日米為替協調介入:相当無理をしている片山さつき財務相

週明けの円相場の動きに注目が集まります。30日にベッセント財務長官が弱い円に対する支援を表明したことから日米為替協調介入が見込まれるからです。財務省はここにきて前回の11兆円の介入効果がほとんどなく、163円99銭までつけた為替相場に業を煮やしてもう一度8.5兆円程度の介入をし、157円台まで持ってきました。またアメリカ当局によるレートチェックもあり、この数日はドル円は相場の攻防から円高に抜けるシーンが何度か見られました。

そこで30日にベッセント財務長官が記者会見で「円は著しく売られている」とし、まるで手元のメモを見せるようにして50億-100億㌦(1兆6000億円)の円買いを暗示しました。

これは日米が協調して弱い円を修復するという姿勢を示すことになり、専門家のコメントを受けた報道を見る限り概ね一定の効果があると予想されています。

ベッセント財務長官と片山大臣 財務省HP 2025年10月

日米協調介入は直近は2011年の震災の際に円のレパトリに伴う過剰な円高を防ぐために円売りドル買いの協調介入をしています。円買いドル売りの協調介入となれば1998年のアジア通貨危機までさかのぼることになります。アメリカでは基本的に「価格は市場が決める」という考えがあり、為替介入は邪道というスタンスを取り続けてきました。それなのになぜ今回、珍しく協調介入をしようとしたのでしょうか?

私が考えるシナリオは以下の通りです。

① 円相場は日本経済の鏡であり、構造的な弱さから円が売られる状態が続いている。
② 今般、高市政権が財務規律に対して緩めのスタンスであることから更なる円安を招きやすい状況にある。その上、食品消費税1%の検討を指示したことで円の独歩安のシナリオが強まった。
③ 日銀は利上げのバイアスにあるものの急速な利上げは経済の巡航スピードに多大なる影響を及ぼしやすい。よって日銀政策を考えると年内あと1回の利上げが精いっぱいだろう。
④ FRBは前回の会合で利上げ意見が3人出ており、アメリカも利上げバイアスが見込まれ、日米間の金利差は当面大きく改善することはなさそうだ。
⑤ 円の防衛のために財務省はアメリカ国債を売却しそのドルを売る訳だが、アメリカ国債を管理するベッセント財務長官としてはアメリカの金融政策を考慮するうえで都合が悪い。
⑥ 円の支援をするのに自国通貨のドルを売るのは間尺に合わないのでユーロを売って円を買うというクロスを振ることにした。

これが背景だろうと思います。ではここからが為替という未知の世界についての私の考えです。

ア ベッセント氏が示したのはたった1.6兆円規模。財務省は前回と今回で既に20兆円使っていることを考えれば規模が小さすぎないか?
イ 前回の震災の際のような協調介入は一時的な円のレパトリという明白な理由があったからこそその効果があったと言える。今は日本経済の構造的問題を抱える中で専門家が期待するほどの持続性のある効果が期待できるのか?
ウ 今回の協調介入で10円程度、あるいはもっと動くかもしれないが、企業側の立場としては円高や円安より「急激に変化する為替相場」こそ最大の敵であることを忘れてはいないか?
エ 短期的視野で見ると高市政権の政策に対して財務省が防波堤役になって崩壊を防いでいるというようにしか見えない。特に財務省がアメリカ財務省の支援をここまで取り付けたということは相当の危機感の表れともいえ、見方によっては日本の政権を弱さを見据えたうえでのプロ アクティブな行動で最悪の状態を未然に防ぐ対策のようにも見える。

この話を冷静に考えるとプロのトレーダーから見れば協調介入で一旦、底をつけた時点で巻き返すタイミングを計るとみています。なぜなら日本は弱いぞ、だからアメリカが支援するのだ、というのがもろ見えなのです。

為替介入とは言ってみれば真夏の暑い日本でプールに入るようなものなのです。1時間プールに入ってあぁ、気持ちよかったといって出てみればそこでは灼熱が戻るのです。これを改善するには暑い夏そのものが過ぎ去るのを待つしかないのは自明の理。よって日本政府としては次の手を用意しないと全く意味がないのです。構造的改善をする方法は

a  金利を上げる。(イェール大学の浜田教授は4%まで上げろと言っています)
b  政策転換をする(食品消費税減税を止めれば効果があるかもですね。)
c  日本経済がドラスティックに変わるような政策を打ち出す (370兆円の投資発表ではびくともしなかった理由は何でしょうか?)
d 賃金の大幅上昇を義務化させ、より資本力を強化し、不毛な価格競争に終止符をうつこと。

が私の思うところです。異論も多いでしょう。しかし、今回の協調介入は私から見れば苦渋の選択だったとしか思えないのです。片山大臣は相当無理しているな、というのが分かります。一方、仕事師だというのもよくわかりました。事の成り行きを見守りたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年8月3日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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