都心の中古マンションはもはや「バブル」

内藤 忍

日本経済新聞電子版によれば、不動産調査会社の東京カンテイが算出した築10年程度の首都圏の中古マンションのPERは2025年時点で約32倍と過去最高になったそうです(図表も同紙から)。

マンション版のPERはマンション価格を年間の賃料で割って計算しているそうです。

どの程度の広さの物件を対象にしているかは明記されていませんが、数値が最も高い神谷町では約80倍になっています。逆数を取ればグロスの賃貸利回りになりますが、わずか1.25%に過ぎません。

そこから管理費や固定資産税等の費用を差し引けばネットの賃貸利回りはほぼゼロ。場合によってはマイナスになってしまいます。

つまり、お金を借りてこれらの物件を購入しても賃貸利回りより借り入れ金利の方が高くなる「逆ザヤ」だと言うことです。

逆ザヤにも関わらず不動産を購入する目的はキャピタルゲインです。つまり、まだ上がると思うからインカムでは儲からなくても買うという投資判断です。

これは1980年代の昭和バブルの時に見られた現象と同じです。

当時は借り入れ金利が5%以上にもかかわらず、都心の賃貸利回りは1%台に落ち込んでいました。それでも不動産投資ブームがしばらく続いたのは、根強い値上がり期待があったからです。

しかし、このような上がるから買うというマーケットは永遠には続きません。買い手がいなくなり、売り手が出口に殺到すればマーケットは崩れます。

持っていれば持っているほど逆ざやで損が出るわけですから最後は「ババ抜き」になってしまいます。

ファミリータイプは自分で住むために購入する人で利回りに関係なく買う人がいるかもしれません。しかし、一般の投資用物件は借り入れ金利にある程度のリスクプレミアムが上乗せされた水準でなければ投資対象として割に合いません。

借り入れ金利が1.5%としてリスクプレミアム2%であれば、経費差し引き後で3.5%程度の賃貸利回りが必要と考えられます。

マンション版のPERが25倍ならクロス賃貸利回りで4%になりますから、これより高いPERの物件は購入してはいけない割高水準と考えられます

経済紙に掲載されている数字が本当に正しいとすれば、今の都心の中古マンションはもはや購入の価値がある投資対象ではなく、手を出してはいけないと判断すべき局面に来ているのではないでしょうか。

今後さらに借り入れ金利が上昇すれば、イールドギャップはさらに小さくなります。今後の家賃の上昇である程度補えるとしても、積極的に投資できる水準ではありません。

都心の中古マンションの中でも値上がりの激しいタワマンのファミリータイプ物件はもはや「バブル」と言っても過言ではありません。

昭和のバブル崩壊のような大暴落はないとしても、眺望や間取りなどに希少性のある一部の人気物件を除けば、今後価格調整が進むのではないかと思います。

7maru/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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