米オラクルの経営が、崖っぷちに追い込まれた。S&Pグローバル・レーティングは7月9日、オラクルの長期信用格付けをBBBからBBB-へ引き下げた。投資適格級としては最低水準で、あと1段階下がればジャンク債である。
見通しは安定的とされたものの、AIデータセンターへの巨額投資が同社の財務体質を急速に悪化させている。オラクルは、第2のリーマンブラザーズになるのだろうか。

ソフトウェア会社から借金依存の設備企業へ
オラクルは、ドットコム・バブルの数少ない生き残りである。かつてはデータベースのソフトウェアを販売する企業だったが、今では巨額の借金でデータセンターを建設する巨大な設備産業に変貌しつつある。
2026年5月期の設備投資額は557億ドルに達し、当初目標の500億ドルを上回った。さらに2027年5月期には最大950億ドルを投じる計画である。自社負担だけでも約700億ドルに上り、残りの200億~250億ドルは顧客から返済される予定だというが、返済時期は明らかにされていない。
その結果、2026年5月期のフリーキャッシュフローは237億ドルの赤字になった。オラクルは2026年に430億ドルの社債と50億ドルの株式を発行し、2027年にも約400億ドルを追加調達する方針だ。
成長投資を営業キャッシュフローでまかなうのではなく、債券と株式によるファイナンスに依存する投資会社になっている。AI需要が予想どおり拡大し続ければ問題はない。だが資本市場の信頼が失われると、巨大な設備投資計画は資金不足に陥る。
契約の売掛金の半分がOpenAI
オラクルの強気の根拠は、6380億ドルのRPO(残存履行義務)である。これは契約の売掛金だが、その約半分をOpenAIが占める。オラクルの将来が、事実上1社の資金調達能力に大きく依存しているのだ。
OpenAIはオラクルから、約5年間で3000億ドル分の計算能力を購入する契約を結んだと報じられている。平均すると年間600億ドルである。オラクルはこの契約を担保として借金し、発電所に匹敵する電力を消費するデータセンターを建設する。
OpenAIは、将来のAI収益と投資家からの資金調達を前提に利用料を支払う。つまり両社は、まだ実現していない未来の利益を担保にして、互いの成長物語を支えるベンダーファイナンスになっている。
これは合法的な循環取引だが、OpenAIの資金調達が止まれば、オラクルの受注残高は不良債権になる。オラクルの設備建設が止まれば、OpenAIはモデルの開発やサービス拡大に必要な計算能力を確保できなくなる。
リーマンとの決定的な違い
もっともオラクルとリーマンブラザーズは同じではない。リーマンは短期金融市場で資金を調達し、それを長期で流動性の低い住宅関連資産に投じる投資銀行だったが、信用を失ったことで資金調達が止まり、2008年9月15日に破綻した。その損失は短期金融市場に伝播し、取り付けに発展した。
特に問題だったのは、リーマンが信用の低いサブプライムを複雑に組み合わせてリスクを軽減する仕組債を大量に発行していたことだ。リーマンの破綻で仕組債を決済する信用ハブがなくなり、大量のデフォルトが発生した。
オラクルにはデータベース、クラウドアプリ、保守契約などの既存事業がある。データセンターという実物資産も残る。預金者が一斉に資金を引き出す銀行でもなく、翌日物資金に依存する投資銀行でもない。仕組債で資金調達しているわけでもない。
OpenAIとの契約が破綻しても、直ちにオラクルが倒産するとは限らない。設備投資を削減し、資産を売却し、契約を再交渉する時間はある。実際、アナリストからもOpenAIが破綻した場合には損失や債務削減が必要になるものの、オラクルまで直ちに債務不履行になるわけではないとの見方が出ている。
AIバブルの信用連鎖が逆回転するとき
それでもオラクルが危険なのは、かつてのリーマンのようにAI産業の信用ハブになっているからだ。オラクルが社債を発行してデータセンターを建設し、半導体メーカーがGPUを供給し、電力会社が発電・送電設備を増設する。
データセンターの費用を最終的に負担するのはOpenAIなどのAI企業だが、個人向けサービスはほとんど無料で、まだ大幅な赤字である。数千億ドルの設備投資を回収するには、法人契約で高額のトークン利用料を取らなければならないが、この分野には中国企業が参入して価格競争が激化している。
AIの収益化が遅れてOpenAIの資金繰りが苦しくなると、オラクルの売掛金が回収できないリスクが上がり、社債利回りが上昇する。オラクルの借り入れが困難になって投資を縮小すると、データセンター、半導体、電力、建設会社へと影響が広がる。
この逆回転が起きたとき、オラクルは金融機関ではなくてもAIバブルのリーマンになりうる。リーマンショックの本質は、1社の破綻そのものではなかった。「絶対に安全だ」と思われていた契約や証券を、誰も信用しなくなったことだ。オラクルの売掛債権6380億ドルは、リーマンの負債総額6130億ドルを上回る。
オラクルの格付けがジャンク債の一歩手前まで下がったことは、AIブームが技術競争から信用問題へ移ったことを示している。次に注目すべきなのは、新しいAIモデルの性能ではない。OpenAIがオラクルへの年間数百億ドルの支払いを、本当に続けられるかどうかである。






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