トランプのホルムズ逆封鎖:機雷掃海なら自衛隊にも出番を

米国とイランによる21時間もの停戦協議が不調に終わるや否や、トランプ大統領はその報を待っていたかのように、自身のSNSにこう投稿した(以下は4/12の『ロイター』記事からの引用)。

即時発効で、世界最強の米海軍はホルムズ海峡に出入りしようとするあらゆる船舶を封鎖するプロセスを開始する。イランに通航料を支払った全ての船舶を公海上で捜索し、拿捕するよう海軍に指示した。違法な通航料を支払う者に、公海上の⁠安全な通航はない。

アメリカ中央軍も追っかけ「X」に、以下のように少し詳しくポストした。

TAMPA, Fla. — U.S. Central Command (CENTCOM) forces will begin implementing a blockade of all maritime traffic entering and exiting Iranian ports on April 13 at 10 a.m. ET, in accordance with the President’s proclamation. The blockade will be enforced impartially against vessels of all nations entering or departing Iranian ports and coastal areas, including all Iranian ports on the Arabian Gulf and Gulf of Oman. CENTCOM forces will not impede freedom of navigation for vessels transiting the Strait of Hormuz to and from non-Iranian ports. Additional information will be provided to commercial mariners through a formal notice prior to the start of the blockade. All mariners are advised to monitor Notice to Mariners broadcasts and contact U.S. naval forces on bridge-to-bridge channel 16 when operating in the Gulf of Oman and Strait of Hormuz approaches.

フロリダ州タンパ発― 米中央軍(CENTCOM)は、大統領の宣言に基づき、4月13日午前10時(ET)より、イランの港に出入りするすべての海上交通の封鎖を開始する。この封鎖は、イランの港湾および沿岸地域に出入りする全ての国の船舶に対して公平に実施され、アラビア湾およびオマーン湾に面する全てのイラン港湾も対象となる。CENTCOM部隊が、ホルムズ海峡を通過してイラン以外の港湾との間を行き来する船舶の航行の自由を妨害することはない。封鎖開始前に正式な通達を通じて商船関係者に追加情報が提供される。オマーン湾およびホルムズ海峡付近を航行する全ての船員は、航海通報放送を監視し、艦橋間通信チャンネル16で米海軍部隊と連絡を取るよう勧告されている。

12日の『ロイター』記事にある引用だけでは、トランプ氏が一体何をやり始めるつもりなのか判然としなかった。が、米中央軍のポストを読んで、筆者はそれが常人にはとても思いも付かないような妙手であると得心した。これ即ち、イランを逆封鎖することによる兵糧攻めであると。

米中央軍とイスラエル軍による2月末からの13000カ所ともされる猛烈な空爆とミサイル攻撃で、イランの空海軍は壊滅し、制空権も制海権もほぼ失われた。反撃の手立ては残余のミサイルとドローンによる爆撃と機雷だけとなり、国外との物資の往来も陸路とカスピ海を使った脆弱な海路が残るのみである。

が、それでも「イランが勝つ」との主旨を公然と述べる専門家やメディアも少なくないから、そうした人々は米国のCIAやイスラエルのモサドも知り得ない独自の情報源をお持ちなのかも知れぬ。

冗談は措き、窮したイランはホルムズ海峡を航行する船舶への攻撃を示唆、許可した国の船舶のみを通行料を取った上で通す挙に及んだ。ミサイルとドローンによる空からの攻撃は、あるいはPAC-3やTHAADなどの防空システムや迎撃ドローン、または機関砲などである程度防げるかも知れぬ。

が、こと機雷に関しては、敷設場所も数も定かでない上、イラン自身も行方が判らなくなった機雷があるなどの報道すらある。大概はトランプ氏がフェイクメディアと呼ぶ『NYT』などが、イラン発の情報を垂れ流しているケースもあろうから信憑性は定かでない。が、保険会社が手を引くなら動くに動けない。

トランプ氏にとってもホルムズ問題の解決は、政治的にも経済的にも避けて通れない。筆者など、最低でもカーグ島占領かまたは該石油施設破壊でしか、本格的な地上軍派遣なしにイランをして海峡を開けさせる術がないと考えていたが、「逆封鎖」とは。同時に駆逐艦2隻が機雷掃海のため海峡に入った。

これにイランも早速、トランプ氏の逆封鎖に対し「断固として対応する」と警告した。『NYT』より信用できそうな『WSJ』も、「依然として革命防衛隊の高速攻撃艇とスピードボートの60%以上が運用可能であり脅威だ」とのワシントン研究所イラン問題担当のナディミ上級研究員の談話を報じている。

それでも米中央軍は「月曜日朝からホルムズ海峡封鎖を開始する」と発表した。この米国の行動は中露英仏にとって衝撃だろう。中露は同海峡の商船安全確保に向けた連携を促す4月7日の国連安保理決議案を、常任理事国(5P)の特権である拒否権発動で没にした。またNATO主要国たる英仏は同海峡封鎖解除へのトランプの呼び掛けを袖にした。

何れ別稿で詳しく述べるが、英仏には第一次大戦後の「フサイン・マフマホン」「サイクス・ピコ」の両条約と「バルフォア宣言」で中東を線引きし、ユダヤ人入植を進めた当事者としての責任がある。また15年7月に成ったJCPOA(Joint Comprehensive Plan of Action:イラン核合意)は、5P+1(独)がオバマ大統領の主導でイランと締結したものだ。

第1次政権当時の18年にトランプ氏がJCPOAの欺瞞を見抜き、これを離脱してイランへの経済制裁を再開していなかったなら、イランは今ごろ核兵器を完成させて、ヒズボラ・ハマス・フーシ派など代理テロ組織(proxy terrorists)にも供与し、一緒になって世界に脅威を与えていたことは想像に難くない。

何故なら、イラン攻撃直前の米国との協議で、イラン代表は濃縮が60%(JCPOAのMax.は3.67%)まで進んだ核物質を持っていると言って憚らなかった。ウィトコフ氏はその量が核兵器10発分に相当する1000ポンドであり、兵器化に必要な90%までの濃縮は10日も掛からずに可能、と述べていたからだ。

トランプ氏のここ最近のNATOへの(内心では中露にも)怒りは心頭に発していたのではなかろうか。核開発はこの先も空からの攻撃で潰せよう。が、機雷を用いたホルムズ封鎖には、究極的には「地上部隊の派遣:Boots on the ground」による「体制転換:regime change」しか手がない、が定説だ。

だからこそ、この「逆封鎖」と「機雷掃海」が成功裏に進捗することを願う。少なくともJCPOAに加担した米国以外の5ヵ国(英付独中露)には米中央軍に協力する義務があろう。機雷掃海なら日本も国際社会の役に立てる。国会と霞ヶ関は何とか知恵を絞り、自衛隊にも活躍の場を与えるべきだ。

最後に付け加えれば、筆者は一定期間に限って、同海峡の通行料徴収に賛成である。バレル1ドルならリッター1円に過ぎない。但し、国際機関が通行料の徴収を行うこと。それが国際海峡には相応しい。また使途は、この戦争で破壊された資産の復興基金として、イランを含む関係国に公平に分配されるべきと思う。

更に言えば、このアイデアを米国がイランに対して提案することで、停戦交渉を進捗させられる可能性がある。高市総理から、自衛隊の機雷掃海への参加申出と併せて、トランプ氏に提案してはどうだろうか。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント