叱られない時代に「フィードバックを引き出す技術」

黒坂岳央です。

昨今は企業も世の中もホワイト化して叱られることがなくなった。確かに昭和のように頭ごなしに怒鳴りつけることはなくなったものの、フィードバックを得られないという別の問題が出てきた。

若い頃なら「風変わり」で済んでも、フィードバックがないまま年だけ取ると「不審者」という評価に変わる。かといって、自分一人で自分の弱点に気づくのは構造的に難しく、これは厄介だ。

筆者は、表面的な褒め言葉は当人の承認欲求を満たすだけで、行動を変える情報量はゼロだと考えている。改善に使えるのは「どこが悪いか」という情報のみで、リップサービスはむしろ判断を狂わせるノイズに過ぎない。

そのため一般的な人より、意図的に指摘を引き出しやすい立ち回りを選んでいる。今回はその個人的なノウハウを共有したい。

指摘する人が減った根本原因

現代で指摘が減った最大の理由は、指摘する側にメリットがないからだ。

「ここは直したほうがいいよ」と指摘すれば今どきはすぐにハラスメント扱いされ、恨まれたりするリスクがある。一方、黙っていれば角が立たない。つまり「指摘コスト」が「沈黙コスト」を上回る構造になっている。

こうなると黙るのが合理的選択になる。今は一周回って「愛ある指導」と呼ばれて昭和スタイルが見直されることもあるが、もう他人のためにそこまでやる人はほぼいない。

筆者は子連れなので子供がたくさんいる場所を出入りするが、昔は子供が騒げば他の大人が注意していたが、今は誰も触れないで放置されたままだ。

職場でも公共の場でも、注意する人はもういない。ただし、何もしなければ。

お金だけで指摘を買えない

「報酬を払う関係を作れば指摘は買える」このように発想する人は多いが、それは半分しか正しくない。コンサルタント、コーチ、添削サービスなど、対価があれば相手はズバズバと改善点を言ってくれそうな印象がある。

当然、彼らにとって仕事なので指摘はもらえる。だが、その「深度」については指摘を受ける側の態度でも大きく変わるのが実情だ。彼らとて、誰でも何でも言うわけではない。

指摘のたびに反論されたり、言い訳を並べられたり、不機嫌な態度を取られたりすれば、「ここまで踏み込むのはやめよう」「プライドに触れる箇所は避けよう」と無難な範囲でしか言わなくなる。

これは筆者自身に経験がある。パーソナルトレーニングを受けている時、筆者は入会時に「自分には一切気遣いなく、間違っていたり修正が必要ならどうか何でもいってください」と伝えていた。だが、トレーナーは20代の若い男性であり、普通に考えれば40代の年上男性にはダメだししにくいだろうと思った。

そこでトレーニング中に「この確度ってやっぱり痛めますかね。自分は本当に知識がない素人でどうにも自信がないです。良かったらストレートにダメだししてもらえますか」と聞いたら、「そうですね、正直言いづらいのですが…」と根本的にミスっていたことをバーっとたくさん指摘してもらえた。

やはり相手は自分に遠慮していた。最初は「こうするとより良くなります」とオブラートに包んでいた印象で、言い方もポジティブだった。だが、自分は「これはよくない」とはっきり言ってほしかったので、指摘が欲しい箇所を自ら「下げた言い方」で誘導したことで、相手も「言っていいんだ」と心理的境界線を超えてくれたという印象がある。

また、外資系に勤務していた頃、外部コンサルと食事にいった際、「あの役員さんはこういう言い方じゃないと、指摘を受け入れないから」といっていた話が印象的だった。大金を払って雇ったコンサルでもなんでもズバズバ指摘するわけではないのである。

指摘を引き出す技術

それでは相手からストレートで有益な指摘を引き出すにはどうすればいいか?

反面教師としてダメなやり方から取り上げたい。言うまでもないが否定する、反発することだ。できない理由を並べたり、不機嫌さを出すのは最悪な対応である。これをすると相手は心を閉ざして二度と本音を言わなくなる。

筆者がやっているのは感謝を伝えることだ。「教えてくださり、ありがとうございます。おかげで見落としていたこの点を確認できました。助かりました」と具体的に何が救われたかをセットで伝える。こうすると相手は「この人は指摘しても怒り出さない。受け止めてくれる」と心理的安全性を獲得できる。

そして深堀りすることだ。「ここが気になって」と言われたら「なるほど、気づきませんでした。ぜひしっかり理解したいのですが、どう感じたか教えてもらっていいですか」と伝える。言い方は「教えてもらえますか?」と「依頼形、疑問形」だと柔らかく伝わる。

最後にして最も強力なのが、「前回指摘いただいた点、このように改善しました。その節はありがとうございました」と修正報告をすることである。筆者の場合はパーソナルトレーニングの指摘された点を改善したと先方に伝えた。こうすれば「自分の指摘は相手の役に立っている」という実感を得た相手はまた教えてくれるようになる。

「今どきは自分に誰も教えてくれない」と腐るのは間違っている。指摘してくれる人がいないのではなく、多くは無意識に相手に「指摘させない」ように牽制してしまっていることがほとんどだ。

褒める人が増えたのは相手を怒らせない自己防衛のためで、褒められて喜んではいけない。今どき、自慢するなら「指摘してくれる相手を複数持っている」ことだろう。


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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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