新人が満員電車が嫌で早くも4月退職して話題に

黒坂岳央です。

4月入社の新人が、満員電車に耐えられず早々に退職した投稿が話題を呼んでいる。

この話に対するSNSの反応には「根性なし」と批判する側と、「日本の満員電車前提がおかしい」と擁護する側だ。

どちらも言いたいことはわからなくもないが、筆者は違った意見を持っている。

O2O Creative/iStock

「根性なし」は妥当な批判か?

「満員電車に耐えられないのは根性なし」という意見についてだ。筆者はこれとは異なる感覚がある。

満員電車への耐性は、個人によってあまりに大きく異なる。何がどのくらい辛いかは個人差が極めて大きい。筆者は大阪に住んでいたのでレベルの差はあれど、通勤ラッシュは「まあそんなもん」と受け入れていた。初めて山手線や総武線に乗ったときは「噂に聞いて怯えていたが、別に耐えられないレベルではないな」という感覚だった(しんどいのは間違いないが)。

一方で自分の親族には満員電車が嫌すぎて「年収が下がってもいいから、リモートワークの仕事を選ぶ」といって転職をした人がいる。満員電車回避と年収を天秤にかけて、前者を選んだことに驚いたが、これほどまでに人によって満員電車の苦痛さは感じ方が違うことを示している。

そして満員電車に難なく乗れるという人も、すべてにおいて耐性があるわけではないだろう。彼らも別の何かには耐えられない可能性が高い。長時間の孤独作業、人前でのプレゼン、締め切りプレッシャーなど、別のストレスには弱い可能性もある。これは単に満員電車への耐性が高いというだけの話だ。

筆者は満員電車にはかなり強いタイプで、片手で読書を持続して毎日通勤に耐えていた。もちろんストレスは感じるが、「耐えられない」とまではいかない。しかし、別のストレスには一般の人より明確に弱いので「満員電車に耐えられない人は根性がない」という指摘はズレていると感じる。

「日本が悪い」も的外れ

「日本は異常」「過密を放置した先人が悪い」という意見もあるが、満員電車を問題の根源と捉える人も少なくない。だが、世界に目を向ければ通勤ラッシュは東京固有の問題ではない。

サンフランシスコでは郊外から片道2〜3時間かけて通勤する人がひと頃話題になってニュースに取り上げられたことがある。また、他国でも東京とはレベル感は違えど、朝のラッシュ時は過酷だ。車通勤ラッシュは電車のように他人とくっつく不快さはないが、地獄のような混雑に耐えるストレスは相当なものである。

大都市圏に人口と仕事が集中する以上、通勤混雑は世界共通の課題でほぼ不可避の現象だ。海外も都市部は同じ事情なので「東京だけの問題」ではない。

満員電車を回避する3つの方法

満員電車を避けたいなら、現実的な手段は3つしかない。

1つ目は、職場の近くに住むことだ。徒歩通勤なら電車に乗る必要はない。この場合、通勤が楽になる代わりに、住居コストが大幅に上昇する。都心の家賃を払い続ける経済力があるなら有効だが、それ自体が高収入を前提とする。

筆者が働いていた会社は千代田区にあったが、「千代田区に住む社員に家賃補助を出す」という福利厚生もあった。徒歩通勤は現実的であるため、1つ目の選択肢に上げた。

2つ目は、リモートワーク可能な職場を選ぶことだ。フルリモートなら通勤する必要はない。だがこれはベテランは可能でも、新人には現実的ではない。

リモートで成果を出すには、仕事の段取り、自己管理能力、社内人脈の構築、コミュニケーションの技術など、対面環境でこそ身につくスキルが前提になる。今どき、新人にフルリモートをさせる会社はかなり少数なのでテーブルに置いたが実際は難しい。

そして最後の3つ目は、東京を出ることだ。こちらは長くなるので後述する。

東京に住む損益分岐点

元々東京生まれ、東京育ちの人は除いてわざわざ就職で東京に出てきた筆者のような人間の場合、それぞれ脳内に冷静にそろばんを弾いて来ているはずだ。つまり、「お金、キャリアメリットが上回るから、割高な東京に住む」という選択をしている。

そして東京に住む経済的合理性を判断する基準は、年収の額面だけではない。「今やっている仕事が、地方でも成立するか」という点である。

外資系金融、中央省庁、グローバル企業の本社機能など、こうした仕事は物理的に東京にしか存在しない。これらのキャリアを積みたいなら、東京以外に選択肢はないので、満員電車は参入コストとして受け入れるしかない。

自分自身、会社員時代に複数の外資系企業で働いた。東京でしか作れないキャリアと年収のために、通勤ラッシュは黙って耐えた。結果、地方では得られない年収になったが、それは割高でも東京に住む合理的な投資だったと今でも思っている。

一方、そうでないなら話は変わる。「世帯年収」で600万円前後、かつ同種の仕事が地方でも探せる職種なら話は別だ。地方移住によって住居費・生活費が大幅に下がり、支出削減が収入減少を相殺する。満員電車とも無縁になる。通勤時間が浮いた分、副業や家族との時間に充てることもできるだろう。こうなると東京出身者以外は地方へ帰るのも合理的選択となる。

かつては「ボロくて狭くても駅近の格安物件」という都内居住のコスパ戦略が存在した。しかし東京の不動産価格は今や国際水準に近づきつつあり、その抜け道は急速に消えている。中途半端な年収で都内に居座り続けることのコストは、年々高まっている。

東京に住む意味があるのは、東京でしか実現できない仕事をしているか、あるいは東京での生活コストを十分にカバーできる高収入を得ているかのどちらかだ。それ以外で東京にしがみつくのは、経済的にはメリットがあると言えない。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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