高ければ放出、下がれば買い戻し
米価格の暴落懸念が広がる中、7月7日の参議院農林水産委員会で、政府備蓄米の早期買い戻しを求める声が与野党から相次いだ。政府による備蓄米放出が過剰在庫を招いたのだから、今度は政府の責任で市場から米を吸い上げよ、という理屈である。鈴木憲和農相は「状況を見極める」としつつも、「何とかしたい」という姿勢をにじませたと報じられている。
備蓄米「買い戻し」で暴落防げ 与野党議員が追及 鈴木農相、答弁の「行間」
実にわかりやすい農政だ。米が高ければ「政府は備蓄米を出せ」と言い、米が下がりそうになると「政府は買い戻せ」と迫る。つまり、価格は市場で決めるのではなく、永田町と霞が関がレバーを上下させて決めるべきだというわけだ。
消費者には我慢、生産者には下駄
そもそも備蓄米の放出は、米価高騰に苦しむ消費者の不満を受けた政策だった。ところが価格が落ち着き始めると、今度は「暴落が心配だ」として買い戻し論が浮上する。消費者は高い米を買わされ、安くなりそうになれば税金で価格を支える。これでは国民は、スーパーのレジでも納税でも二重に負担させられる。
農水省はすでに「政府備蓄米の買戻し条件付売渡し」という制度を持っており、制度上は売った米を買い戻す枠組みも存在する。 しかし問題は、制度の有無ではない。政治が「価格が下がるのは困る」と言い出した瞬間、備蓄米は食料安全保障の仕組みではなく、ただの米価維持の装置になりさがる。
「市場任せは困る」の本音
農水省によると、2026年産政府備蓄米の買い入れは第4回入札までで20万7521トンを確保し、4月末時点の民間在庫は249万トンと高い水準にあるとされる。鈴木農相は、買い戻しについて販売動向や民間在庫、非食用向け需要などを総合的に見て判断すると説明している。
要するに、いま起きているのは「米不足」から「米余り」への急旋回である。だが本来、価格が下がるのは消費者にとって朗報だ。もちろん生産者の経営安定は必要だが、それを価格維持でやれば、負担は常に消費者へ回る。所得補償や構造改革ではなく、高米価を守ることで農家を支えようとするから、農政はいつまでたっても昭和のままなのだ。
農政社会主義の留まることのない要求
今回の買い戻し要求は、農政社会主義の典型である。市場価格が都合よく上がるときは歓迎し、下がるときは政府が介入する。利益は業界に、負担は国民に。これほど都合のよい仕組みはない。
米価高騰時には「消費者のため」と言い、米価下落時には「生産者のため」と言う。どちらの場合も出てくる結論は、政府がもっと介入せよ、である。これでは米政策ではなく、価格統制社会だ。
国会議員が本当に考えるべきなのは、備蓄米を買い戻して価格をつり上げることではない。減反、関税、流通、補助金、備蓄制度のすべてを見直し、消費者にも生産者にも持続可能な市場をつくることだ。米価が下がりそうになるたびに政府が買い支えるなら、日本の米は主食ではなく、政治に保護された高級食材になってしまうだろう。








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