2026年はドイツにとってスーパー選挙の年だ。今月8日のバーデン=ヴュルテンベルク州議会選を皮切りに、同月22日にはラインラント・プファルツ州議会選が実施されたばかりだ。、そして9月6日には ザクセン・アンハルト州、 同月20日にはメクレンブルク=フォアポンメルン州の州議会選が行われる。また、ベルリン市議会選挙も同じ時期に行われる予定だ。「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の2大連立政権にとって国民の政権への支持傾向を知るうえで重要な機会だ。

SPD共同党首、ラース・クリングバイル氏(右)とバールベル・バース氏、SPD公式サイトから
今月8日に実施されたバーデン・ヴュルテンベルク州議会選では「緑の党」が得票率30.2%を獲得し、「キリスト教民主同盟」(CDU)との接戦を制し、第1党を維持した。 一方、SPDは得票率5.5%と議席獲得に必要な得票率5%のハードルを辛うじてクリアするという歴史的な惨敗を屈した。一方、極右政党「ドイツのために選択肢」(AfD)は18.8%と得票率を大幅に伸ばした。
今月22日に実施されたラインラント・プファルツ州議会選ではCDUが得票率30.9%で第1党を奪取、ゴードン・シュニーダー州党首が次期州首相に就任する予定だ。一方、同州を35年間君臨してきたSPDは2021年の前回の選挙から約10%得票を減らし、得票率25.9%と州創設以来最悪の結果となった。AfDはここでも約22%と西部ドイツの州としては異例の高得票を記録し、第3党となった。旧東独に強いAfDと言われてきたが、旧西独でもその支持基盤を拡大してきていることがバーデン・ヴュルテンベルク州とラインラント・プファルツ州の両州議会選を通じて改めて明らかにした。
22日はラインラント・プファルツ州議会選と共にドイツ南部バイエル州の州都ミュンヘンの市長選の決選投票が実施された。「緑の党」のドミニク・クラウゼ (Dominik Krause) 氏が、得票率56・4%で現職で社会民主党(SPD)のディーター・ライター (Dieter Reiter) 氏を破り、初当選を果たした。 今回の結果は、1948年以来(1978年~1984年の中断を除く)続いてきたSPDによる市政に終止符を打つ、歴史的な政権交代となった。 ドイツ第3の都市ミュンヘン市において、「緑の党」市長が誕生するのは史上初めて。
上記の2州議会選とミュンヘン市長選の選挙結果は社民党にとって厳しい結果だった。バーデン=ヴュルテンベルク州議会で議席をほぼ失いかけ、そして22日にはラインラント・プファルツ州首相とミュンヘン市長の座を失った。ラインラント・プファルツ州首相の地位を失ったアレクサンダー・シュヴァイツァー氏は選挙直後、「敗北は連邦指導部のせいだ」と述べ、SPD連邦党本部を批判した。
選挙で歴史的な敗北を屈すれば、その後、人事問題が浮上するのは政界の常だ。SPDも例外ではない。クリングバイル党首の場合、副首相であり財務相、そしてSPD党首と3つの重要なポストを握っていることから、連邦政府の要職と党要職を分けるべきだという声が出ている。ただし潜在的な党首候補とみられるボリス・ピストリウス国防相と、ザールラント州首相のアンケ・レーリンガー氏は、いずれも党首就任の意思のないことを明らかにしている。
SPD党首のラース・クリングバイル氏と共同議長のバース氏は、引き続きそれぞれの役職にとどまる意向だ。両氏は23日、ベルリンで開かれた党執行委員会の会合後、連立政権第2党であるSPDを混乱に陥れるつもりはないと明言した。「今は人事ではなく、敗北の根本的な分析に注力する」というわけだ。党執行委員会もこの見解を共有しているという。27日には、党指導部、SPD所属の州首相、地方政治家らが再び会合を開き、議論を行う予定だ。
ティム・クリュッセンドルフ幹事長、マティアス・ミアシュ議会会派代表、ピストリウス国防相らは、党指導部を公然と支持した。SPDの方向性をめぐる議論では、「国民はSPDが労働者階級よりも福祉受給者を優先していると考え出している」という意見が聞かれる。例えば、「国民はもはや我々を信じていない。これは我々にとって警鐘だ」と、SPD議会会派内の保守派グループであるゼーハイマー・サークル氏は警告している。
フランクフルター・ルントシャウ紙の報道によると、SPD内部ではクリングバイル氏に対する批判が依然として根強く残っている。連邦議会選挙後、迅速に議会会派の議長職を確保し、権力を掌握したとの批判がある。さらに、メルツ首相(CDU)の政策に過度に追随しているという批判も上がっている、といった具合だ。
選挙での敗北とSPD内部の混乱は、ベルリンの大連立政権にとって良い兆候とは言えない。さらに、ウクライナとイランで戦争が激化し、経済が低迷を続ける中、主要な改革案は保留状態にある。
メルツ首相は22日のラインラント・プファルツ州議会選挙直後、ベルリンでSPD幹部と協議し、連立政権の今後の進め方について話し合ったという。「我々は、今後も共に改革の道を歩み続けることで合意した」と述べた。メルツ首相は「我々は決して性急に物事を進めているわけではない。改革は着実に進められており、今後も継続していく」という。一方、キリスト教社会同盟(CSU)党首のマルクス・ゼーダー氏は、SPD内部の左傾化に警鐘を鳴らした。
ちなみに、ラインラント・プファルツ州議会選で得票数が倍増したAfDの筆頭候補者ヤン・ボリンガー氏は23日、「我々が今や労働者の党となったことは、AfDにとって喜ばしいことだ」と述べている。
SPDはザクセン=アンハルト州でも厳しい戦いを強いられており、メクレンブルク=フォアポンメルン州では州首相の座を守らなければならない。SPDが9月に実施される旧東独の両州議会選で有権者の支持を大きく失うようだと党として存続の危機に陥る。SPDがメルツ政権内で野党色を強めていくことが予想される。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント