28日に迎賓館でフィリピンのマルコス大統領と会談した時の高市首相の振る舞いに、「絶望感しかない」と立憲の田島麻衣子参院議員が不快感を示したそうだ。報道を読むと、高市氏はマルコス氏と「ワンダフル・トゥナイト」をデュエットしたとある。

マルコス大統領夫妻を出迎える高市首相 首相官邸HPより
5月の訪韓で再会した李在明大統領が1月に訪日した際、二人で競演したドラム・パフォーマンスにも、この議員には「絶望感しかない」のだろう。が、首相がこの大統領二人とこうまでして関係強化を図るのには、共通する重要なキーワードがあるのだが、果たして田島議員はご存じだろうか。
それは「軍事情報包括保護協定:GSOMOA」、国家間で軍事情報を交換する法的拘束力のある協定だ。日本は既に、米・韓・インドと結んでおり、米国はフィリピンとも24年に結んだ。今般、マルコス氏と高市氏は、GSOMIA交渉で正式に合意したのである。「デュエット」したくなる気持ちも判る。
日韓GSOMIAは文在寅政権下で危機に瀕した。19年に日本が韓国に対して先端材などの輸出厳格化を図った際、韓国が報復措置としてGSOMIAの破棄を決定したのである。結局、米国の逆鱗に触れ、失効直前で維持に転じたものの、韓国は今も「いつでも破棄できる」との立場を取っている。

思想的背景や外交センスの有無すら判然としない在明氏は、北の明瞭な下僕だった在寅氏よりも不気味で扱い難い。韓国からの北の情報は、日米韓のGSOMIAがあってこそ迅速に機能する。例えば秒を争うミサイル発射情報が、韓⇒米⇒日の順で流れるのと、日米同時に流れるのとではスピードが段違いだ。
関係強化のためならドラム共演だろうとデュエットだろうと厭わない、それが高市流関西のおばちゃん外交なのである。高市氏は来月、インドを訪問する。昨年は日印GSOMIA10周年だった。安倍氏の遺産「FOIP」(自由で開かれたインド太平洋)の枠組みは、高市外交の要であるのみならず、ホルムズ海峡問題に悩む国際社会にとっても重大な関心事だ。
どの国にも偏らないインドの外交は、目に見えて「狡猾」な中国やイランのそれとは違って、実に「巧妙」だ。米国の顔を立ててロシア産原油を絞ったかと思えば、またちゃっかり増やす。ベネズエラ原油の輸出先上位にも、いつの間にか名を連ねているといった具合である。
石破政権下の昨年8月末に訪日したモディ首相への答礼訪問になるが、実に好いタイミングと思う。ぜひインド映画張りのダンスなど披露してはどうだろうか。
安倍外交を継承する高市外交に関連し、後段では安倍政権最後の年に当たる18年に調査が開始されたあるシンクタンクによる、「米国」「中国」「日本」「EU」「インド」に対するASEAN諸国の感度調査報告の結果を、紙幅の許す範囲で紹介する。
「ISEAS – Yusof Ishak Institute」の調査報告
それは「ISEAS – Yusof Ishak Institute」(ISEAS)なるシンガポールのシンクタンクの調査である。偶さか目にした米メディア『Semafor』の6月2日のニュースレター記事に、左寄りには珍しく以下の記述があったのだ。
アジア諸国の中で、中国が、日本を「新軍国主義」国家――戦時中の過去を恥じることなく反省もしていない国――と位置づける主張するのを信じる国はほとんどない。シンガポールに拠点を置くシンクタンクの最新調査によると、東南アジアでは日本が最も信頼されているグローバルパワーであり、EUや米国を大きく引き離し、中国ははるか後方に位置づけられている。
この一文は香港紙『South China Morning Post:SCMP』からの引用だったので、まだ無料だった「国安法施行」当時によく参考にしていた、現在は有料の『SCMP』に当たり、「ISEAS」に辿り着いた次第。この名称さえ判れば全文を読む必要はない。
因みに『Semafor』の記事にはこんな一文もあり、高市・マルコスによる「GSOMIA交渉合意」を中国が気にしていることをしっかりwatchしている。
中国のプロパガンダ機関である『新華社』は、東京とマニラの軍事協力関係が「地域の平和と安全に暗い影を落としている」と非難した。日本の産業界は、北京がレアアース輸出に対するより広範な禁止措置を講じる可能性があり、それが東京にとって「重大な経済安全保障上の懸念」となることを懸念している、とある専門家が『SCMP』紙に語った。
その「ISEAS」調査はPDFで80頁だが、グラフや図が多く文章は半分ほど。目次は「調査について」「方法論」「調査ハイライト」「第Ⅰ部:回答者プロフィール」「第II部:地域的展望と国際情勢の見解」「第III部:主要国の地域的影響力と指導力」「第IV部:米中対立と東南アジアへの影響」「第V節:信頼の認識」「第VI部:ソフトパワー」となっている。
本稿では、「方法論」と日本がトップを維持している「第V節:信頼の認識」について要点を記す。
方法論
8回目となる今年の調査は26年1月5日から2月20日までの6週間に実施された。使用言語は、英語、インドネシア語、ビルマ語、クメール語、タイ語、ベトナム語、テトゥン語の7言語である。オンラインで実施した調査は43問で構成され、回答には20〜35分を要した。
回答者は5つのカテゴリー、即ち (a)学界・シンクタンク・研究者 (b)民間セクター (c)市民社会・NGO・メディア (d)政府職員 (e)地域や国際機関の人員、からなるASEAN加盟国民2008人で構成され、更にASEANに関する知識や時事問題への関心度について審査された。
ASEAN加盟国全体の平均数値を算出するため、すべてのASEAN加盟国の回答に均等な重み付けが適用された。これにより、ASEANの意思決定プロセスは地理的・人口規模に関わらず加盟国が平等に発言権を持つことになるため、各国の回答が均等に代表されることが保証される。
地域の主要大国の信頼と不信の順位
東南アジアに影響を与えうる主要5か国:「日本」「EU」「米国」「中国」「インド」への「信頼」と「不信」の順位は、肯定的・否定的な回答を統合した5点リッカート尺度(「非常に自信ある」から「不信任」まで)に基づく。「ノーコメント」の回答は分析から削除している。
日本(65.6%)は回答者の中で最も信頼されている主要国であり、次いでEU(55.9%)、米国(44.0%)、中国(39.8%)、インド(38.5%)が続く。
- 日本の信頼度は昨年の66.8%から僅かに低下したが、他の主要国に対して依然大きなリードを保っており、東京の地域関与に対する地域の一貫した信頼を反映している。国際法を尊重し擁護する責任ある利害関係者としての長年の評価が、高い評価の主な理由である。
一方、日本に対する懐疑は他の主要国と比べ限定的だが、一部の回答者は日本が国内の政治的優先事項や東北アジアの隣国との複雑な関係に制約されていると見ており、それが世界的なリーダーシップを十分に発揮する能力を制限している可能性があると考えられる。
- EUは地域で2番目に信頼される大国として、平均信頼度は25年の51.9%から今年55.9%に上昇し、不信感は27.8%から22.3%へと著しく減った。EUへの好意的な評価は、主に国際法と多国間規範の推進という強い評判に支えられている。
回答者の3割以上が、EUを環境保護、人権、気候変動に関する強い姿勢と結びつけている一方、かなりの割合で、EUが内政に気を取られ過ぎるため、国際的な課題に十分に注力できていないとして、その規範的影響力を効果的なグローバルリーダーシップに翻訳できるかどうかに懸念を持っている。
- 米国への信頼度は25年の47.2%から今年は44.0%に減少し、不信感は33.0%から35.5%に上昇した。依然として地域で3番目に信頼される大国だが、信頼と不信の差が縮まることは、ASEAN回答者の間でワシントンの指導力に対する曖昧な態度が高まっていることを示唆している。
米国を好意的に見る人々は、その膨大な経済資源と世界的なリーダーシップを発揮する政治的意志を強調し続ける。が、米国に対する懐疑的な見方は、その経済力や軍事力が、他国の利益や主権を脅かすために利用される懸念から次第に高まりつつある。
こうした認識は、ワシントンの他地域での介入主義的行動、特にラテンアメリカや中東での政治的圧力の高まりにも影響されている可能性があり、一部の観察者はこれを米国が海外の政治・経済的結果を決定するためにその力を行使する意志の証拠と解釈している。
- 中国は地域間の認識がやや改善し、信頼度は36.6%から39.8%に上昇、不信感は41.2%から35.2%へ大幅に減少した。特筆すべきは調査開始後初めて、中国に対する信頼が懐疑を上回ったこと。中国を好意的に見る人々は、その膨大な経済資源と強力な政治的意志を強調する。
一方、中国の経済的・軍事的強硬さに対する懸念は依然として根強く、中国を信用しない者のかなりの割合は、その増大する力が自国の利益や主権を脅かす可能性を懸念している。特に南シナ海における紛争での北京の強硬な態度や広範な海洋領有権主張や主張国に対する強制的な行動が緊張を高めている。
こうした動きは、一部のASEAN回答者の間で、中国の台頭が必ずしも無害な指導者を意味するわけではなく、むしろ地域の安定を脅かし、一部のASEAN諸国の主権を損なう可能性があるという認識を助長している。
- インドの世界的な貢献を信頼する地域回答者の割合(38.5%)が、今回初めて不信感を示す者(34.1%)を僅かに上回った。これはインドの世界的な役割に対するASEANのより肯定的な認識を示している。インドを信頼する人々が、国際法を尊重し推進する責任ある利害関係者と見なす一方、成長する経済力を活かして世界的なリーダーシップに貢献する可能性を認める人もいる。
しかし、インドがその潜在能力を持続的なグローバルリーダーシップに結びつける能力については依然として懐疑的な見方が残る。回答者のかなりの割合は、インドには自国地域を超えたリーダーシップを発揮する能力や政治的意志が欠けていると考えている。
以上、安倍外交が敷いた路線を継続する限り、ASEAN諸国の人々の日本に対する信頼は揺るがない。米中会談後の機内から架かった電話でトランプ氏と話したり、4月以降に3度もイランのペゼシュキアン大統領と電話会談をしたりできる西側指導者は高市首相しかいない。首相には自信をもって今の外交政策を進めて欲しい。







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