シニアは海外より国内旅行に行きなさい

内藤 忍

定年を迎えたり仕事が一段落したシニア世代がやりたいこととして上位に上がってくるのが海外旅行です。

マチュピチュ、サグラダ・ファミリア、アンコールワットといったずっと憧れていた海外の観光地に行ってみたいという気持ちは良く分かります。

しかし、クオリティ・オブ・ライフという観点から考えると、シニアになればなるほど海外よりも国内旅行を選択すべきではないか?これが私の経験に基づく意見です。

海外旅行でまず考えるべきはリスク管理です。

シニア世代にとって、長時間のフライトや時差ボケは想像以上に体に負担をかけます。現地に着いてからも合わない水と食事で体調を崩したり、帰国してからも時差ぼけが取れず生活のリズムが戻らないと言った事態は珍しくありません。

また海外での急な体調不良や怪我に対応するストレスとコストは国内とは比較になりません。

日本国内であれば言葉の壁もなく、世界トップレベルの医療体制に守られています。海外では医療レベルも不安ですし、費用が保険でカバーされない場合、莫大な請求が来ることもあり得ます。

Zoey106/iStock

年齢を重ねるほど、海外旅行はリスクの高い娯楽になっていくのです。

また、せっかく海外に出かけても、有名な観光地をバックに写真を撮って観光客向けのレストランで現地の名物料理を食べる程度ではリスクに見合った満足度は得られません。

名物料理を食べるなら今や日本国内でも世界中の料理が現地よりもリーズナブルに食べられたりします。むしろ、現地の飲食店より現地らしい本格的な料理が食べられたりするのです。

リアルに風景を見て現地の空気を感じる喜びは行ってみないとわからないのは事実です。しかし、そのために犠牲になる時間やリスクも比較検討すべきです。

また、海外旅行はここに来てコストが急激に上昇しています。

円安とインフレの影響で先進国に行けばランチで数千円、ちょっとしたディナーなら数万円が当たり前となっています。宿泊費用も同様に上昇しています。

移動費用はさらにエネルギー価格の影響も受けて急騰しています。航空運賃だけではなく燃料サーチャージも高騰しています。かといってシニアがコストカットしてエコノミークラスで行くのは健康を考えればお勧めできません。

今の海外旅行は支払うコストに対して得られる快適さや満足度のリターンが見合わなくなっているのです。

国内の高級旅館やオーベルジュに行けば、同じ予算でより大きな満足度を手に入れることができます。日本の各地には日本人ですら知らない素晴らしい観光地が無尽蔵に眠っています。

有名な観光地でなくても、混雑しておらずストレスなく楽しむことができる地域がまだまだ日本にはたくさん残されています。

ただし、これが10代や20代、あるいは子供連れのファミリーとなれば話は変わってきます。

若い世代にとっての海外旅行は異文化に触れて日本を外から客観的に眺める視点を持つ貴重な体験です。言葉が通じないもどかしさや、国内ではありえない旅行中のトラブルを乗り越える経験は大きく成長する機会になります。

シニアの海外旅行を全否定するわけではありませんが、リスクやコストに対して得られる満足度を国内旅行や他の娯楽と冷静に比較すべきだと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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