韓国株が激しく動いている。韓国総合株価指数(KOSPI)は、2025年末からAIブームを背景に急騰し、2026年6月22日には過去最高の9114.55を記録したが、その後はわずか3週間で25%近く下落し、7月14日には7000を割り込んだ。それでも年初からは約60%上昇し、主要国では突出したパフォーマンスを維持している。

これは「韓国経済が突然復活した」という話ではない。実態は、サムスン電子とSKハイニックスという半導体2社に資金が集中した、巨大なAIメモリー相場である。
AIブームで半導体企業の利益が爆発
株価上昇の出発点は、企業業績の劇的な改善だった。
サムスン電子が発表した2026年4~6月期の業績見通しは、売上高約171兆ウォン、営業利益約89.4兆ウォン。前年同期の営業利益は4.68兆ウォンだったため、利益は約19倍に増えた計算になる。AIサーバー向けメモリーの価格上昇と供給不足が、空前の利益を生んでいる。
SKハイニックスも、AI半導体に欠かせない広帯域メモリー(HBM)で先行した。2026年1~3月期には売上高52.6兆ウォン、営業利益37.6兆ウォンを記録している。2025年通期の営業利益も47.2兆ウォンと過去最高で、AI投資の恩恵を最も強く受ける企業の一つとなった。
つまり、今回の上昇には実際の利益成長という裏付けがある。単なる思惑だけで上がった相場ではない。
KOSPIではなく「半導体2社指数」
問題は、上昇があまりにも一部の企業に集中したことだ。
サムスン電子とSKハイニックスの時価総額は、一時KOSPI全体の約60%を占めた。2年前の約40%から急上昇しており、2社の株価が下がれば、他の企業が上昇しても指数全体は大幅安になる。
米国でもエヌビディアへの集中が問題になるが、同社がS&P500に占める比率は約7%にすぎない。韓国市場の集中度はそれとは比較にならない。
「韓国株が上がっている」といっても、実際には韓国企業全体が評価されたわけではない。世界のAI設備投資に連動する、サムスン電子とSKハイニックスへの巨大な集中投資だったのである。
信用取引が上昇と下落を増幅
さらに相場を不安定にしたのが、韓国の個人投資家による信用取引である。
海外投資家は、韓国株の時価総額が急増して世界株指数に占める比率が高くなったため、ポートフォリオ調整として2026年に約1100億ドルを売り越した。一方、国内の個人投資家は6月に42.4兆ウォン、7月にも13.2兆ウォンのKOSPI銘柄を買い越した。信用取引残高は6月24日に過去最高の29.8兆ウォンに達した。
半導体株に連動する2倍型ETFなどのレバレッジ商品も普及した。株価が上がる局面では買いが買いを呼ぶが、下落すると追証や損失回避の売りが発生し、下落がさらに加速する。
実際、SKハイニックスが1日で14%下落した際、同社株の2倍の値動きを目指すETFは30%以上下落した。売りが連鎖し、KOSPIも一時8%下落した。韓国当局は、単一銘柄型のレバレッジ商品が市場をゆがめていないか監視を始めている。
「コリア・ディスカウント」解消も追い風
半導体以外では、韓国政府による企業統治改革も株価を支えた。
韓国企業は、財閥一族による支配、複雑な持ち合い、少数株主の軽視などから、利益に比べて株価が安い「コリア・ディスカウント」に長く悩んできた。
政府は日本の改革を参考に「企業価値向上プログラム」を導入し、配当や自社株買い、資本効率の改善を促した。2025年には取締役がすべての株主に対して忠実義務を負うことを明確化し、2026年には税制上の優遇を受ける高配当企業に企業価値向上計画の開示を求めた。
こうした改革期待が銀行や持ち株会社などの株価を押し上げたことは事実である。しかし、KOSPIの急騰の大部分を説明するのは、やはり半導体2社である。
韓国経済全体への信任ではない
韓国株の上昇と同時に、韓国ウォンは一時1ドル=1500ウォンを超える歴史的な安値圏にあった。7月14日時点でも約1506ウォンである。株式市場が本当に韓国経済全体への信任を反映しているなら、通貨がこれほど弱いというのは不自然だ。
ウォン安は輸出企業の利益を押し上げる一方、輸入物価とエネルギー価格を上昇させ、家計や内需企業を圧迫する。株価指数の急騰と国民生活の改善が一致しないのは、日本の円安株高とよく似ている。
韓国株に起こったのは、韓国経済の全面的な復活ではない。AIメモリー企業の利益爆発に、企業統治改革への期待と個人投資家の信用取引が重なったのである。
業績は本物だが、指数の上昇速度と資金の集中は異常だった。KOSPIは世界最強の株価指数になったのではなく、世界最大級の「AIメモリー連動商品」に変質した。
今後の韓国株を決めるのは、韓国のGDP成長率よりも、米国のAI設備投資、HBM価格、サムスン電子とSKハイニックスの利益、そして信用取引の巻き戻しである。韓国株の乱高下は、AIブームが企業業績を変える力と、金融市場を投機化させる危険の両方を示している。







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