イラン新指導者が「徹底抗戦」宣言:ホルムズ海峡封鎖で対イラン戦争は長期化か

イランの国営テレビが12日、新最高指導者モジタバ・ハメネイ師のものとされる声明を読み上げた。米イスラエル軍の2月28日の攻撃で父アリ・ハメネイ師が死亡した後、後継者就任後の初の公的メッセージと位置づけられる。声明は対米・対イスラエル強硬路線を鮮明に打ち出す一方、本人が映像や公の場に姿を見せなかったことで、健康状態や所在を巡る観測も広がった。

  • 声明は国営テレビの司会者によって代読され、モジタバ師本人の映像や生出演は確認されなかった。初の公的発信と位置づけられる一方、姿を見せない異例の形式が負傷説や「生存証明」を求める臆測を招いていると伝えた。前日には、イラン当局者やイスラエル側高官の説明として、同師が戦争初期に軽傷を負ったとの見方も報じられていた。
  • 声明の中核は報復の継続だった。モジタバ師は父やイラン側の「殉教者」の血をあがなうとし、米国とイスラエルへの復讐を誓った。報道各社によれば、南部ミナブの学校攻撃など民間人犠牲にも言及し、報復を優先課題として位置づけた。ロイターは、2月28日のミナブの女子小学校への攻撃で160人超が死亡したとするイラン側主張や、米側の標的情報が古かった可能性を報じている。
  • ホルムズ海峡を巡っては、声明が「圧力の手段」として封鎖の継続を主張した点が最も市場を揺らした。イランが海峡の閉鎖ないし実質的な遮断を対米・対イスラエル圧力のてことして使う考えを示した。ホルムズ海峡は世界の重要な原油輸送路であり、戦争開始後の混乱で供給網への懸念が一段と強まっている。
  • ただし、海峡封鎖を巡るイラン側メッセージには温度差も見える。最高指導者の声明では封鎖継続を圧力手段として強調した一方、同じ12日にイランの国連大使は、テヘランはホルムズ海峡を閉鎖するつもりはないと説明し、航行の自由へのコミットメントを表明した。イランは軍事・政治指導部の威嚇と外交発信を使い分け、市場と相手国の双方に圧力をかけている構図だとみられる。
  • 在外米軍基地への脅しも一段と強まった。声明は中東のすべての米軍基地の閉鎖を要求し、閉鎖されない限り周辺国の基地への攻撃を続けると警告した。湾岸アラブ諸国に対しても米軍受け入れの代償を示唆する内容だと伝えており、戦線がイラン本土とイスラエルの応酬を超えて、地域全体に広がる危険が改めて意識されている。
  • 声明には、敵が脆弱な地域で「新たな戦線」を開く可能性を示す文言も含まれていた。この表現は、湾岸諸国や海上輸送路、あるいはイランと連携する武装勢力を通じた多方面の圧力拡大を示唆するものとして受け取られた。現時点で具体的な新戦線は明示されていないが、戦争の地理的拡大を示唆している。
  • 経済面の反応は即座に表れた。モジタバ師の発言や周辺海域での攻撃激化を受け、12日の原油先物は急伸し、北海ブレントは1バレル=100.46ドル、WTIは95.70ドルで引けた。別のロイター報道では、戦争開始後にブレントとWTIはそれぞれ36%超、39%超上昇したとされ、金融機関もホルムズ混乱の長期化を前提に見通しを引き上げている。
  • イスラエル側は即座に反発した。ロイターによれば、ネタニヤフ首相はモジタバ師を強く非難し、イスラエルの対イラン軍事作戦を正当化した。新指導部の強硬発信を踏まえて、イスラエルも圧力を緩めない姿勢を示した格好だ。
  • 今回の声明は、後継体制の正統性を国内向けに演出しつつ、対外的には報復継続、ホルムズ海峡の圧力利用、在外米軍基地への攻撃継続という三つのメッセージを同時に打ち出したものといえる。
  • 一方で、本人不在の発表形式と、外交当局による海峡を巡るやや抑制的な説明は、イラン内部でも危機対応の見せ方に揺らぎがあることをうかがわせる。

今回の発信は、単なる就任後初声明にとどまらず、戦争の次段階を占う政治シグナルとして受け止められている。軍事的威嚇、海上交通の圧迫、エネルギー市場への衝撃が一体化しており、今後はイランが実際にどこまで行動を拡大するか、また各国がホルムズ海峡の航行安全と地域の全面戦争回避をどう両立させるかが焦点になる。

イラン モジタバ・ハメネイ師

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