政府は19日から、ガソリンの小売価格をリッター170円に抑制する補助金を決めた。
現在のイラン情勢を受けて、ガソリン、軽油、重油、灯油など、石油製品の供給に不安を感じておられる方も多いかと思います。
原油タンカーがホルムズ海峡を事実上通れない状況が続く中、今月下旬の3月20日頃以降、我が国への原油輸入は大幅に減少する見込みです。…
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) March 16, 2026
「ガソリンについて、小売価格を全国平均で170円程度に、軽油については158円程度、大口産業用の重油については120円程度、灯油については134円程度に抑制するなどの補助を開始します」という高市首相の話を実行すると、財源はいくら必要か。Geminiに聞いてみた。
必要な補助金は8兆円
結論から申し上げますと、現在の「1バレル約100ドル・1ドル約160円」という前提で、これら4油種の価格を目標値に抑え込む場合、年間で約6.5兆円〜8兆円規模という途方もない財源(国費)が必要になります。
なぜこれほどの巨額になるのか、具体的な計算と内訳を解説します。
必要な補助金の単価(1リットルあたり約65円)
今のガソリン価格はリッター160~180円ですが、原油価格は1バレル約100ドルです。これを輸入して精製し、ガソリンにすると約235円になるので、これを170円に抑えるにはリッター65円の補助金が必要です。
現在の今回の措置ではガソリンだけでなく、軽油、灯油、重油に対してもガソリンと同額の補助金(リッター約65円)を出す仕組みになっているので、その3倍の補助金が必要になります。
対象となる燃料の年間消費量(約1,000億〜1,200億リットル)
日本国内で消費されるこれらの燃料の量は膨大です(大まかな年間消費量の目安)。
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ガソリン: 約450億リットル
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軽油(物流トラック・バスなど): 約330億リットル
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灯油(家庭の暖房・農業用ハウスなど): 約130億リットル
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重油(工場・船舶・銭湯など): 約100億〜300億リットル(※補助対象となるA重油などを中心に合算)
これらを合計すると、国が補助金を出す対象の燃料は年間約1,000億〜1,200億リットルにのぼります。
年間の必要財源の計算
補助金 1リットル約65円 × 燃料 約1,000億〜1,200億リットル = 年間6.5兆円〜8兆円。
実際に日本政府は2022年の制度開始以来、原油相場に合わせて補助額を増減させながらこの政策を延長し続け、すでに累計で8兆円近い予算を計上してきました。
しかし、もし「1バレル100ドル+1ドル160円」という状況が定着し、常にリッター65円もの補助を出し続ける状態になれば、たった1年で過去数年分の予算が吹き飛ぶ計算になります。
年間7兆円という規模は、消費税率に換算すると約3%分に相当します。事実上、いま私たちが燃料代として直接払うのを免れているお金を、別の税金(あるいは将来の借金である赤字国債)で肩代わりしているに過ぎないという構図です。
これは1バレル100ドル、1ドル160円の計算ですから、一部のエコノミストがいうようにバレル200ドルになると、15兆円以上の財源が必要になります。
Q. この補助金でガソリンの消費量はどうなる?
結論から申し上げますと、この補助金によってガソリンなどの化石燃料の消費量は、「本来なら価格高騰によって減るはずだった分が減らなくなる(=相対的に高止まりする)」ことになります。
経済学的に見ると、これは市場の「価格メカニズム」を国費で歪めている状態であり、消費行動に以下のような影響を与えます。
節約や効率化のインセンティブ(動機)が失われる
もしガソリンが本来の「1リットル235円」になれば、家計も企業も痛みを伴いますが、同時に強力な「節約行動」が起こります。
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家計: 不要不急のドライブを控える、公共交通機関や自転車を使う、燃費の良い車やEVへの買い替えを急ぐ。
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企業(物流など): トラックの積載率を上げる、共同配送を進める、非効率な輸送ルートを見直す。
しかし補助金によって170円に据え置かれることで、「高いから使うのをやめよう(工夫しよう)」という経済的な圧力がかからなくなり、結果として本来不要だったかもしれない消費まで維持されてしまいます。
値上がりが大きい場合は、1970年代の石油ショックのときのように買い占め・売り惜しみなどの投機が起こり、爆発的なインフレになる可能性もあります。
マクロ経済への副作用:国富の流出(貿易赤字の拡大)
日本は原油のほぼ100%を海外からの輸入に頼っています。消費量が減らないということは、それだけ海外から高い原油を買い続けるということです。
つまり、年間数兆円という莫大な税金(補助金)を投入して化石燃料の消費を支えることは、「日本の国富(国民の財産)を、産油国へ流出させることを国が後押ししている」のと同じ構図になってしまいます。これは現在の歴史的な円安をさらに進行させる要因(ドル買い・円売りの実需)にもなります。
ガソリン補助金より直接給付を
この補助金は、目の前の「生活の痛み」や「企業の倒産」を防ぐための強力な鎮痛剤としては機能しますが、長く使い続けることで「エネルギー消費を減らす」という本来日本が向かうべき体質改善を遅らせ、依存症を長引かせる結果を招きます。
だから経済学者は総需要の抑制でガソリン消費を減らし、困窮している世帯に絞って直接給付する(価格メカニズムは維持したまま救済する)方式への転換を主張しています。







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