企業不動産をどう分類すべきか:4分類モデルの提案

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(CREが変える経営財務 ⑤)

企業が保有する不動産を見直すとき、多くの会社はまず「土地」「建物」「本社」「工場」「賃貸物件」といった用途別の一覧をつくる。

それは必要な出発点だが、それだけでは企業不動産を経営資本として扱うことはできない。

本社ビルは本当に事業に不可欠なのか。社員寮は収益を生まないが、採用や定着にどれだけ貢献しているのか。賃貸マンションは本業と無関係でも企業価値を支えているのか。使われていない土地は将来の選択肢なのか、それとも経営資源を眠らせているだけなのか。

こうした問いに答えるには、用途による分類では不十分である。重要なのは、その不動産が事業にどの程度不可欠か、そして直接的な収益を生んでいるかという二つの視点である。

この二軸で整理すると、企業不動産は四つに分類できる。事業の継続・成長に不可欠な「事業不動産」、直接収益は生まないが人材や組織を支える「準事業不動産」、賃料収入などを目的に保有する「投資不動産」、本業にも収益にも十分貢献していない「非事業不動産」である。

事業不動産は、工場、物流施設、店舗、本社、事業用倉庫などが該当する。直接賃料を生まなくても、本業の売上や利益を生み出す基盤である。製造業にとって工場は生産能力そのものであり、物流会社にとって配送拠点はサービス品質と収益性を左右する。

本社のように売上を直接生まない不動産も、経営管理や人材採用を支える事業基盤として、自社保有であれば賃借時に発生する賃料支出を抑える効果を持つ。ただし自社保有が常に有利とは限らない。固定資産税、修繕費、資本の固定化を含め、賃借した場合との比較が必要であり、立地や規模が事業戦略に合っているかも常に検証されるべきである。事業不動産に求められるのは「保有すべきか」という静的判断ではなく、事業の変化に合わせた継続的な最適化である。

準事業不動産は、社宅、福利厚生施設、研修施設、保養所などを指す。会計上は収益を生まない資産に見えるが、人材確保が難しい地域での社員寮は採用競争力そのものであり、単純に「収益を生んでいないから不要」とは判断できない。一方で、かつて必要だった施設が、現在の働き方や福利厚生の実態に合わなくなっている場合もある。問われるべきは、その不動産が現在も人材・組織・事業継続に貢献しているかどうかである。

投資不動産は、賃貸ビル、賃貸マンション、貸地などを指し、本業とは無関係に、安定したキャッシュフローを通じて財務基盤を支える。だが投資不動産であれば何でも企業価値を高めるわけではない。利回り、修繕・建替えコストを織り込んだ収益性、空室や賃料下落のリスク、本業投資との資本配分上の合理性が問われる。「土地があるから貸している」のではなく、「投資として保有する合理性があるから持つ」という判断が必要になる。

非事業不動産は、遊休地、空き倉庫、使われなくなった社宅など、本業にも収益にも十分貢献していない不動産である。固定資産税や管理コストがかかるだけでなく、資本が固定化され、成長投資や事業承継対策に資金を振り向ける機会を失うという損失も生じる。将来の事業拡張を見据えた保有地を直ちに非事業不動産と決めつけるべきではないが、重要なのは「将来使うかもしれない」ではなく、いつ何のためにどう使うのかという具体的な戦略の有無である。戦略のない保有は、資産ではなく問題の先送りに過ぎない。

なお、不動産会社やデベロッパーが販売目的で保有する不動産は、会計上も棚卸資産として扱われ、性格が異なるため、この4分類とは区別して考える必要がある。

この4分類で最も重要なのは、不動産に固定的なラベルを貼ることではない。本社ビルが事業不動産から過大な固定資産へ転じることもあれば、社宅が準事業不動産から遊休資産へ変わることもある。経営戦略、人員構成、地域市場、承継計画の変化に応じて、分類は定期的に見直されるべきものである。

企業不動産を経営資本として扱うには、まずその不動産が何のために存在しているのかを明確にしなければならない。事業を支える事業不動産、人材を支える準事業不動産、収益と財務を支える投資不動産、見直しを要する非事業不動産——この4分類によって、不動産は「土地や建物の一覧」から「経営資源の一覧」へと変わる。

CRE戦略は、売却や開発、賃貸といった個別の手法から始まるものではない。まず自社の不動産を分類し、その役割を明らかにする。そのうえで、保有、活用、売却、賃借、再投資という選択肢を検討する。分類は、企業不動産を経営に戻すための第一歩である。

次回は、こうして分類した企業不動産を、どのような基準で保有・売却・活用へ振り分けるべきかを考えたい。

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