レオ14世「聖職者の性犯罪はペストだ」

今月6日から12日にかけてスペインを訪問中のローマ教皇レオ14世はマドリードでフェリペ6世国王とレティシア王妃の謁見を受けた後、6日夜、スペインの首都で約50万人が参加する「青少年の徹夜祈祷会」を執り行い、7日にはマドリード中心部のシベレス広場周辺でコルプス・ドミニ(聖体祭)のミサと聖体行列が行われ、約120万人の群衆が教皇を歓迎した。教皇は「神は貧しい人々や虐げられた人々と心を共にされる」と他者を助ける信仰の大切さを訴えた。

そして8日、教皇レオ14世はマドリードのスペイン議会で演説を行い、イラン・イラク戦争の再燃をはじめとする武力紛争の激化を受け、平和を訴え、「武器は真の永続的な平和を決して生み出すことはできない。各国は国際法で定められた平和的手段によって意見の相違を解決しなければならない」と語った。スペイン訪問は米国人教皇にとって、イタリア以外の主要欧州諸国への初の司牧訪問だ。

聖職者の未成年者への性的虐待犯罪の犠牲者6人と会合するレオ14世、バチカンニュースから、2026年6月8日

レオ14世は8日、教皇として初めてスペイン議会で演説した。教皇は流暢なスペイン語で兵器システムへの人工知能(AI)の利用に警鐘を鳴らし、「ヨーロッパを含む世界の様々な地域で、国際情勢の不安定化に対するほぼ必然的な対応として、軍備再編が再び台頭しつつあることは憂慮すべき事態だ。世界は深刻な精神的・文化的危機に直面しており、それは暴力、分断、相互不信という形で現れている」と強調した。70歳の教皇は先月25日発表した回勅「マニフィカ・ヒューマニタス」の中で人工知能の軍事利用に警告を発している。

また、移民問題にも言及し、「移民や難民の状況は、人々を第一に考え、避難の根本原因に対処する政策を必要としている。出身、宗教、言語、社会的地位に基づく差別は、すべての人々の平等な尊厳という原則に反する。この問題は単なる人口問題や経済問題ではなく、何よりも国際社会にとって道徳的かつ法的な課題だ」と指摘、安全で合法的な入国経路の確保と、避難の根本原因へのより強力な取り組みを求めた。

また、社会の分断に警鐘を鳴らし、政治的議論における相互尊重を訴えた。意見の相違は政治的対立者を中傷するものではなく、民主的な対話を通じて解決されるべきだと訴えた。

演説後、教皇は「ブラボー!」「ビバ!」という歓声とともに、数分間にわたる拍手喝采を受けた。報道によると、スタンディングオベーションは7分間続いた。

それに先立ち、レオ14世は、スペインのペドロ・サンチェス首相と会談した。教皇は8日午前、マドリードにあるバチカン大使館で、自らを無神論者と称する社会党所属のサンチェス首相と会見した。両者ともイラン・イラク戦争を批判しており、トランプ米大統領から繰り返し攻撃を受けている。ただし、カトリック教会とスペイン左派政権の間には、中絶、同性愛者の権利、フェミニズムといった問題に関して、意見の相違がある。

なお、スペインのカトリック教徒の割合は、現在人口の約55%~70%とされている。かつては国民の90%以上を占めていたが、近年は明確な減少傾向にあり、無宗教層や無神論者の割合が増えている。

ところで、教皇レオ14世は8日午後、スペインで聖職者や教会職員による虐待の被害者6人と面会した。被害者支援に尽力する教会関係者も同席した。バチカン広報部によると、面会は8日の午後、マドリードの教皇大使館で行われた。教皇はその直後、「聖職者による虐待を受けた人々との面会は特に辛いものだった」と述懐している。オーストラリアのシドニー教会を訪問したべネディクト16世が2008年7月、聖職者の性犯罪の犠牲者と会合して涙を流したという話を思い出す。

レオ14世は、スペインの司教会議に関連する約120人の司教たちを前に、聖職者による未成年者や弱者への性的虐待に対して「「この悪に直面して、教会共同体は、傾聴、真実、正義、償い、そして予防とケアの文化という観点から、これまで以上に断固とした行動をもって対応することが求められる」と述べた。教皇は性的虐待を「疫病」と表現した。教皇の発言は、これらの犯罪の捜査と被害者への賠償金支払いをめぐり、教会、政治家、司法の間で長年にわたる論争が続いている中でなされた。教会代表と政府は、金銭的賠償の手続きについて、今年1月に暫定合意に達したばかりだ。

ちなみに、聖職者の未成年者への性的虐待はレオ14世が表現したようにペスト(疫病)ではない。
ペストは、ペスト菌を病原体とする感染症だ。聖職者の性犯罪は明らかにローマ・カトリック教会という世界最大のキリスト教会の組織的犯罪だ。外部から感染するペストではなく、教会内部から発生し、隠ぺいしてきた犯罪だ。

聖職者の性犯罪は米国、スペイン、フランスのカトリック教会だけに発生しているのではない、世界のほぼ全てのカトリック教会で程度の差こそあれ発生している。それ故に、神父個人による性犯罪ではなく、教会が組織的に関与している犯罪だといわざるを得ないのだ。

ペストは現代では適切な抗生物質(ストレプトマイシンやテトラサイクリンなど)による早期治療を行えば完治する病気だが、カトリック教会の聖職者の性犯罪にはまだ適切な抗生物質が見つかっていないのだ。

なお、教皇レオ14世はマドリード訪問後、バルセロナとカナリア諸島を訪問する。ローマ教皇は10日、バルセロナのサグラダ・ファミリアで、著名な建築家アントニ・ガウディ(1852年~1926年)の没後100周年を記念するミサを執り行い、世界一高い教会の塔を正式に祝福する。

レオ14世インスタグラムより


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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