国内債券市場で金利上昇が止まらない。指標となる新発10年物国債利回りは一時2.73%まで上昇し、1997年5月以来、約29年ぶりの高水準を付けた。5年物国債利回りも2%に達し、過去最高水準となった。「金利が上がる」というより、「債券を買う人がいない」という状態に近い。

原油高によるインフレ懸念、日銀の早期利上げ観測、政府の補正予算編成による財政悪化懸念、さらに米英など海外金利の上昇が重なり、日本国債にも売り圧力がかかっている。こうした局面で個人投資家はどうすればいいのか。
最大の原因は「国債の暴落」
まず確認すべきなのは、金利上昇と債券価格の関係である。金利が上がると、既に発行されている低利回りの債券は魅力が薄れる。そのため価格が下がる。つまり、長期金利の上昇は、国債の暴落を意味する。
特に10年債、20年債、30年債のような長期・超長期債は、金利変動に対する価格変動が大きい。個人投資家が長期債ファンドや先進国債券ファンドを持っている場合、基準価額が下がる可能性がある。金利上昇局面では、債券も立派なリスク資産になる。
日銀利上げと財政不安が同時に来た
今回の金利上昇には、国内要因が大きい。日銀では、早期利上げを支持する声が強まりつつある。物価上昇が続くなか、政策金利を引き上げるべきだという見方が増えている。市場では、6月にも利上げがあるのではないかという思惑が広がった。
一方で、政府は物価高対策として補正予算案の編成を検討していると報じられている。家計支援は政治的にはわかりやすいが、財政拡張は国債増発への警戒を招く。国債の発行が増えれば需給が悪化し、投資家はより高い利回りを求める。
つまり、日銀は金融引き締め方向、政府は財政拡張方向に動く可能性がある。これは金利上昇を招きやすい組み合わせである。
住宅ローン利用者には厳しい局面
長期金利の上昇は、住宅ローンにも影響する。固定金利型の住宅ローンは、長期金利の動きに連動しやすい。これから住宅を購入する人にとっては、借入コストが上がる。すでに固定金利で借りている人には直接の影響は小さいが、変動金利型の利用者も安心はできない。
変動金利は短期金利の影響を受けるため、日銀が利上げを進めれば、いずれ返済額に影響が及ぶ可能性がある。特に借入額が大きい人や返済余力が小さい人は、金利上昇を前提に家計を見直す必要がある。
不動産価格にも注意が必要だ。金利が上がれば、住宅ローンで買える価格は下がる。これまで低金利に支えられてきた都市部のマンション価格にも、徐々に冷却圧力がかかる可能性がある。
株式投資家も無関係ではない
金利上昇は株式市場にも影響する。きょうの日経平均は1244円安となった。企業にとっては借入コストが上がる。特に有利子負債の多い企業、不動産、建設、電力、通信などの金利敏感株には逆風となりやすい。
一方で、銀行や保険などの金融株には追い風になる面もある。預貸利ざやの改善や運用利回りの上昇が期待されるからだ。ただし、金利上昇が急すぎて株価全体が下落すれば、金融株も無傷ではいられない。
個人投資家にとって重要なのは、「金利上昇で何が上がり、何が下がるか」を単純化しすぎないことだ。金利上昇は、企業業績、為替、不動産、消費、財政に広く波及する。
個人投資家がやるべきこと
いま個人投資家がまずやるべきなのは、ポートフォリオの金利リスクを確認することだ。長期債券ファンド、REIT、高配当株、不動産関連株、借入依存度の高い企業に偏っていないかを見直したい。特に「安定資産」のつもりで持っている債券ファンドが、実は金利上昇に弱い商品であることは少なくない。
次に、現金比率を一定程度確保することだ。金利上昇局面では、無理にリスク資産を買い急ぐ必要はない。短期金利が上がれば、預金や個人向け国債などの利回りも徐々に改善していく。かつてのように「現金は何も生まない」とは言い切れなくなっている。
また、外貨建て資産を持つ場合は為替リスクにも注意が必要だ。米金利の上昇は円安要因になりやすいが、世界的な株安が起きれば円高に振れる可能性もある。金利だけを見て外貨資産に飛びつくのは危険である。

「金利のある世界」に戻った
日本の個人投資家は、長いあいだ超低金利に慣れきってきた。住宅ローンも、株価も、不動産価格も、国の財政も、「金利がほとんどない世界」を前提に組み立てられてきた。
しかし、10年国債利回りが2.7%台に乗せ、年内3%という声まで出てきたことで、その前提は大きく変わりつつある。これからは、金利を無視した投資は成り立たない。債券は安全資産とは限らず、不動産は永遠に上がるとは限らず、高配当株も万能ではない。
個人投資家に必要なのは、慌てて売買することではない。自分の資産が金利上昇にどれだけ弱いのかを確認し、過度な借入や偏った投資を避けることだ。「金利のない時代」は終わった。投資家は、ようやく戻ってきた金利の重みを、もう一度学び直す必要がある。






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