
mapo/iStock
この記事では、各国政府の投資(総固定資本形成)についての国際比較をご紹介します。
1. 日本政府の投資
経済統計(SNA:System of National Accounts)における投資とは、機械・設備や建物・構築物、研究・開発・ソフトウェアなどの無形資産(知的財産生産物)など、一定期間以上繰り返し生産に用いられる固定資産への支出です。
この投資は、総固定資本形成と呼ばれ、GDP支出面の1項目となります。

図1 総固定資本形成 日本
OECD Data Explorerより
部門別に日本の総固定資本形成を可視化してみると、日本の企業(非金融法人企業)はバブル崩壊後も一定範囲で投資が継続してきました。
一方で、家計(主に住宅投資)や一般政府(公共投資)は一時期よりも減少し、その後も停滞傾向です。
特に、政府の投資はバブル崩壊後に増加し、1990年代末から減少しています。
バブル・バブル崩壊と少しタイミングがずれているのが印象的ですね。
当時は、バブル崩壊によって減少する経済活動の穴埋めとして政府の投資が増え、「ハコモノ行政」などとして批判の対象となっていたようです。
2. 1人あたりの推移
ここからは政府の総固定資本形成について、国際比較していきましょう。
まずは人口1人あたりの金額水準からです。

図2 総固定資本形成 1人あたり 一般政府
OECD Data Explorerより
図2が主要先進国の一般政府による総固定資本形成について、人口1人あたりのドル換算値(為替レート換算)を計算したものです。
日本は1990年代に極めて高い水準に達し、その後減少して他国並みとなっている事が確認できます。
当時はプラザ合意以降急激な円高となり、ドル換算値だと数値が大きくなりやすい事に留意は必要ですが、当時の日本政府の投資がかなり多かった事が確認できます。
3. 1人あたりの国際比較
つづいて、最新の数値でより広い範囲で国際比較してみましょう。

図3 総固定資本形成 1人あたり 一般政府 2023年
OECD Data Explorerより
図3が203年のOECD各国の国際比較です。
日本は1,404ドルでOECD34か国中22で、先進国の中ではやや少ない方になります。
上位はルクセンブルク、ノルウェーなど人口が少ない高所得国が並びますが、アメリカやカナダも相対的に多い方になるようです。
4. 対GDP比の推移
続いて、付加価値の総額となるGDPとの比率としても確認していきましょう。

図4 総固定資本形成 対GDP比 一般政府
OECD Data Explorerより
図4が対GDP比の推移です。
日本は1990年代中頃に6%を超えていて、他の主要先進国と比べれば相対的に政府の投資が多かった事が確認できます。
その後は対GDP比で見ても低下傾向となり、4%前後で停滞傾向が続いています。
ドイツやイギリス、イタリアが2~3%程度なのと比べると、やや多い方となりますね。
近年ではアメリカを上回っていて、カナダやフランスと同程度です。
5. 対GDP比の国際比較
最後に、対GDP比の国際比較です。

図5 総固定資本形成 対GDP比 一般政府 2023年
OECD Data Explorerより
図5が対GDP比の2023年における国際比較です。
日本は4.1%でOECD34か国中17位と先進国では中程度となります。
上位はエストニアやスロベニア、ハンガリーなど東南欧の経済発展中の国が多く、政府によるインフラ整備などが進んでいる様子が窺えます。
日本は対GDP比では、他の主要先進国と比べてやや高い水準となっているのが印象的ですね。
稼ぎの総額であるGDPの割には、やや政府の投資が多い方になるようです。
6. 政府の投資の特徴
この記事では政府の投資(総固定資本形成)について国際比較をご紹介しました。
日本はバブル崩壊後極端に投資が多い時期があり、近年でもGDPの割にはそれなりの規模の投資があるようです。
私たちは公的機関の建物や施設だけでなく、社会インフラや公園・公衆トイレに至るまで政府による投資の価値を生活の一部として享受していますね。
例えば欧州に行くと、公衆トイレがなかなか見つからず難儀する人も多いのではないでしょうか。安くて便利で、安心・安全な暮らしの裏には、これまでの政府の投資も大きく寄与してきたことになりそうです。
一方で、高度成長期に投資された橋梁や道路、校舎などの建物などが老朽化し、維持費用が嵩んだり、建替えに迫られたりする事例も増えているようです。
少子高齢化や今後の人口減少、地方と首都圏の格差などを踏まえ、議論が多い項目と思います。
まずは現在値について知る事が大切ではないでしょうか。
皆さんはどのように考えますか?
■
この度、当社の取り組みが1冊の本としてまとまり、日経BPより出版されました!
経済の構造(SNA)と統計データに実務者としての視点を加え、私たち働く当事者が今後どのようなマインドセットを持つべきかを、考えるという内容です。
是非ご一読いただけましたら幸いです。
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2026年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。








コメント