が有力な候補になる。
しかし、悠仁さまに内親王ができた場合、選択肢となることを有識者会議の報告は、肯定も否定もしていない。
※編集部注記:内親王(ないしんのう)は、日本の天皇の皇女(娘)や女子の皇孫(孫)に与えられる女性皇族の身位・称号。
また、現状においても、たとえば男子皇族が短期間に誰もいなくなった異常事態に遭っては、皇室典範を改正してとりあえず女性皇族が即位するのが適切だろう。ただし、いずれの場合でも、つなぎとしてである可能性も強い。
いずれにせよ、有識者会議の報告書が、悠仁さままでの継承は当然とした上で、そのあとも男系男子が続く場合には、それが優先することを念頭においているのは確かだし、旧宮家からの養子というのが男系男子の伝統を守ることを可能にすることであるのも間違いないが、悠仁さまに男子がいなかった場合、また、その後断絶した場合に女帝や女系を否定して男系男子に拘り続けるかどうかまでは踏み込んでいないのである。
また、女帝を認める場合に、つなぎとしてだけなのか、そうなったら女系も容認してもいいのかは将来の世代が議論すればいいことである。
また、その時点で悠仁さまの女系子孫とか愛子さまや佳子さまの子孫を皇族とすることについて、全面否定しているわけではない。実際問題としては、旧宮家の男子を養子にして、それがうまく機能して、国民も歓迎するものになるかどうかはやってみないと分からないのである。

愛子内親王と悠仁親王 宮内庁HPより
また、いまは、たまたま愛子さまや佳子さまの人気は高いが、たとえば20年以上経過してもどうなのかは分からないから、現状での支持率みたいなものはほとんど意味もない。
高市首相は、有識者会議が「皇統に属する男系男子に限る」としているといったが、現状において、悠仁さまに男子がなかった場合に女系の可能性を全面否定して旧宮家からの養子以外には皇位を継承させないといっているわけではない。場合によっては、悠仁さまの女子や愛子さまや佳子さまの子孫による継承を全面的に否定するよりは、可能性を残しておく方が各党にとって結論を得やすいともいえる。
また、高市首相は「過去の女性天皇を否定することは不敬にあたる」として女帝を容認するようなことをいったが、これはまさに有識者会議はそれをいまいうと、愛子天皇論を勢いづかせる危険性もあり、あえて議論を先延ばしにしたものを『パンドラの箱』を開けて愛子天皇論を勢いづかせるもので、誠に思慮のない発言だった。
いずれにせよ、皇位継承問題でも台湾有事でもほかの重大な問題について、これまで具体的な議論の俎上にのせることをあえて避けてきたものを片っ端から議論をはじめて国論の分裂や国際紛争のたねをまくことは国益を重大に毀損する。
こういうセンシティブな問題、憲法解釈にかかわる問題などは、個人の感想は封印し、事前に内閣官房や関係官庁、与党とも十分な学習、すりあわせをしてからことに当たると首相が誓うことが絶対に必要である。
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