外資でもレイオフできない日本は解雇ルールのない「無法地帯」

西川 祐二郎

米Googleの日本法人の女性エンジニアが、解雇は無効だとして東京地裁に提訴した。女性側によると5段階評価で上から3番目だったが、2026年3月に解雇されたという。女性は労働契約上の地位確認に加え、月額122万5000円の賃金などを請求している。

Googleでも日本の労働法から逃れられない

「外資は社員を簡単にクビにできる」という通念は間違いだ。米国企業では、業績不振を理由に従業員を退職させることは珍しくないが、日本法人は日本の法律に従わなければならない。

日本は「解雇規制」のきびしい国ではない。OECDの2026年版雇用見通しによると、正社員に対する日本の雇用保護規制の厳格度はOECD平均をやや下回る。日本の本当の問題は、解雇できる条件が曖昧なことだ。

労働契約法16条には「合理的な理由」「社会通念上相当」としか書かれておらず、具体的な線引きは判例の積み重ねに依存する。企業側から見れば「この条件なら解雇できる」という明確な基準がない。

労働者側も、会社と争えば何年かかり、最終的にどれだけ補償されるのか分からない。これでは企業も労働者も消耗する。

「クビにできない会社」は採用にも慎重になる

解雇規制は一見すると労働者を守っているように見えるが、企業からすると、一度正社員を採用すれば業績や事業環境が変化しても簡単には解雇できないので、採用に慎重になる。

正社員採用を抑え、非正規雇用や業務委託を増やすインセンティブにもなる。成長産業に人材が移動しにくくなり、衰退産業に労働力が固定される。

AIによって仕事内容が急速に変わる時代には、この硬直性はますます大きな問題になる。10年前に必要だった職種が10年後にも必要とは限らないからだ。

必要なのは「終身雇用を法律で守ること」ではなく、失業した人を失業給付、職業訓練、再就職支援で守る仕組みである。

解雇の金銭解決ルールをつくるべきだ

そこで必要なのが解雇ルールの明文化だ。例えば勤続年数や賃金、解雇理由などに応じて一定の補償額を法律で定め、不当な差別や組合活動への報復などを除いて、一定の条件を満たせば金銭による解決ができるようにする。

厚生労働省でも「解雇無効時の金銭救済制度」は長年検討されている。2025年11月の労働政策審議会でも、解消金に上限・下限を設けることで予見可能性を高める案などが議論された。

もっとも現在検討されているのは、解雇不当の訴訟で労働者側が金銭解決を選択する仕組みであり、「企業がお金さえ払えば自由にクビにできる制度」ではない。

重要なのは企業に解雇の自由を与えることではない。労働者には十分な補償を与える一方、企業には予測可能な出口を用意することだ。

誰をどんな条件なら解雇できるのかが法律でわからない無法地帯では、危なくて日本企業も外資も採用できない。「解雇規制を守るか、自由化するか」という昭和型の二択から卒業し、転職が当たり前になった時代に合わせた透明で予測可能な解雇ルールをつくるべきだ。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント