アクティビスト介入で露見する「より弱いカドカワ」

カドカワはここ数年トラブル続きだ。元会長の逮捕。システム障害。そして、今回のアクティビスト介入である。

「夏野CEOを解任すべし」。こう提案するのはオアシス・マネジメント。フジテックにネガティブキャンペーンを展開し、非上場化に追い込んだ強面ファンドである。厄介な相手に目を付けられたものだ。

カドカワWebサイトより

オアシス・マネジメントとは

オアシス最高投資責任者のセス・フィッシャー氏は日経の取材で以下のように語っている。

「我々の意見に耳を傾けない、連携しないと言われたら公にキャンペーンする」

このキャンペーンが恐ろしい。専用ドメインまで取得したウェブサイトで、現経営陣を叩く。膨大な量のプレゼン資料を掲載し、他の株主を扇動する。ときには、経営者のプライベートにまで踏み込む。フジテックのプレゼン資料では、当時の経営者の自宅の様子が晒された※)

※)創業家の自宅を従業員に掃除させていると訴えたもの。当時の経営者は「退職者をアルバイトとして雇用していた」と否定している。

北越コーポレーションのキャンペーンサイトでは、「経営者は賭けゴルフに賭け麻雀」という真偽不明の告発文が掲載された。

先の日経記事でセス氏は以下のように言う。

「フジテックや北越コーポレーションのようなキャンペーンに至るのはまれだ」

そんなことはない。今でも約20社が「キャンペーン」のターゲットだ。同社ウェブサイト「エンゲージメント・キャンペーン」には、ターゲット企業の経営陣を批判するプレゼン資料が並ぶ。そのボリュームも相当なものだ。

例えば花王である。掲載されている資料は「三部作」。サマリーだけで29ページ、全体で230ページ。4年前セブン&アイに揺さぶりをかけたバリューアクトの3倍以上の大作だ。京セラも掲載されている。こちらは「二部作」。190ページを超えている。バリューアクトをエッセイとすれば、こっちは立派な小説だ。いっそ、カドカワから出版してはいかがだろうか。

「より強いKADOKAWA」

さて、そのカドカワである。「より強いKADOKAWA」と題されたプレゼン資料は133ページ。「業績を悪化させた夏野CEOを解任させるべき」と訴えている。

確かに業績は芳しくない。売上は微増に留まり、営業利益は前期167億円から81億円へと半減。サイバー攻撃の影響は解消したものの、「推しの子」のような大物作品を生み出せなかった。作品の小粒化という、カドカワの作品創出力の問題が、いよいよ顕在化してきた。

オアシスもそこを指摘する。IP作品が小規模にとどまっている。バンダイナムコは「ドラゴンボール」で1,900億円、「ガンダム」で1,530億円、「ワンピース(ONE PIECE)」で1,390億円のIP収益を稼いでいる 。それに引き換えカドカワは、稼ぎが40億円未満のものばかりではないか、と。

確かに稼ぎは少ないが、ガンダム・ドラゴンボール・ワンピース、これらと比べるのは、さすがに酷だ。ガンダムの初放映は1979年。90作品以上が制作されている。ドラゴンボールの連載開始は1984年。30作品ほど制作されている。広い世代をカバーできるうえ、作品の幅が広い。だから家族で楽しめる。

一方、カドカワの主力アニメの放送開始は、「Re:ゼロから始める異世界生活」が2016年、「影の実力者になりたくて!」が2022年。数本のスピンオフ・劇場版を除けば、単一作品だ。加えて、原作はライトノベル、すなわち10-20代向けの「小説」である。マンガ原作のドラゴンボール・ワンピースと比べ、読者数が少なく、カバーできる世代も狭い。家族で楽しむといった広がりは期待できない。

小粒化する理由

とはいえ「IP作品が小規模にとどまっている」という指摘は的を射ている。カドカワ自身も「タイトルの小粒化が進行している」と認めている。なぜ小粒になってしまうのか。

上場しているからだ。

小学館・講談社・集英社など大手出版社の大半は「非」上場である。作家と編集者の関係を育み、作品作りに時間をかける出版事業は、短期的利益を追求する上場企業と相性が悪い。カドカワは出版業界では異端児なのだ。

上場企業である以上、短期利益が求められる。制作体制も変わってくる。先のガンダム・ドラゴンボール・ワンピースなどは、作家の個性が発揮されたプロダクトアウトだ。一方、カドカワの主力IPである「異世界もの」はマーケットインである。

「これって、もしかして異世界転生ー?」

物語の冒頭で主人公はこう叫ぶ。目覚めたばかりなのに、自分の置かれた状況がわかっている。それほど「異世界もの」は定着している。ラノベ・アニメのマーケットには、異世界というニーズがあるのだ。だから異世界作品が多くなる。カドカワの「売上上位タイトル」の6割、「今後期待するアニメ作品」の5割が「異世界もの」だ。

だが、マーケットインでは広がりのある強い作品は生まれにくい。詰まるところ、「作品が小規模」なのは上場しているから。アクティビストに口出しされてしまうのも上場しているから。カドカワは、資金調達力という上場企業ならではの強みでメディアミックスを展開してきた。しかし、作品作りにおいて短期的成果が求められてしまうという上場企業ならではの弱みが、いま顕在化してきている。

作品を作る企業

カドカワの決算説明会資料の表紙では、クジラが都会の空を泳ぐように飛んでいる。アニメのワンシーンを思い出す。表紙なんて誰も気に留めない。時間をかける必要なんてない。けれど、作品作りを支える企業には、このような遊びも必要なのだ。

カドカワ決算説明会資料より

【参考】
オアシス創業者、「社外取締役との対話もっと強めたい」|日本経済新聞

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