「証券投資よりも自己投資」という考えの落とし穴

内藤 忍

若い頃からNISAのような税制優遇枠を使い、コツコツと資産を形成することに批判的な人がいます。「自分こそが最大の資産である」という考え方をもとに、投資信託・株式あるいは不動産等への投資を行うことよりも自己成長のために自分自身に投資すべきとの考え方です。

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真っ当な正論のように聞こえますが、私は「自己投資」という耳あたりの良い言葉には危険な落とし穴があると思います。

自己投資と聞いてまず思い浮かべるのは外国語の習得や資格の取得があると思います。また、人脈づくりのために経営者や投資家が集まるイベントに参加するといった活動を思い浮かべる方もいるかもしれません。

確かに今の仕事をレベルアップするための自己投資は即効性があってメリットがある可能性が高いといえます。例えば、

財務の仕事をしていて簿記の資格を取る
不動産の仕事をしていて宅建士の資格を取る

このように仕事にダイレクトにつながるスキルであれば、学んだことをすぐに現場で使うことができます。

しかし、仕事でそれほど使うこともない外国語を習得するために英会話学校へ通ったりアプリ英会話をやったとしても、リアルなビジネスで英語を使っていなければスキルアップにはつながりません。

また、資格の取得としてファイナンシャルプランナーやインテリアコーディネーターを目指す人もいますが、実務経験や実績がなければ資格自体にはほとんど価値がありません。

あるいは人脈づくりのために実績のあるビジネスパーソンが集まるイベントに参加しても、自分に相手にアピールできる強みがなければ会場で名刺交換をするだけに終わってしまいます。

つまり自己投資は何に投資をすべきかを決めるのが証券投資に比べて難しいのです。

証券投資であれば、分散投資、インデックス投資、積み立て投資といったベーシックな方法が確立しており、誰でもセオリー通りに行えば結果を出すことができます。

自己投資は自分の将来のキャリアゴールを考え、そこから逆算して今投資すべき分野を考えるという高度な未来予想と戦略設定が必要です。

だから中途半端に自己投資にお金をかけても、ほとんどの場合無駄になってしまう可能性が高いと思います。

私自身アメリカのビジネススクールで2年間学ぶ機会もありましたが、それよりも自分の退路を断って社員4人のスタートアップ企業に飛び込んで、必死にもがいたことが最大のキャリア形成になったと考えています。

そこから実感したことはキャリア形成に必要な能力は逃げ場のないギリギリの環境に自分を追い込んで、必死にもがいている中でしか手に入れることができないということです。安定した仕事という逃げ場を確保しながら、片手間にスキルアップを目指しても多くの人の自己投資は単なる自己満足に終わってしまいます。

自己投資の価値を100%否定はしませんが、やり方を間違えると自己投資どころか、単なる時間とお金の浪費に終わってしまいます。

であれば、まずは確実に投資の成果が得られる可能性が高い証券投資から始めるべき。これが多くの人にとって最適な投資だと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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