経済安保の観点から自衛隊で主として軽油、ジェット燃料、艦艇用重油などを石炭やバイオ由来の合成燃料を使用すべきです。
ご存じのように石油は9割以上を湾岸から輸入しており、まさに今それが止まって大問題となっています。ですから他で入手可能な石炭、更には廃油やサトウキビの搾りかすなどを原料とした合成燃料を一定数、たとえば3割から6割程度をめどに、あるいは全量採用すべきです。
南アフリカは、1970年代の石油禁輸措置を背景に発展した石炭液化(CTL)などの合成燃料技術を発展させています。現在でも南アフリカのエネルギー大手である Sasol(サソル) は、独自のフィッシャー・トロプシュ(FT)技術を用いて石炭や天然ガスから液体燃料を合成しています。これは長年、同国のエネルギー安全保障の根幹を支えてきました。
南アフリカでは事業として成立しています。
主に石炭を原料にするにしても、石炭は湾岸から調達するわけではないのでリスクの分散になります。最大の輸入先はオーストラリア(約65%)、次いでインドネシア(約17%)です。
AIによれば製造コストは1リットルあたり約300円350円程度と割高です。ですが経済産業省の目標では、水素や調達コストの低減とスケールメリットにより、2040年頃には約200円 / L、将来的な商用化が進む2050年には約170円 / Lとなり、現在のレギュラーガソリンと同等の価格帯まで下がる見通しが立てられています。
自衛隊という大口ユーザーが確実に消費するので設備投資や研究開発も進むのではないでしょうか。使いもしないような戦車や火の出る玩具を買うのであればそれを止めて、燃料代を2倍になってもそれを払う方が経済安全保障の観点からもよろしいのではないでしょうか。
それから海自の燃料費を減らす。3自衛隊で一番燃料費を食っているのは海自です。その海自は護衛艦など不要に30ノット以上の高速をだす設計にしていますが、これを28ノット程度まで減らす。併せて今後は統合電機推進の導入を更に進めるべきです。そうすれば艦艇の燃料費は半分程度に減らせるのではないでしょうか。
今日では30ノット超を出す必要はない。戦後、軍艦の役割は潜水艦との戦いとなった。そして潜水艦相手なら20ノットも出さない。余分を見越しても最高速力は27ノット程度で充分である。奢っても30ノット丁度でればよい。
実戦で30ノット出す見込みはない。既述したように潜水艦との戦いは20ノットも出さない。また潜水艦を避ける、または逃げ切るにも20ノットから24ノットもあれば充分である。
30ノット以上の速力は不要なのだ。実際には額面最高速力の30ノットもほぼ出さない。性能試験として年に一度、1時間だすかどうかだ。
2つめの理由はコストを省ける利点だ。もともと2つで済むエンジンを4つ用意する必要はない。簡単に言えばそういうことである。
エンジンを減らすメリットの方が大きい。建造費が安くなる。交換用エンジンの準備数を減らせる。護衛艦乗員の作業量も減らせる。(*3)メーカー保守の費用も減らせる。さらには護衛艦の船体内も広く使えるようになる。
水上戦でも高速性は不要となった。軍艦同士の戦いも80年代前には射程100kmを超えるミサイル主体となり、魚雷艇ほかの高速艇対処も搭載ヘリコプターで済むようになった。
艦艇の燃料代が半分になり、さらに建造代とエンジンのメンテ費用が下がるのであれば合成燃料が石油由来燃料の2倍になってもさほどの痛手ではないはずだ。
また海自の哨戒機を大幅に減らして、代わりにシーガディアンに置き換えれば燃料費は格段に安くなる。
更に潜水艦で不要となった蓄電池を陸上施設で太陽電池と組み合わせて使えば電気代の大幅な削減になるし、非常時で電力の供給を維持できる。
以下のような取り組みと併せて採用すべきです。
自衛隊基地にペロブスカイト太陽電池 需要創出へ政府施設の活用拡大
政府は自衛隊の基地や駐屯地で、薄くて曲がる次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」を導入する実証実験に着手する。2026年夏からまず沖縄県で始め、全国での導入を目指す。自衛隊をはじめとする政府施設での需要を確保して、開発や普及のスピードアップにつなげる。
防衛省は25年、自衛隊の施設で日中に必要な電力を賄う太陽光発電設備を導入する方針を決めた。その際にペロブスカイトの社会実装に向けた協力も掲げた。災害発生時や有事の際など外部からの電源が途絶えた場合に備えて、必要な電気を確保する狙いもある。
このような努力を行えば、合成燃料が高くてもそれをある程度相殺できます。そのうえで有事に必要な燃料を確保できます。あるいは、今後昨今のイラン戦争みたいな事案が起こったとき民間に融通できる燃料がある程度は確保できるでしょう。更に申せば合成燃料のコストが下がれば原油の中東依存も減らせるでしょう。

Naypong/iStock
■本日の市ヶ谷の噂■
陸上自衛隊ではどこで特殊標章(赤十字)を掲げるか、灯火を点けるか、灯火の色について、作戦行動優先の衛生支援とは何か、 装甲救急車をどこで使うのかすらも決まっておらず、AMVの派生型として導入される野戦装甲救急車についても実はまだ白紙の状態、との噂。
■
Noteで有料記事を公開しました。
装甲車両用CRT(Campsite Rubber Track)、ゴム製履帯こそ日本の防衛輸出に向いている
東洋経済オンラインに寄稿しました。
自衛隊員の自民党大会「私人参加」問題の本質/「国歌だから」では済まない自衛隊の政治利用はますますエスカレートする
殺傷能力を持つ兵器の輸出解禁は「平和国家」と矛盾するのか――軍事の現実から考えたい6つの論点
Japan In Depthに寄稿しました。
自衛隊は自民党の「私兵」か?党大会での国歌歌唱が揺るがす文民統制の根幹
海自「ホルムズ派遣」の死角――イランの飽和攻撃と戦傷医療・防衛体制の欠陥
大人の事情で商業媒体に掲載されなかった記事を、Noteで有料公開します。
馬鹿が戦艦でやってくる! 高市早苗は自衛隊最高司令官の器に非ず。
航空自衛隊新型防弾ベスト「防弾チョッキ、基地警備用、本体(A型)」
Kindleで有料記事の公開を始めました。
装甲車両にCRT(Campsite Rubber Track)、ゴム製履帯を導入するメリット 清谷信一軍事記事 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
暴力装置 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
東洋経済オンラインに寄稿しました。
拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
過去の著作の電子版が発売になりました。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2026年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。









コメント