リユース業界絶好調も高市さんのおかげです w

最近、日経の値上がり率ランキングを眺めていると妙なことに気づく。半導体でもAIと並んでリユース株が値上がり上位の常連なのだ。ハードオフ、トレジャー・ファクトリー、バリュエンス、BuySell、コメ兵。要するに中古屋と質屋と買取屋である。
日本の株式市場で今いちばん熱いテーマが「中古品」だという事実は、それ自体がひとつのマクロ指標だと思うので、今日はこれを掘る。ついでに、この現象を生み出した政策的背景についても、感謝の意を込めて触れておきたい。

まず数字を見る。冗談みたいな決算が並んでいる

主要各社の直近決算を並べるとこうなる。

【図の見方】青が売上の伸び、赤が本業の儲け(営業利益)の伸び。決算期は各社バラバラなので厳密な横比較ではないが、全社が増収増益、しかも買取専門業態ほど利益の伸びが極端という傾向は一目瞭然。

個別に見ていくと壮観だ。ブランド品買取「なんぼや」のバリュエンスHDは、26年8月期3Q累計で売上799億円(前年同期比26.7%増)、営業利益は4.1倍の52億円。1月に営業利益予想を一気に2倍以上へ上方修正した際は翌営業日にストップ高となり、リユース株一斉高の号砲になった。仕入高は前年同期比32.7%増。つまり「売りに来る人」が3割以上増えている。

出張買取のBuySell Technologiesは26年12月期1Qで売上37.0%増、営業利益111.4%増。通期予想を売上1,400億円(39%増)、営業利益156億円(73%増)へ上方修正して増配まで発表した。コメ兵HDは26年3月期が売上2,217億円(39.4%増)、営業利益50.4%増で過去最高。円安を追い風に免税売上、つまりインバウンドの中古ブランド品爆買いが効いている。

店舗型も総崩れならぬ総勝ちで、ゲオHDはセカンドストリート事業が17.6%増収で全社純利益92.6%増。ついでに言うと同社は2026年10月に社名を「セカンドリテイリング」に変える。レンタルビデオの会社が「うちの本業は中古です」と宣言するわけで、時代の看板の掛け替えとしてこれほど分かりやすいものもない。ハードオフは30期連続増収、ブックオフも売上過去最高。ちなみにリユース市場はこの十数年ずっと拡大してきた業界だが、2026年に入ってからの伸び方は明らかにギアが違う。何かが加速させているのだ。

教科書的な説明:4つの追い風

証券会社のレポート的に整理すると、追い風は4つある。

第一に物価高による節約志向。新品が高くて買えないから中古を買う。

第二に金・ブランド品相場の高騰。買取業者の在庫は値上がりし続ける資産なので、持っているだけで粗利が膨らむ。

第三に円安インバウンド。アジアの旅行者にとって日本の中古ブランド品は「状態が良くて安い」お宝である。

第四に高齢化による家庭内資産の放出。メルカリの調査では家庭に眠る「かくれ資産」は約91兆円、その大半をシニア層が持つ。

ここまでは誰でも書ける話だ。しかし、この整理には決定的に抜けている視点がある。

本質:買取業とは「家計の資産防衛」の仲介業である

リユース各社の決算で本当に注目すべきは、売上ではなく仕入の急増である。バリュエンスの仕入32.7%増、BuySellの「一度売りに来た客がリピートしてもっと高額なものを売る」という構造。店頭やお茶の間で何が起きているかというと、家計が手持ちの資産を積極的に現金化しているのだ。

理由は単純で、インフレは進むのに実質賃金が上がらないからだ。コアCPIは2%台後半で走っているのに預金金利はそれに遠く及ばず、実質金利はマイナス。現金と円預金は持っているだけで毎年目減りする。生活を守るには、タンスの着物、使わないブランドバッグ、亡くなった親の貴金属を「今のうちに」売って現金にするのが合理的になる。同時に、その現金の置き場として円預金は信用できないので、資産の一部を金(ゴールド)に換える動きも加速する。バリュエンスやコメ兵の地金卸売が伸びているのは、まさにこの個人マネーの金シフトが業者を経由して流れている姿だ。

つまりリユース・買取業態の正体は、中古品小売ではない。「モノ→現金」の換金売りと「円→金」の資産逃避、家計のインフレ対応の両方向のフローを仲介して、双方からスプレッドを抜く商売である。だから金相場と円安が進むほど、売る側と買う側の取扱高が同時に膨らみ、利益が非線形に伸びる。これは消費トレンドではなく、通貨現象なのだ。

高市政権の産業政策は大成功している(皮肉です)

さて、ここで政策の話をしよう。例の骨太である。

高市政権の2026骨太の計画は、骨太どころか前提条件が甘すぎて旧日本軍の「このままでは全滅だから万歳突撃で玉砕しよう」と同じ
6月30日の経済財政諮問会議に、骨太の方針2026の原案が出ました。370兆円の官民投資、2040年度にGDP1,100兆円、毎年実質10兆円の追加支出。威勢のいい数字が並んでいます。私はこの文書の数字を一つずつ検算しました。結論から言うと…

高市政権はかねて「責任ある積極財政」を掲げ、骨太の方針2026では四半世紀掲げ続けたプライマリーバランス黒字化目標をあっさり降ろし、「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」に中核目標を差し替えた。

この指標の便利なところは、分母の名目GDPがインフレで膨らめば、借金を減らさなくても数字が改善して見える点にある。2040年度に名目GDP1100兆円という威勢のいい目標も掲げているが、実質成長で達成する道筋は示されておらず、要するに物価で膨らませる前提だ。財源の議論は例によって「成長で税収が増えるから大丈夫」という、過去四半世紀一度も実現しなかった前提の再放送である。

市場の返事は早かった。円は一時1ドル162円台と39年半ぶりの安値圏。しかも前回の記事で書いたとおり、7月上旬には日米10年金利差が2.14%から1.70%へ縮小しているのに円安が進むという、金利差モデルでは説明のつかない動きが出た。

10年国債利回りは一時2.82%と約30年ぶりの水準、BEI(市場のインフレ期待)は日銀目標を超えて2.3%近辺。債券市場と為替市場が、財政リスクプレミアムという同じ懸念を別々の顔で表現している。ドル建ての日本のGDPはすでにカリフォルニア州に抜かれたが、円建てなら過去最高なのだから何も問題はない、ということらしい。

そしてこの政策環境が、冒頭の値上がり率ランキングを作った。円安が金の円建て価格を押し上げて買取業者の粗利を膨らませ、インフレが国民の節約志向と換金売りを加速させ、通貨安がインバウンドに中古ブランド品を買わせる。

高市政権の経済政策の成果が最も鮮明に、最も正直に現れている部分は、国民が家財を売り、資産を金に換える行列を仲介する業態なのである。半導体に何兆円投じても株価はぱっとしないが、質屋は国費ゼロで営業利益4.1倍だ。「国民が貧しくなるほど成長する産業」をここまで見事に育成した政権は歴史的にも珍しく、これを産業政策の成功と呼ばずして何と呼ぼう。アベノミクスは株価を上げた。サナエミクスは買取価格を上げた。

投資家としての注意点

一応、投資の目線でリスクも書いておく。買取型の利益は金・ブランド相場と円安への依存度が高く、実際バリュエンスも直近四半期は地金・時計相場がやや軟調だったと自ら言及している。金相場の反落、あるいは円高転換が起きれば、両面で膨らんだ利益は両面で逆回転する。BuySellの1Qには前期からの在庫繰り越し販売という一過性のかさ上げも含まれる。店舗型は出店と人件費のコスト増が続く。そして最大の下方リスクは、政府がまともな財政運営に戻り、円の信認が回復してしまうことだが、骨太の方針を読む限り、この心配は当面しなくてよさそうである。投資判断としてこれほど皮肉な「政策の継続性」も珍しい。なお、当然ながら本稿は特定銘柄の売買を推奨するものではない。

まとめ:質屋の行列は、円への不信任投票である

超長期金利の上昇やBEIの2%超えは、機関投資家による円と日本財政への警告だとよく言われる。しかし同じ警告は、もっと生活に近い場所からも発せられている。なんぼやの店頭に並ぶ人の列、出張買取のリピート率、セカンドストリートの新規出店ラッシュ。これらは全部、家計という日本最大の経済主体が「円と賃金の将来を信用していない」と行動で示しているデータだ。リユース株の騰落率ランキングは、債券市場のリスクプレミアムの小売版・お茶の間版である。

今後ウォッチすべきは、円建て金価格、ドル円、BEI、そしてリユース各社の月次の仕入高。この4つが揃って伸び続けるなら、それは「積極財政の成果」が着々と国民に浸透している証拠である。政権の掲げる名目GDP1100兆円が近づく頃には、日本人は皆、売るものを探して家中を歩き回っているかもしれない。その仲介手数料だけは、確実に成長産業だ。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年7月21の記事より転載させていただきました。

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