25日に閉会した特別国会で、副首都法は参院本会議をわずか2票差で通過した。野党で唯一賛成したチームみらいの票が、成立を左右した形だ。
「デジタル」を入れれば改革なのか
チームみらいは、自民・維新との協議で「情報通信技術の活用」と「国会への報告」を法案に追加させ、それを成果として賛成に回った。
しかし問題は、この修正の中身である。情報通信技術の活用は、すでにデジタル社会形成基本法などで国や自治体に求められている。
副首都法という統治機構にかかわる大きな制度変更に対して、自分たちの得意分野である「デジタル」を書き込ませたことで成果とみなす。それは政策修正というより、法案に自分たちの看板を貼っただけではないのか。
「高学歴理系」では説明できない
当初、これは「高学歴理系の無学」なのかとも思った。しかし所属議員の経歴を見ると、それでは説明できない。
安野貴博党首は1990年生まれの東大工学部出身だが、国対委員長の峰島侑也氏も1990年生まれで東大法学部卒。古川あおい政調会長は1991年生まれで東大法学部、公共政策大学院を卒業し、厚労省勤務の経験まである。高山聡史幹事長は1986年生まれで慶応大学経済学部・同大学院の出身だ。
つまり「理系だから政治を知らない」という話ではない。
むしろ気になるのは、これだけ高い学歴や行政経験を持つ人材をそろえながら、政党政治、議会運営、統治機構、地方自治といった政治の基礎について、その蓄積があまり見えてこないことである。
チームみらいは「ゆとり教育」の優等生?
ここで思い浮かぶのが「ゆとり教育」である。
2002年度から本格実施された学習指導要領では、授業時数と教育内容を減らす一方、「知識を教え込む教育」から転換し、「自ら学び自ら考える力」「問題解決能力」「総合的な学習」が重視された。
安野氏や峰島氏、古川氏らは、まさにこの改革が進んだ時代に学校教育を受けた世代である。
もちろん、「ゆとり教育を受けたから政治を知らない」という単純な因果関係はない。彼らは日本でも最高水準の学校を卒業しており、知的能力が低いわけでもない。
むしろ逆だ。
チームみらいは「自分で課題を発見する」「専門知識を使って解決する」「既存の枠組みにとらわれない」という、ゆとり教育が掲げた理念を極めて高いレベルで体現している人々なのではないか。
AI、エンジニアリング、コンサルティング、金融、行政。それぞれの分野では優秀なのであろう。
しかし政治には、問題解決能力だけでは足りない。
政治は「課題解決コンテスト」ではない
副首都法は単なる行政DXのプロジェクトではない。
首都機能をどこに置くのか、中央と地方の権限をどう配分するのか、議会制民主主義の中で政党がどのように合意を形成するのかという、歴史的・制度的な文脈の中にある。
こうした問題を理解するには、検索して出てくる情報や専門家の知識だけでは不十分である。日本政治史、憲政史、地方自治制度、政党政治についての体系的な知識が必要になる。
「課題を発見し、テクノロジーで解決する」というスタートアップ的な思考だけで政治を見ると、政治そのものが巨大なハッカソンに見えてしまう。
※ハッカソンとは、プログラマーやデザイナーなどがチームを組み、短期間で集中してソフトウェアやサービスの開発・アイデア創出を行い、その成果を競い合うイベントのこと。
「未来」を語る前に過去を学べ
チームみらいは「右でも左でもなく未来」を掲げる。
それは新鮮に聞こえるが、政治では少し危険な言葉でもある。
政治制度は、過去の失敗や対立を何十年、何百年とかけて調整した結果としてできているからだ。その歴史を知らずに既存制度を見ると、古くて非効率なものにしか見えない。
そして「デジタル」「AI」「アップデート」という新しい言葉を加えただけで、制度改革をしたような気分になる。
チームみらいは、ある意味で「ゆとり教育」の理想的な卒業生なのかもしれない。自ら考え、課題を発見し、専門性を使って解決する能力は高い。
だが政治家に必要なのは、それだけではない。未来を設計する前に、なぜ現在の制度がこうなっているのかを知る必要がある。
チームみらいにいま必要なのは、もっとAIを宣伝することではない。まず政治を勉強することではないか。捲土重来を期待したい。







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