社会は「子連れ男性」にとても優しい

黒坂岳央です。

「社会は子連れ男性に優しい」という感覚がずっとある。

筆者はどこへ行くにも子供を連れて行くのだが、スーパーへ行くと、見知らぬお年寄りが「かわいいねえ。何歳??」と話しかけられる。店舗で「すいません、本日は子連れで。もしも騒いだらすぐ止めますので」というと、「いえいえ、お気になさらず。子供は元気なのが一番ですよ!」と返ってくる。

家に上がると、「お茶どうぞ。カフェインレスなので子供にも大丈夫」と出される。たとえば奥さんと会話中、旦那さんが子供の相手をしてくれたり、さらに子供へのお土産まで持たされる。

最初は偶然だと思っていた。しかし場所が変わっても、相手が変わっても、同じようなことが起きる。そして気づいた。これは「社会が子供連れに優しいのだ」と理解した。

筆者はこれまでの人生で、見知らぬ他人から優しい配慮を受けた記憶がほとんどない。それが当たり前で、むしろ「若手なのだから目上に気を使え」と教わってきた。そのため、子供が生まれていきなり、相手から優しい気遣いを受ける世界に変わって驚いた。

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社会が優しいのは「子連れの自分」

だがここで調子に乗って「自分は優しくされて当然」などと思うべきではない。冷静にメタ認知をするなら、社会が優しくしているのは「筆者自身」ではなく、「子供を連れている筆者」に対してだ。

ちなみに筆者はいわゆる「イクメン」ではない。妻と自分はそれぞれ別のビジネスを持っており、自分は一日の半分を仕事、もう半分は家事と育児に使っている。

食事を作り、学校の送迎をし、勉強を教え、買い物をし、遊び相手、風呂、翌日の支度をやっている。なので、実態としてイクメンではなく、主夫業に近い立場だ。「男が子供を連れてスーパーで買い物だと近所の印象悪いかな」と思っていた時期もあったが、実際には想定とは逆の扱いを受ける。

子供という存在は強力な社会的証明として機能する。男性が育児をするという行為自体が「期待値を超える」と見なされる社会的文脈がある。

「男は働いて当然」という不文律は誰しも疑いようもないが、「働いて育児をする男」はそれだけで大きな加点要素して解釈される。これは不公平に聞こえるかもしれないが、社会はそうした力学で動いていると感じる。

筆者は会社で死にそうになりながら働いていた時に、誰かに優しい手を伸ばされた記憶はない。上司は筆者を育てようと厳しくも愛ある指導はしてくれたが、あくまで仕事で結果を出すための成長を期待しての文脈に過ぎない。

だが、子供たちと出かけているだけで声をかけられ、感心される。同じ人間が、何を持っているかで周囲からの扱いがまるで変わることに率直に驚きを隠せなかった。

男の一人行動はうっすら警戒される

もちろん、本質的に筆者が愛されているわけではないため、子どもと離れて一人になると一瞬で警戒される対象に戻る。

子供を妻に預けて一人でショッピングモールに行くと、誰一人話しかけてこない世界へ戻る。いや、それどころか自分は周囲に対してうっすら警戒すらされているだろうと思う。そのため、いつもよく行くイオンモールでは子連れの時は堂々と歩けるが、妻に子供を預けて一人で買い物をする時はなんとなく居心地が悪い。

これは被害妄想ではない。親の立場になると、その感覚が正しいことがわかる。自分の子供の近くに見知らぬ中年男性が一人でいたとして、何も感じないかと言えば嘘になる。不審者と一般男性の違いを客観的に見分けるシグナルが、一人行動の男性には存在しない。独身時代にはこんな発想を持たなかったが、子を持って初めて周囲側の視点を理解できた。

言うまでもないが、独身男性を批判したいわけではない。一人で行動している自分が周囲から警戒されることに不満もない。何より自分自身、ずっとその立場だったからだ。

思うに子連れ男性が受け取る社会からの配慮は、「あなたが良い人だから」ではない。「あなたが今、安全な人というシグナルを発しているから」だ。子供はそのシグナルとして機能している。子連れの男性が凶器を振り回したり、テロをすることはほぼ100%ないからだ。周囲も安心して優しくなれるのだろう。

社会が優しいのではない。社会的シグナルを発せられる立場の人間に対して、社会は優しいという厳然たる事実があるだけだ。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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