「自分探し」は若者よりむしろ中年の悩み

黒坂岳央です。

世間では、「自分探し」は若者特有の悩みだと思われがちだ。

確かに、若い頃には悩む場面が少なくない。自分自身もそうで進路に大いに迷ったものだ。大学に行くべきか?他大学への編入か?海外留学か?就職は日系企業か外資系企業か?起業はして大丈夫なのか?結婚は?子供は?大いに悩んだ。

若者は、人生の選択肢が多いので、誰しも人生最大級に悩みが多いというのが共通認識だろう。だが、40代以降になってみると、若い頃の悩みより今の方が遥かに悩みの質が深くなったと感じる。

筆者は「自分探しは若者より、中年の悩みでは」と思っている。持論を述べたい。

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若者の悩み、中年の悩み

こんなことをいうと反発されるかもしれないが、筆者は「若い頃の悩みは数多く、そして深いが方向性は見えている」と思っている。

どういうことか?若い頃は「自分の市場価値を高める」という悩みで共通しているからだ。

大学選び、留学、就職先選び、転職、起業、こういった悩みはすべて「人生をより良く上向かせるための手段の悩み」である。結婚や出産は少し毛色が違えど、誰しも「この人とずっとそばにいたい」と思える人と出逢えば、自然にゴールはそうなりやすい。

これも「人生をより豊かに、楽しく過ごすための要素」として、やはりすべては「付加価値要素」といえる。彼らが選択に迷っているのは「方向」ではなく「手段」である。

だが中年になると、問題の次元が変わる。「どうすればさらに上へいけるか?」だけでなく、「そもそも終わりが見えてきた残りの人生を何に使いたいのか」を考えなければならなくなるからである。これは手段では解決できない点で若い頃と異なる。自分自身も日々、悩みながら生きている。

中年になると「人生の終わり」が見えてくる

若い頃は、人生の終わりなどほとんど意識しない。それゆえに確かに悩みは多いが「失敗してもやり直せばいい」ができる。

だが40代になってくると、それが変わる。親が亡くなったり、同級生が亡くなることで、結婚式に呼ばれる機会より、葬式に出る機会が増えてくる。それまで頭では知っていた「人間はいつか死ぬ」という事実が、急に現実になるのである。

そして、現実的に40代は「やり直し」が難しい事も出てくる。中年になると、あらゆることが「最後のチャンス」になるのだ。

起業するなら「いつか起業したい」ではなく、「今やらないと一生やらない」となる。転職は「最悪、当たりが悪ければ次へ行けばいい」ではなく、「次が最後の転職」と考える。ビジネスマンとして専門家として生きるのか、マネージャーを目指すのか。会社員を続けるのか、独立するのか。

こうした選択の一つ一つに、「これが最後のチャンス」という感覚が付きまとう。

選択肢の重さが悩みを深くする。筆者は結構転職が多かったのだが、それは「まあミスったらまた転職すればいい」と考えていたからだ。だが40代では同じことは考えられないため、必然的に行動や選択は慎重になり、若い頃より思い悩む。

仕事か家族かの究極のトレードオフ

「仕事か家族か」と世間では言われる。「両立は可能!」とポジティブな事を言う人もいるが、完全に両方にコミットは非常に難しいというのが現実で、本気を出すならどちらかを選べば片方は取れないというトレードオフになると思っている。

筆者は若い頃、仕事にフルコミットした。趣味も、友人関係も、ネットも封印して、とにかく仕事に時間を投入。それで仕事は一定の成果を得ることができた。独立してからはますますコミットメントして、早朝5時から夜22時すぎまで365日、元旦やGWも働いた。

だが、今は違う。ハッキリいえば定時帰りの会社員より仕事時間は少ない。これは「仕事をサボりたいから」ではなく、「家庭を優先するため、やむを得ず量を減らした」というトレードオフである。

本音で言えば、前のように仕事をしたい気持ちも湧いてくることがある。たまに妻が子供を連れて実家に帰省すると、一人暮らし状態となり、その時は以前のように早朝から夜遅くまで働いて「やっぱり仕事は楽しい」と思える。

しかし、自分はもう以前ほど働く事はできない。代わりに子供の勉強を見たり、家事をする。遊び相手になったり、家族旅行へ出かけるために以前やれていた仕事はできなくなったものもある。

問題は子供たちが独立した後だ。そうなればまた以前のように仕事にフルコミットできるが、その時に自分にできる仕事がどれだけ残っているか分からない不安はある。

このように「あっちを取ればこっちが立たず」「どう生きるか?」のような本質的で重い悩みがついて回るのだ。

中年のかかる「ミッドライフクライシス」は若者の「自分探し」と本質はあまり変わらないのではないだろうか。中年の自分が人生選択に大いに迷うのは、「自分はどっちの道なら満足か」という自身をよくわかっていないことに起因している。

40代になっても人は全然自己理解は完全ではない。残された人生の時間も終わりが見えることで、自分探しは未だに続いている。

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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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