食生活から要介護化する超高齢化社会

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要介護以前に崩れ始めた高齢者の自立生活

介護崩壊を叫び、書き続けている筆者であるが、最近の報道を見ていると、要介護になる以前から、日本の高齢者の自立生活が崩れつつあるように見える。

何が気になるかというと、最近「スーパーの値引き品に高齢者が群がる」「ときに値引きシールを貼れと要求する」など、トラブルにまでなる事例が各地で起きているという報道だ。

そう言われると、確かにこの1、2年、仕事帰りには以前はあったパンの値引き品などがほとんどない。弁当や惣菜は、ボリュームのある若い人向きのものばかりが残っている。物価高、仕入れ値上がりのため、その日に売り切らないといけない焼き立てパンや惣菜弁当は、製造数を絞っているのかと思っていたが、どうやらそれだけではない。「高齢者による買い占め」もあるらしい。

確かに第二次安倍政権以来、「ダメノミクス」と言われるように、悪いインフレ、スタグフレーションを通り越してスクリューフレーション的な不景気、さらに異次元の超円安で、超物価高が進んでいる。

筆者が好きなニューコンミート缶詰は、2010年代は100円ショップで100円で買えたが、今や300円前後、3倍である。乳酸菌飲料ピルクルも100円だったものが、今では140円を超える。5割増しである。そのため、実質給与そして年金の目減りが言われている。

問題は物価高だけではなく「自炊しない生活」である

とはいえ、高齢者は仕事をしていないなら丸一日暇である。もちろん、身の回りの衣食住のセルフケアはしなければならないが、洗濯は乾燥まで自動にできるから入れるだけ。掃除もロボット掃除機があれば、だいぶ手が省ける。残るは食事である。暇なのだから、自炊すれば安く済む。

筆者が学生時代の90年代の話ではあるが、奨学金とバイト代、かなり頑張って稼いだが、月収約16、7万円程度、仕送りなしでアパート家賃などを全部自弁しても、自炊でちゃんと三食まともに食べられたし、好きなものを買ったり、クラブ活動や旅行もできた。ちなみに、都市部の生活保護基準がこれより少し少ない程度の金額である。

最近見かけた気になる調査で、特に女性の「料理嫌い」が増えているらしい。男性はもともと料理が好き、あるいはできる人が少ないが、単身ならできないものはできないから、必然的に外食や買い食いになる。

そこに、自炊したくない、できない女性が「参戦」し、さらに夫婦でも妻が料理したくない、できないと「参戦」してくる、という構図が見えてくる。自分の食生活を自分でセルフケアできない高齢者、「食生活要介護者」が増えているのではないか。

訪問介護の負担を重くする「食生活要介護者」

この1、2年で訪問介護ホームヘルパー不足、そしてその事業所の廃業・倒産が急増している。特に深刻と言われるのが、家事援助、つまり炊事・掃除・洗濯だ。ゴミ屋敷か、それに近い家に住んでいる人はだいぶ増えている印象だが、掃除はしなくても死なない。洗濯も、洗濯機は寿命が通常数年なので、ほとんどが全自動であろうから、せいぜい干すだけである。

結局、家事援助は炊事、食事が問題になる。掃除・洗濯はいつでもよいが、炊事は食事時間に合わせる必要があるから、必然的に需要が集中し、人手不足になる。

訪問介護の利用者は、要介護度が低い、自立に近い要介護1、2で半数以上を占める。一方、その半分が家事援助である。高齢になると目が悪くなったり、手元が振戦、つまりふるえや麻痺で怪しくなったりして、調理が難しくなることもある。

一方で、宅配弁当や下ごしらえ済み食材のミールキット宅配もかなり普及している。自分好みに味付けし、火を通す程度で済む。やろうと思えば、「自分でできることをして、自炊し食生活を自立させる」ことは、不可能ではない社会環境になっている。

赤札争奪戦の先にある介護崩壊

ところが、自炊せず、値下げされた惣菜や弁当に群がり、バトル、奪い合いをする。なんと浅ましい姿か。あるいは、自炊する意欲や気概すらない、ザンネンな姿か。スーパーで赤札争奪バトルができるほど体が元気なうちから、実は意欲減退、自立意欲フレイル、自分でできることをしない要介護化手前になっているのだ。

赤札惣菜争奪戦をする老人たちが、数年後にいよいよ要介護になったとき、炊事してくれるヘルパーはさらに減っている。ヘルパー争奪戦に敗れたら、介護施設に従容として入所するのか。人生会議とやらで「オレはこうしたい」「ワタシはああしたい」と言うなら、その前に、自炊程度は頑張る自律が必要な気がする。

ちなみに、筆者に医療、看護の最初の手ほどきをしてくださった鈴木桂子看護部長が、私に与えてくれた看護の極意は「患者さんにとって重要なのは、自律です」であった。

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