チュニジア代表戦で露呈!?森保ジャパンの致命的な弱点とは?

杉山 崇

チュニジア代表戦は、4-0という完勝でした。W杯という舞台で、このような結果は初めてです。ネット上では日本代表を「真の優勝候補」などと称える声が後を絶ちません。

ただ、この称賛、本当に信じてよいのでしょうか? 私たちは優勝の可能性を期待してエールを送ってよいのでしょうか? チュニジア代表戦で見えてきた課題を基に検証してみましょう。

崩壊していたチュニジア代表

まず、忘れてはいけないのが、チュニジア代表がチームとして崩壊していたという事実です。W杯が始まってからの崩壊……立て直しが難しいですよね。

メンバーチェンジもできません。さすがに、白い魔術師もなすすべがなかったようです。彼の代名詞であるハイプレスやハイインテンシティを体現したのは日本の方でした。悔しかったことでしょう。

なお、前監督のラムシ氏のチーム作りは各方面から批判されています。ちなみに、私にはそのチーム崩壊の過程が、日本代表のロシアW杯直前の監督解任のプロセスを彷彿とさせるものがありました。また、AI導入の失敗例の企業とも重なるような……。このことはまた別のテーマで、人生の教訓としてご一緒に考えたいところです。

スウェーデン代表など強敵は見逃さない、快勝の裏の弱点

いずれにしても大事なことは、スコアだけ見れば快勝ですが、相手はチームとして機能していなかったということです。ということは、その中で反撃の隙をわずかでも与えたことがヤバいのです。そこに日本代表の弱点が顕れています。

次に対戦するスウェーデン代表、さらにはトーナメントで対戦する強敵が、それを見逃すはずがありません。強い相手なら、日本代表の弱点を突いて仕留めてくる可能性が高いのです。

そこで、森保ジャパンの冒険をさらに面白く見るために、このゲームで私が実感した危険な兆候を2つ、そしてオランダ戦でも兆候が見えた日本代表の積年の課題を1つ、ご紹介したいと思います。

1. サイド幅を極端に広げる攻撃設計→中央の危険なエリアを明け渡すリスク

サイド活用とポケット攻略の成功

森保ジャパンはこの試合、チュニジアの守備ブロックに対して幅を最大限に使う攻撃を徹底していました。実際、先制点は前半3分、中村敬斗が左サイド深く、いわゆるポケットに侵入し、折り返したボールを鎌田が仕留めました。

実はこの得点の取り方は、日本の狙いを象徴したものです。オランダ戦でも機能していました。その基本的な概要としては……

  • ウイングと同サイドのシャドー、すなわちトップ下、ボランチが△のバランスを維持する。
  • パス交換とドリブルを織り交ぜてポケット、つまりコーナー付近のエリアに侵入する。
  • 敵DFの視点をポケットに集中させる。いわば心理操作です。
  • 中央への折り返し、サイドチェンジなど、敵DFの視点の逆を突く展開を見せる。
  • ゴールを攻略する。

つまり、現代的な「幅×深さ」といったゴールの攻略法を武器としているのが、今の森保ジャパンなのです。ですが、この攻略法には大きなリスクも伴います。

「広がりすぎ」が生む中盤の空洞

この攻略の設計では、攻撃時にはサイドに人員を割くことになります。そのリスクの概要としては……

  • ポケット攻略に人数をかけた代償として、中央のエリア、特にDFライン前に広大なスペースが生まれる。
  • さらにDFラインの裏はガラ空き。
  • ゲームを作れる危険なエリアを明け渡すリスクがある。
  • 敵にフリーでボールを持たれ、攻撃の起点を作られる。
前半6分50秒のピンチの手前!!

チュニジア代表戦で象徴的だったのは、先制点の余韻も冷めやらぬ6分50秒です。日本は右サイドの攻略を試みていました。

しかし、チュニジアはパスをカット。フリーの選手にボールが渡り、前を向かせてしまいます。

例の日本が空けた広大なスペースでは、なんと2人もの選手がフリーになっていました。ここでどちらかにでもボールが渡っていたら……。そこが反撃の起点になり得ます。

日本の選手は前がかりになっているので、大ピンチを招きます。実際、そこからの展開を狙ってオーバーラップを仕掛けていた選手もいました。

Figure 1:6分50秒(ゲームをもとにAIで作成・筆者が加工)

佐野海舟とチュニジア代表選手の力関係で救われたが……

救われたのは、佐野海舟選手とボールホルダーの選手の力関係です。佐野選手の危機察知スキルが一枚上手でした。

ただ、佐野選手の背後には2人のフリーの選手がいたので、敵のパスの軌道を読みにくかったはずです。佐野選手だから見事にパスを弾き返して味方につなぎましたが、このプレーがなかったら本当に危ない場面でした。

スウェーデン代表などの強敵相手では、こうはいきません。佐野選手の逆を突けるスキルがある選手だったら、完全につながれていました。今後対戦する強敵相手では、この場面の5秒後、10秒後には、日本は決定的なゴールチャンスを相手に与えていたことでしょう。

2. 組織的なハイプレス、自分たちへの心理操作による守備時マークの曖昧さ

後半48分20秒からの信じられない光景

次の弱点を象徴する場面は、後半48分20秒からしばらく展開されました。なんと、自陣手前からゴール前まで、チュニジア代表に10本ものパスを回し続けられたのです。

驚くのは、日本代表選手の自陣の人数は足りていたということです。つまり、日本代表選手の間をすり抜けて、こんなにも多くのパスを回され続けたのです。

しかも最後は、キーパーの鈴木ザイオン選手と1対1の形で、敵エースのハンニバル選手(英・バーンズリー所属)にフリーでボールが渡ったのです。もし、ハンニバル選手が点で合わせるプレーを得意とするワールドクラスのストライカーだったら、確実にゴールを献上していたことでしょう。

Figure 2:48分20秒から(ゲームをもとにAIで作成・筆者が加工)

 

「組織的」とのトレードオフ

結果として大きな決定機にはならなかったのですが、「誰が誰に詰めるか?」「誰が空間を埋めるか?」が曖昧になる時間帯が存在していたということを意味しています。なぜ、こんなことが起こったのでしょうか?

それは、日本代表の守備が圧倒的な個の守備力に頼らない、組織的なハイプレスを強みとしていることのトレードオフです。組織とは、「一つの意思でみんなが動く」もの。「まとまれば強い」ものです。ですが、逆に言えば、意思が曖昧な状況では「誰も動けない」という弱点を持つのです。

これは、「組織の意思を感じるまで動かない」という、自分で自分にかけた心理操作のようなものです。あらゆる組織にあり得ることで、特に日本の古い体質の組織に多い印象です。

このシーンは、まさにこの組織という弱点を象徴したものです。この弱点は、強豪相手に致命的なチャンスを与えることになるでしょう。

なぜこうなったのでしょうか。ここまで、日本代表はチュニジア代表にほぼ有効なパス回しをさせてきませんでした。その中で、「突然」のようにパスが回り始めたのです。

この「突然」が、守備の意思のエアポケットを一時的に発生させたのでしょう。そのため、自陣には選手が十分にいるにもかかわらず、みんながボールウォッチャーになってしまいました。結果的に、ゴール前までボールを運ぶことを許してしまったのです。

もちろん、その後は修正して、筆者にはその再現はなかったように見えます。しかし、「守備の意思のエアポケットが起こり得るチーム」だという弱点を対戦国に見せてしまったのです。前回、ベスト16で対戦したクロアチア代表のような、試合巧者のベテランが率いるチームであれば、この弱点を上手に再現させることでしょう。

3. ハイボール戦術、スピード勝負への対応力(未検証の弱点)

伝統的課題の残存

日本代表の長年の弱点は、

  • 空中戦
  • フィジカル勝負
  • ロングボール対応
  • 守備ラインの裏へのスピード攻勢

です。

チュニジア代表戦では、日本がボール保持で主導権を握りました。結果的に、チュニジアがロングボール主体に完全移行する状況はほぼありませんでした。爆発的なスピードのある選手もいません。

そのため、「前線に強くて速い大男を並べて放り込む戦術への耐性」は評価保留です。いえ、オランダ戦でファン・ダイク選手に決められたヘディングシュートを見る限り、日本の弱点としていまだにあり続けているように見えます。

特に日本は、前に人数をかけている攻勢の時にロングボール一発で、理不尽なフィジカル勝負、スピード勝負に持ち込まれた時に弱さを露呈する傾向があります。

次のスウェーデン代表は、推進力としてもプレースピードとしても恐ろしく速いイサク選手と、ギェケレシュ選手を擁する爆発的な2トップを誇ります。特にギェケレシュ選手は187cm、86kgと体格にも恵まれ、空中戦にも強い選手です。イサク選手もやや細身ですが、192cmの恵まれた体格で高さも脅威となり得ます。日本の伝統的とも言える弱点を狙ってくることは間違いないでしょう。

次のスウェーデン代表戦に完全勝利して初めて優勝候補と言える

チュニジア戦の森保ジャパンは確かに強かったです。しかし、その強さは同時にリスクを伴うものでもあります。

ただ、強いチームとは意図的にリスクを取っているチームです。チャンスメイクとはリスクテイクとのトレードオフなのです。

重要なのは、そのリスクが管理され、弱点として相手に利用されない準備ができているかどうかです。チュニジア代表戦を見る限り、まだ道半ばに見えました。

果たしてスウェーデン代表戦でリスクを感じさせない戦いぶりを見せてくれるのか。オランダ代表の5-1以上のスコアを叩き出してグループリーグを1位突破できるのか。目が離せない一戦になることでしょう。

この一戦をオランダ戦と同等に制することができれば、グループリーグを1位突破できれば、日本は真の優勝候補です。そのような結果に向けて、熱いエールを送りたいと思います。

杉山 崇(脳心理科学者・神奈川大学教授)
臨床心理士(公益法人認定)・公認心理師(国家資格)・1級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)。
1990年代後半、精神科におけるうつ病患者の急増に立ち会い、うつ病の本当の治療法と「ヒト」の真相の解明に取り組む。現在は大学で教育・研究に従事する傍ら心理マネジメント研究所を主催し「心理学でもっと幸せに」を目指した大人のための心理学アカデミーも展開している。
日本学術振興会特別研究員などを経て現職。企業や個人の心理コンサルティングや心理支援の開発も行い、NHKニュース、ホンマでっかテレビ、などTV出演も多数。厚労省などの公共事業にも協力し各種検討会の委員や座長も務めて国政にも協力している。
サッカー日本代表の「ドーハの悲劇」以来、日本サッカーの発展を応援し各種メディアで心理学的な解説も行っている。

心理マネジメント研究所(代表:杉山崇@脳心理科学者・臨床心理士・公認心理師/神奈川大学教授)|note
「心理学でもっと幸せに!」を実現する研究所。各種研修、採用・組織運営コンサルティング、データ解析、心理カウンセリング、キャリアコンサルティング、などを組織と個人に提供中。代表の杉山は著書多数の他、NHKニュース、フジテレビ「ホンマでっかテレ...

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