
日本は今、成長戦略そのものの再設計を迫られている。観光立国の推進、コンテンツ産業の強化、国際金融都市構想等々、これまで打ち出されてきた戦略はいずれも、海外から需要と資金を呼び込み日本の価値を可視化することを目的としているが、現状は個別政策として並立するに留まり、結果として日本の価値増殖にはつながっていない。従来の成長戦略の延長では持続的成長は望めないのではないか。必要なのは発想の転換である。
重要なのは、「都市のメディア化」という視点である。これまで都市は、人や企業が集積する“場所”としての価値で評価されてきた。しかし今後の都市競争においては、「どれだけ世界に見られ、体験され、消費されるか」が本質的な指標となる。既にドバイやラスベガスは都市のメディア化が急速に進みつつある。例えばラスベガスにおけるスフィアのような没入型の球形エンタテインメント施設や、F1といった国際イベントはその象徴である。都市そのものを巨大なメディアへと変換することで、広告・販促の概念そのものが変わるだけでなく、都市を舞台としたグローバル露出の機会が生まれる。この競争は既に始まっており、出遅れは致命的となる。
日本の強みはいうまでもなくIP(知的財産)にある。アニメ、ゲーム、音楽、キャラクターといったコンテンツは世界的競争力を有しているが、その収益化は依然として限定的である。理由は明確であり、「体験としてのマネタイズ」が不十分だからだ。今後はこれらのIPを、都市空間での没入型体験として高付加価値化し、継続的に収益を生む構造へと転換していく必要がある。ここで重要なのは、IPを単なる消費対象ではなくキャッシュフローを生む資産として捉える視点である。体験から生まれる収益を証券化・トークン化することでIPは金融と融合され、推し活が投資へと昇華される。
また、こうした都市のメディア化は観光の高度化に留まらない。都市空間そのものがコンテンツとなり、広告、放映、スポンサーシップ、データ活用といった多層的かつ持続的な収益構造を生み出す。こうした価値を資本市場に接続し、グローバルマネーを継続的に呼び込む仕組みの構築が不可欠である。
東京をこの新たな市場の中心地とする。なぜなら、お台場を中心とした臨海副都心エリアは既に国家戦略特区に指定されており、大規模開発と都市実験を可能とする稀有な空間だからだ。さらに、東京で創出された価値を全国へと波及させる設計が重要である。東京を入口として世界の注目と資金を集め、それを地方の観光、産業、コンテンツへと接続することで国益にも資する取り組みとなる。
今、日本に求められているのは、個別最適の政策ではなく、都市・IP・金融・観光を一体として設計する国家戦略である。そのためには国・地方自治体・民間企業が三位一体で、象徴的なメディアとしてのインフラ誘致を今まさに進めなければならない。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2026年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。







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