高市政権として初の骨太方針が閣議決定されました。高市内閣の目玉の一つとされますが、実質を担ったのは城内大臣を中心とした官邸ブレーンの「検討チーム」で作成されています。

高市首相と城内大臣 首相官邸HPより
骨太方針は2001年から毎年、時の政権が行なっているものであり、この大方針を元に各担当大臣にその業務を振り分け、大方針からはみ出ない様に大臣をコントロールする点で徳川政権が全国の大名に課した数々の制約や義務を通じて、大名の力をそぎ、政権主導主義と似た思想であります。
またこれをベースに次年度の予算編成を行うことから既に高市政権は発足後9か月たっていますが、ようやく自身で描いたプランに基づき、世を動かすことになります。(逆に言えば今までは石破政権が作ったプランに則っていたということになります。)
さて、この骨太方針、中身よりもそのこぼれ話の方に注目が集まっています。首相自身のXの投稿が賛否を呼び、内閣支持率は急落し、骨太方針を見透かすように円が対ドルで安値をつけています。
それらのこぼれ話が骨太方針と関係があるのか、これは少し丁寧にみる必要があると思います。
まず、骨太方針は誰が作るか、といえば暦年、基本策を諮問会議、具体策を財務省が担うという分担があったのですが、今回は城内氏を中心とする官邸のブレーンがゼロからほぼ作り上げたもので財務省の手助けをあまり求めなかったとされます。当然、財務省は不満であり、蜜月関係とされる高市氏と片山氏の間にすっと隙間風が吹いたように感じます。片山氏は難しいかじ取りのはずです。それは氏の立場はあくまでも財務大臣であり、財務省の上に立つ人間であることから財務省の声を聞き、守る姿勢を取るべきだからです。
これは以前、財務省のある方から聞いた話ですが、麻生氏が財務大臣だった頃、麻生氏の立場は常に財務省職員の話を聞き、守ることを重視しており、その職員が「自分の名前を憶えてくれた」と言うほど麻生氏は職員らとのコミュニケーションにも注力していたのです。麻生氏は大臣をピラミッドの頂点とした一体化した最強集団を形成したとも言えます。片山氏がどうか私は知りませんが、省の声は無下には出来ないのです。よって高市政権が独自の骨太を出せば当然すり合わせ上、不具合も起きます。その端的な例が今回の骨太原案の「日銀の立場」に関する表現とその修正だったのでしょう。
さて今回の骨太を端的に言ってしまえば「いままでケチったから日本経済は縮み込んだのだ。投資を拡大し、成長の再軌道にのせ、ひいては税収の増収を図り、国民生活を豊かにするのだ」であります。そのバックボーンはケインズ経済学と現代貨幣理論MMTだろうと察します。現代貨幣理論とは自国通貨を発行している限り国家は破綻しないという考え方です。ただ、正直、亜流です。この考え方ができるのは貨幣の発行能力ではなく、完全自給自足経済を行える国家と考えるべきであり、日本はそれに当てはまらないのであります。
ケインズ経済は基本的に有効需要の創出でありますが、日本は成熟国家で経済のみならず、国民の年齢まで成熟しきっているのにいまさらケインズ経済学ではないだろう、と思うのであります。要は様々な経済理論がある中でいつ、どの理論を活用するか次第であり、10年前の理論は今使えるかどうかは別問題とも言えるのです。
よって370兆円の官民投資とぶち上げても民間がついてこなければ370兆円の計画は絵に描いた餅になりかねず、ここはより現実的にかつ、慎重に捉える必要があります。特に民間部門ではどの産業も極端な人材不足になっており、潜在需要を満たす術が限られている点はどう克服するかその手段が見たいものです。例えば以前にもコンテンツ産業の話をしましたが、官側は日本企業の支援しかできないのですが、市場は海外であり、日本国内ではないのです。しかし現状、海外で直接的に骨太産業の普及支援する術がない、これは当たり前でもあり、片手落ちなのでもあります。
今回の骨太のもう一つの着目点はプライマリーバランスの単年度黒字化を削減し、債務残高GDP比にシフトする点です。これが意味するのは多少財政赤字でも分母のGDPが投資などにより増えれば債務残高のGDPに対する比率は良化するだろうという発想です。これも一概に批判はしませんが、GDP算出に輸出は入らないのですから370兆円の官民投資の多くが海外市場をターゲットにしていることを考えればここはやや矛盾する気がします。
一方、褒める点を上げるとすれば17分野という広範な産業にばら撒く政策なので各産業の経済勃興策になるところも出てくるでしょう。期待できるのは防衛産業、あと船舶関係は造船能力が欠落したアメリカと組むなどの外交的施策を組み合わせれば特需的な期待感はあります。本命はAIですが、これは超金食い虫で近隣諸国との血みどろの戦いになるのでリスクファクターは最も大きくなります。医療バイオは日本の力はまだ世界にはかなわないと思います。創薬に関する国内法制度を含めた事業環境が全然遠いと思います。
この骨太方針を作り上げたのはたいへんだったと思います。ただ、実際には今日から火ぶたが切って落とされるので本番はこれからなのです。高市首相の睡眠時間が0-3時間ということで、ナポレオン越えになりますが、睡眠時間のマイナスはないわけで、これ以上の働きは出来ないとも言えます。私はむしろここに不安を感じないわけにはいかないのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月22日の記事より転載させていただきました。







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