朝にニュースを見ると損をする

黒坂岳央です。

最近、ニュース断ちを実践する人を見かけるようになった。英語圏では「News Diet」という言葉もある。筆者自身、仕事柄必要な経済・テクノロジー情報は見ざるを得ないが、芸能人のゴシップ、痛ましい事件事故、炎上系は意識してすべて遮断している。これらの内容を知ったところで気分が悪くなるだけで、デメリットしかないからだ。

とはいえ、ニュースが日課になっている人もいるだろう。株式投資をしている人には毒ニュースの中から必要な情報を抽出する必要性もある。「100%ニュースを見るな」という極論は難しい。だが、同じ見るにしても、朝だけはやめるべきだと思っている。持論を述べたい。

Elena Medoks/iStock

ニュースの大半は価値がない

そもそも論として、まず大半のニュースは見る価値がない。

速報性に価値があるのは、相場を動かすトレーダーや、現場に向かう記者など、ごく一部の職業に限られる。大多数のビジネスパーソンにとって、昨日起きた出来事を今朝知ろうと昼に知ろうと、仕事の成果物の質は何も変わらない。

取引先との雑談でニュースの話題が必要な場合でも、夕方に確認すれば翌朝には十分間に合う。多くの人が「情報収集だ」と言いながら、実態はほぼ暇つぶしになっている。

加えてニュースの内容を見ると、事件・事故・紛争・炎上が大半を占める。これは偶然ではない。メディアはネガティブな情報の方がクリックされ、視聴率が上がることを知っているからだ。

自分も記事を書く側なのでよく分かるが、同じ内容でも、タイトルがポジティブだとほぼ見られないものが、ネガティブに変えると一気に見られたりする。見られないと存在しないのと全く同じになるので、どうしても刺激的なタイトルは避けられない事情がある。

つまりニュースとは構造的に、人間の不安と怒りを刺激するように設計されたコンテンツだ。見るほど陰鬱になるので気分を下げたくない人は、できるだけ避けた方がいい。

筆者は大学生の頃、人生で最も真剣勝負をしていた時期に新聞・テレビ・ネットをすべて遮断した生活を数年間続けた。周囲から見たら情弱人間だっただろうが、精神的には極めて安定しており、人生で最も成長を実感できた時期でもあった。

何か大きなチャレンジをしている人にとって、ニュース断ちは極めて合理的な戦略と言える。

朝は脳のゴールデンタイムである

では、なぜ朝のニュースが特に問題なのか。

人間の脳は起床後2〜3時間、前頭前皮質が最も活性化した状態にある。脳科学的に見て、午前中は創造的思考・問題解決・深い集中を要する作業に最も適した時間帯だ。

筆者は学生時代、この時間を最も難易度の高い科目の勉強に充てていた。社会人になった今も、企画・戦略・原稿執筆など、最も脳を酷使する仕事を午前中に集中させている。朝が躓けばその日の午後はだめになることが多く、逆に朝に快調に進めば午後も調子がいい。その日一日のパフォーマンスは朝が決める。

この最も価値の高い時間帯に、ニュースという「低付加価値なネガティブ情報」を流し込む行為は非常にもったいない。

朝ニュースは時間を奪う

もう一つ見落とされがちなデメリットがある。朝にニュースを見ると、続報が気になって時間が溶けることだ。

心理学で「ザイガルニク効果」と呼ばれる現象がある。未完了の情報は脳に残り続け、解消されるまで注意を引き続ける。朝に気になるニュースを見てしまうと、その続報が気になって仕事中も断続的にスマホを確認してしまう。これは意志力の問題ではなく脳の構造的な反応だ。本来やるべき仕事に充てるべき時間と集中力が静かに削られていく。

情報を追いかけているつもりが、情報に追いかけられている状態になる。特にSNS経由でニュースを入れるのは最悪だ。一次情報がデマに変わり、争いと炎上が際限なく流れてくる。暇つぶしのつもりで開いて、潰しているのは人生そのものだ。

筆者が朝ニュースをやめて得た2つのこと

筆者が朝のニュース習慣を断ったのは数年前のことだ。最初は「朝からの鮮度の高いニュースを見ないと、情報に乗り遅れるのでは」という不安があった。だが実際にやめてみると、乗り遅れた情報で困ったことは一度もなかった。

得たものは二つある。

一つは心の平穏だ。痛ましい事件、戦争の映像、炎上の応酬。見ても自分には何もできないことを朝から脳に食べさせるのは最悪な習慣だ。「知らない方が幸せなこと」は世の中に確実に存在する。戦略的に入れない情報を決めることは情報弱者になることではなく、メンタルを守るための合理的な判断だ。

もう一つは時間だ。朝ニュースの続きを追うことをやめた分、仕事・育児・読書など、直接自分の人生を豊かにすることに時間を使えるようになった。失った時間の総量を考えると、ゾッとする。

では、ニュースはいつ見るべきか。筆者は夕方以降と決めている。主要な仕事が終わり、脳のパフォーマンスが落ちてきた時間帯に、その日のニュースをまとめて処理する。情報の遅延は半日以内に収まり、かつ朝の集中力は完全に守られる。

筆者は時事ネタをテーマに記事を書くことがあるが、夕方にネタを探してプロットを作成し、朝はそのプロットを元に一気に書き上げる。朝にニュースを見たくないからこそ、この順番になった。

朝のニュース習慣を持つ人は一度だけ試してほしい。明日の朝、ニュースアプリを開く前に仕事を始めてみることだ。昼にまとめて確認すれば十分足りる。それだけで午前中の質が変わるだろう。

2025年10月、全国の書店やAmazonで最新刊絶賛発売中!

なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

アバター画像
働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント