節税で営業利益を消す社長が銀行に嫌われる理由

kuppa_rock/iStock

前回、銀行の融資審査における定量評価129点満点のうち35点=27%が自己資本に関係すると述べた。

自己資本を積み上げない社長が銀行に評価されない本当の理由
財務を中心とした経営コンサルタントとして、はっきりと伝えておきたいことがある。税理士はこの話をしない。銀行員もこの話をしない。だから私が言わなければならないと思い、今回の記事を書いている。「節税をしっかりやっています」と誇らしげに言う社長に...

では残りの73%は何を見ているのか。

今回はその核心——収益性と返済能力の評価項目——を開く。節税で営業利益を圧縮することが、具体的に何点分の減点になるかを、数字で示す。

129点満点の58%が「利益を出しているか」を問う項目だ

収益性と返済能力に関係する評価項目を並べると、その重さが分かる。

売上高経常利益率(5点)、総資本経常利益率(5点)、収益フロー=連続黒字かどうか(5点)、経常利益増加率(5点)——これだけで20点。

さらに返済能力の評価項目がある。債務償還年数(20点)、インタレスト・カバレッジ・レシオ(15点)、償却前営業利益(20点)——合計55点。

収益性と返済能力を合わせると75点。129点満点の58%が、利益を出しているかどうかに関係する項目だ。

節税で利益を圧縮するということは、この58%の評価を自ら下げているということだ。

「債務償還年数」という最大の関門

配点20点という最大の評価項目が、債務償還年数だ。計算式はシンプルだ。

債務償還年数=借入残高÷(営業利益+減価償却費)

この年数が短いほど、評価が高い。20年超はゼロ点。15年以内で4点。9年以内で8点。3年以内でようやく満点に近づく。

具体的に計算してみよう。

借入残高1億円、営業利益+減価償却費が500万円の会社の債務償還年数は20年。評価点はゼロだ。

同じ会社が節税をやめて営業利益+減価償却費を1,500万円にすれば、債務償還年数は約6〜7年。評価点は大幅に改善する。

差は1,000万円の利益だ。細かい技術的な計算を省き分かりやすく、法人税等を平均的な水準として25%で計算すれば、250万円の税負担が増える。しかし銀行の評価が上がり、金利が下がり、融資が通りやすくなる。250万円の税負担増加と、銀行からの評価改善——どちらが会社にとって得か。

会社経営という観点からの答えは、誰の目からみても明らかだろう。

インタレスト・カバレッジ・レシオという鏡

配点15点のインタレスト・カバレッジ・レシオは、こう計算する。

インタレスト・カバレッジ・レシオ=営業利益÷支払利息

1倍以内はゼロ点。つまり営業利益と支払利息がほぼ同じ水準では、銀行から見て「利息すら稼げていない会社」と評価される。6倍以上で満点に近づく。

節税で営業利益を300万円に抑えた会社が、支払利息200万円を払っているとすれば、比率は1.5倍。15点満点中3点程度だ。節税をやめて営業利益を1,000万円にすれば、比率は5倍。評価点は大幅に改善する。

ここでも同じ構造が現れる。節税で営業利益を消すことは、銀行の評価を組織的・構造的に下げる行為だ。

税理士も銀行員も、この計算を社長に見せない

税理士は税金の申告・納税が仕事であり、銀行評価への影響は業務の範囲外だ。

銀行がみずから評価の仕方について伝えるはずがない。なぜなら、手の内を見せて交渉してくれるはずがないからだ。

だから社長は、自分が節税によって銀行評価の58%を自ら下げていることを知らない。知らないまま「節税が賢い」と信じ続ける。

私がこの計算を社長に見せると、ほとんどの社長が黙る。

そしてこう言う。

「誰も教えてくれなかった」と。

「賢いと思っていたことが、評価を下げていた」という現実

前々回から続けてきた問いに、ここで答えが出る。

保証協会1%を喜び、プロパー2.5%を嫌がる社長は、実質コストを見ていなかった。

経営者保証が外れない社長は、不透明な経理処理が銀行の信頼を失わせていることを知らなかった。

そして今回——節税で利益を圧縮する社長は、銀行の評価シート129点満点の85%(自己資本27%+収益性・返済能力58%)を、自らの手で下げ続けていた。

賢いと思っていた行為が、銀行評価を構造的に下げていた。

次回は、倒産の本当の原因——売上不足でも人員不足でもなく、借入返済・税金・社会保険料という固定的なキャッシュアウトの問題——に踏み込む。会社経営の王道とは何かを、現場の視点から述べたい。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント