ヒトラー暗殺未遂事件とロシア将軍の証言

アドルフ・ヒトラーは1907年、08年、ウィーン美術アカデミーの入学を目指したが、2度とも果たせなかった。もしヒトラーが美術学生となり、画家になっていれば、世界の歴史は違ったものとなっていたかもしれない。ウィーン美術学校入学に失敗したヒトラーはその後、ミュンヘンに移住し、そこで軍に入隊し、第1次世界大戦の敗北後は政治の表舞台に登場していくのだ。

プーチン大統領、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相と会談、2026年7月19日、クレムリン公式サイトから

前日の7月20日は、ドイツ国防軍の将校らによるアドルフ・ヒトラー暗殺とナチス政権転覆を狙ったクーデター未遂事件(「7月20日事件」または「ヴァルキューレ作戦」)が起きた日だ。あれから82年が経過した。クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐(当時36歳)が暗殺計画を主導し,東プロイセンの総統大本営「狼の巣」の会議室に、時限爆弾を入れた鞄を設置した。爆弾は炸裂したものの、ヒトラーは奇跡的に軽傷で生き延びた。クーデター計画は数時間で瓦解し、シュタウフェンベルク大佐を含む主要メンバーは翌7月21日未明に銃殺刑に処された。

ところで、欧州のメディアでロシアのプーチン大統領を21世紀のヒトラーと呼び出して久しい。最近、同大統領の暗殺計画を示唆するような記事が様々なメディアで掲載されてきた。オーストリアのメディア「ホイテ」は7月8日、ロシアの亡命ジャーナリストのドミトリー・コレセフ氏が、ウクライナ戦争に従軍したとされるロシア軍の現役高官(将軍級とされる人物)に匿名で行ったインタビューを大きく掲載した。その見出しは「プーチン大統領の権力維持は最長でもあと1年だろう」というものだった。

同将軍は「現在、前線は膠着状態にある。ドンバス全域を制圧するという目標は、現状では達成不可能だ。ウクライナ側のドローン防衛網を突破するには、当該戦域に数万人規模の兵士を集中させる必要があるが、現在の兵員募集のペースでは到底不可能だ」と指摘。その結果、クレムリンはすでに総動員令に向けた地ならしを始めている可能性があるという。同将軍によれば、7月5日にクレムリンのペスコフ報道官が初めてこの紛争を「戦争」と公言したことは、その方向性を示唆しているという。ロシア憲法上、総動員令の発令には事前の戒厳令布告が必要であり、戒厳令は外部からの脅威が存在することを前提としている。

ロシアが攻勢に出る余地が生まれる条件としては、キーウでの国内政治危機、欧州の同盟国によるウクライナ支援の撤回といった事態が起きた場合だけという。「最大の望みは、トランプ氏がウクライナに圧力を掛けてロシア寄りの停戦に応じるように説得することだ」という。そして「クレムリンにはどのような選択肢が残されているのか?多くはない。ウクライナを支援する欧州諸国への攻撃や、ましてや核兵器の使用といった可能性を完全な空想に過ぎない」と強調した。

同将軍は「ロシア経済が低迷し、全国的な燃料危機が悪化しているにもかかわらず、ロシア軍指導部は戦争を終わらせるつもりはない。軍および政治指導部にとって、これは存亡に関わる問題だ。壮大な目標が達成されない限り、エリート層に交渉を行う気などさらさらない」という。

将軍はロシアの将来を憂慮している。「客観的かつ冷静に見れば、交渉は必要だ。そうでなければ、この国は破滅するだろう。単に発展や繁栄が失われるだけでなく、国家社会主義(ナチズム)のイデオロギーに突き動かされる戦争マシンへと完全に変貌してしまう。ロシアは北朝鮮のような国になり、それによって欧州や旧ソ連のすべての国々にとっての脅威となるだろう」という。

「勝利なき終戦は指導部にとって痛みを伴うが、それでも破滅的な政治的激変を防ぐことは可能だ。現在の前線で紛争を凍結することは依然として可能だが、時はすべてを変えるものであり、長期化する戦争において、その変化が良い方向に向かうことはない。十中八九、我々に残された時間はあと6ヶ月から1年、それ以上はない」というのだ。

匿名を条件に取材に応じたその将軍は最後に、ロシア連邦内の様々な民族グループ間での緊張が劇的に高まり、国が崩壊の危機に瀕する可能性がある。それは内戦を招き、国家の崩壊につながるだろう」と、悲観的な見通しを述べている。

クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐のような人物がロシア軍内部にいるだろうか。プーチン氏は最近、身辺警備を一層強化しているという情報が流れている。プーチン氏は2000年以来、モスクワ郊外のノヴァ・オガリョヴォの大統領公邸のほか、ワンダール、ソチ、クリミア半島などに夏の別荘や豪邸を有し、黒海沿岸ゲレンジク付近には「プーチン宮殿」といわれる広大な豪邸を所有している。特殊部隊が常に同氏の安全を警備してるという。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年7月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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