昨日のアメリカの金融政策決定会合、記者会見は注目でした。ウォーシュ議長の2度目の記者会見ですが、前回のデビュー戦の時、私は「不思議な方だな」と思ったし、記者の方々の顔も困惑の表情でした。ただ、1度目の時は緊張もあるし、多少はおおめに見るものですが、今回は議長発言に対して記者達も真剣勝負。ウォーシュ氏の冒頭の説明はパウエル議長時代より2倍ぐらいの長さで且つ、わかりにくいのであります。妙に哲学的でもあるし、自己陶酔のようにも聞こえるのです。そして今回の極めつけが「インフレ率の目標は2%」と決めつけたことであります。

ケビン・ウォーシュFRB議長 Federal Reserve Xより
世界の中央銀行が目標とするインフレ率2%は別に定義がある訳じゃないのです。それぐらいが経済を吹かし過ぎず、程よい巡航速度とされる経験則的な目標です。経済という生き物は人間と同様、呼吸をしているわけですから、インフレ率も多少ブレるわけですが、それが許容範囲で且つコントローラブルであればさほど気にすることはないのです。ですが、ウォーシュ氏の2%というピンポイント発言には私は「あれ?そこまでこだわるかな?」と思ったのです。
次の矛盾は会合での採決で利上げ意見が3名出た点です。これは消費者物価指数がが3.5%程度上昇しているので2%に固執するなら利上げするべきですが、それをせず、かつウォーシュ氏も据え置き意見をしたのは自己矛盾を起こしていないかと思うのです。よって記者たちがしきりに気にしたのはビハインド ザ カーブ、つまり政策が後手に回っていないか、でありました。それに対して「長期金利が上昇しているからFRBの利上げの政策の代替効果がある」という趣旨の回答でした。これはややもすると宇宙人のようなレスであり、多くの記者は不満げというか、やってられんという表情でありました。私も珍しく記者会見を途中まで見て、バカバカしくなり聞くのを止めてしまったほどです。
問題はその直後に起きています。金融市場がそれに鋭く反応したのです。株価は急落。30年物国債の利回りは一気に14ベーシスポイント急騰し、2007年以来の水準となったのです。
次に為替が動きます。米ドル売りが世界通貨に対して加速したのです。ユーロなど主要通貨に対してNY時間30日昼頃で前日比0.50%前後、揃って下げている状況です。ドル指数は前日28日の終値101.49からこれを書く30日のNY時間昼頃で99.90まで下落しています。率にして1.6%。
さて、ここからが推測ですが、これに乗じたのが円ドル相場。NY時間の早朝、一気に為替介入をした形跡があります。つまりアメリカの金融政策の揺らぎに乗じ、為替介入にフォローの風を受けた形で円買いドル売りを仕掛けたように見えるのです。これで前日に163円台後半だったものが一時157円台までつける円高になりました。
今回、介入にいくら使ったかはいずれわかりますが、それなりの為替差益が出るはずですから食品消費税減税の財源にしたらよいのではないでしょうか?
話を元に戻します。要はウォーシュ新議長は市場に強い不満と警戒感、それに不安感を持たせてしまったのです。「これは今後、苦労するな」と私が思う点は2つ。利上げするならトランプ氏との話をどうするのか、2つ目はFOMCをまとめきることが可能なのか、であります。もしもFOMC会合がある程度一枚岩にならないとすればそれは議長失格であり、かつ、記者会見を通じて市場に疑念を持たせるようであれば市場からの厳しいバッシングがあると考えるべきです。
ある意味、市場は今回、利上げを容認していた節があります。私も可能性はあると感じており、故にこのブログで「サプライズがあるかも」と述べていたわけです。ところがトランプ氏の信認を受けて議長になったわけですが、そのトランプ氏は「先進国で最も低い利率の実現」を声高に叫んでいる中で利上げなどしたら何を言われるかわからないわけです。故にどっちつかずの中途半端なポジションを取ったとみています。
市場の催促は続くので9月のFOMCでの利上げの可能性は高まりました。ただ、消費者物価指数の推移を見る必要があり、非常に動きの荒い原油相場がガソリン価格にどう響くか、これが一つのキーエレメントになるでしょう。イランとの争いについてはさっぱり読めないのですが、今の緊張感が続く限り原油輸送がままならないわけで価格は高止まりしやすいと考えるべきでしょう。ならばインフレ率が急速に改善しないだろうから利上げせざるを得ないということになります。
一方、それは円にとって非常に不利であり、為替介入効果は今回もすぐに消える可能性はあり得ると思います。アメリカが利上げし、日銀が10月ないし12月頃の利上げとなれば目先対ドルで165円がターゲットになってくるかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月31日の記事より転載させていただきました。







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