高市早苗首相の陣営が、自民党総裁選や衆院選で対立候補らを中傷する動画を作成・拡散していたとされる問題が、単なるネット工作疑惑にとどまらず、国会答弁の信頼性を揺るがす事態に発展している。

焦点になっているのは、高市氏がこれまで「自分も秘書も面識がない」としてきた動画作成者と、高市氏の公設第一秘書とされる人物との関係である。
木下秘書(?)が「うまくやれたらいい」
週刊文春は、高市首相の公設第一秘書・木下剛志氏と、中傷動画の作成者とされる起業家の松井健氏らが参加したとするZoom会議の音声を公開した。音声は昨年12月17日に録音された43分48秒の会議で、木下氏と松井氏らがやり取りしていたという。
記事では、声の主が「デジタルとアナログのコラボレーションで精度を上げていく」と語り、さらに「マスコミはやらない」とか「陳腐なオールドメディア」といった発言もあったとされている。(文春オンライン)
この音声が重要なのは、単に秘書と動画作成者が会話していた可能性を示すだけではない。高市首相は国会で、松井氏について「私自身も地元の秘書も面識のない方」と説明していたと文春は報じている。
ところが、公開された音声が本物であれば、少なくとも高市氏の最側近である公設第一秘書と動画作成者の間に接点があったことになり、首相答弁との整合性が問われる。(文春オンライン)
さらに文春は、Zoom会議の中で木下氏とされる人物が「うまく一緒にやれたらいい」と語ったとも報じている。これは今後の協力関係を示唆する言葉として受け止められる。高市陣営が中傷動画の作成・拡散を「一切行っていない」としてきた説明と、音声に現れた関係性との間に大きな食い違いが生じている。(文春オンライン)
不可解な答弁で事実確認を避ける高市首相
問題は国会にも波及した。TBSによれば、6月4日の衆院予算委員会で野党側が音声データの確認を求めたところ、高市首相は文春オンラインが有料会員制であることを理由に「今朝までに確認できなかった」と説明した。そのうえで「有料会員になること自体、私は拒否します」と述べた。(TBS NEWS DIG)
しかし翌5日の参院予算委員会では、高市首相は音声を確認したとしたうえで、「秘書本人かどうか、あの音声をもとに判断することはむずかしい」「かなり高い声でハキハキとしゃべっていたので違和感があった」と答弁した。テレビ朝日は、この問題をめぐる審議が約28分間で7回も止まる異例の展開になったと報じている。(テレ朝NEWS)
この答弁も新たな疑問を呼んでいる。音声を聞いていない段階では「有料だから確認できない」とし、音声を確認した後は「本人か判断できない」とする。さらに、秘書本人に確認したのかを問われた際には、TBSによれば「キレられましたよ」と説明し、事実関係を否定していない。
虚偽答弁の疑いも出てきた
ところがIT会社代表の松井健氏が共同通信の取材にも証言し、総裁選期間中に木下秘書とオンライン会議を行い、「小泉氏を逆転するにはどうすればいいか」と相談を受け、「ネガティブな発信」を提案したという。
首相が自らの公設第一秘書に事実確認するだけの問題であるにもかかわらず、確認の経緯が極めて曖昧なのである。(TBS NEWS DIG)高市氏側が本当に疑惑を否定するのであれば、取るべき対応は単純だ。
- 音声の人物が木下秘書なのかどうかを確認する
- 松井氏との接点の有無を時系列で説明する
- 動画作成や拡散の指示があったのかどうかを示す
現時点では、音声が本物かどうか確認できていない。しかし首相が国会で「秘書も面識がない」と説明していた相手と、公設第一秘書とされる人物がZoomで会議していた具体的な音声が出てきた以上、これは単なる週刊誌報道では済まない。
高市陣営の「中傷動画」疑惑は、ネット選挙における誹謗中傷やAI動画の問題であると同時に、首相答弁が事実にもとづいていたのかという政治責任の問題になった。国会で問われているのは、首相が正確に説明していたのかどうかである。







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