日本とアメリカが、急激な円安を止めるための協調介入に踏み切った。ドル円相場は一時1ドル=163円台まで下落したが、介入後は157円台まで円高が進み、日米両政府が協調介入を認めた8月3日には一時156円50銭をつけた。わずか数日で約7円も円高になったのだから、短期的な市場への衝撃は大きかった。
では、今回の介入は成功だったのか。結論からいえば、短期的には成功だが、円安の根本原因を解消したわけではない。今回の日米協調介入は、円安を治療したというより、治療を始めるまでの時間を買った政策と評価すべきだ。
最大の効果は「アメリカも円安を許さない」というシグナル
為替介入の効果は、政府が実際に売買した金額だけでは決まらない。市場参加者に「これ以上円を売ると損失を被る」と思わせることが重要である。日本政府だけが介入しても、投機筋の養分になることが多い。
しかし今回は、アメリカも円買いに参加した。ニューヨーク連銀がユーロを売り、円を買ったと報じられている。米政府が円を直接支えるのは極めて異例であり、日米の協調介入としては2011年以来となる。
これは市場にとって大きな意味を持つ。円売りは、もはや日本政府だけを相手にした取引ではない。世界最大の金融市場と基軸通貨を管理するアメリカ政府を敵に回す取引になったのだ。
次の介入が東京時間に来るのか、ニューヨーク時間に来るのか、ドルを売るのかユーロを売るのかも読みにくくなった。介入額以上に、この不確実性が投機筋の円売りポジションを巻き戻させた。
アメリカが助けたのは「友情」ではない
トランプ大統領は、日本を助けるのは「友情のしるし」だと説明したが、アメリカが動いた理由は友情ではない。円安が進むと、日本政府は円買い介入の原資を確保するため、外貨準備として保有する米国債を大量売却する可能性がある。
財政赤字と国債借り換えに苦しむアメリカにとって、日本による米国債売却は無視できない問題である。今回の介入には、円安と日本国債安が米国債市場に波及することを防ぐ狙いもあったとみられている。
その意味で注目されるのが、FRBのFIMAレポ・ファシリティである。これは、日本などの外国通貨当局が米国債を担保にして、一時的にドルを調達できる制度だ。日本は米国債を市場で売却しなくてもドルを確保し、そのドルを売って円を買うことができる。
もう一つは、実質マイナス金利の円資金がキャリートレードでアメリカのAIバブルを支えている状況がある。日本政府が大規模にドルを売って急激な円高になると、これが逆転して円資金が逃避し、2024年の「植田ショック」のような事件が起こってAIバブルが崩壊するおそれがある。
円安の原因は高市政権の「金融抑圧」
しかし介入で円安の根本原因が消えたわけではない。日米金利差は依然として大きい。中東情勢によるエネルギー価格の上昇も、日本の輸入負担を増やしている。日銀は6月に政策金利を1%まで引き上げたが、円安を止める効果はなかった。
日本政府は4月から5月にも、総額11.7兆円にのぼる円買い介入を行った。円は一時155円台まで上昇したが、その後は再び163円台まで下落した。介入には急激な変動を抑える効果はあるものの、相場の大きな方向を変える力には限界がある。
ベッセントは高市政権に政策転換の時間を与えた
今回の介入は、投機的な円売りを止めるという点では成功したが、介入だけで円高を定着させることはできない。日銀が追加利上げを行い、高市政権が財政拡張を抑えれば、今回の156円台が円安トレンドの転換点になる可能性がある。
為替介入は市場の流れに逆らって円を買う政策であり、政府の方針との整合性がないと効果は長続きしない。政府が巨額の財政支出や消費減税を打ち出し、日銀に低金利を求めながら、財務省が円安を止めるために円を買うのは、アクセルとブレーキを同時に踏む政策である。
今回の日米協調介入は円安をいったん止め、日本政府と日銀に政策転換の時間を与えた政策である。その時間を金融政策の正常化と財政規律の回復に使えるか。それとも、再び円安を促すバラマキ政策に使ってしまうのか。介入の本当の成否を決めるのは、為替市場ではなく高市政権である。







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