9月が嫌な響きを持つと考えるのは私だけではないでしょう。何故かといえば87年のブラックマンデーやリーマンショックなど市場を揺るがす事態が秋に多く起きるトラウマであります。が、なぜ秋なのかと考えると私は以前、7-8月が夏休みでその間「見ない、聞かない、触らない」であり、2か月間の歪みが一気に具現化するからではないか、と述べたこともあります。
では今年の秋はどうかと言えば以前から私が指摘していたのはAIブームの賞味期限、イラン戦争、アメリカ中間選挙への不安要素であります。一方、〇〇ショックは通常、誰も想定していないところから始まるのであり、仮に今年、何かが起きたとしても私が想像するようなことが原因になることもないのでしょう。
さて、現実的な話をしましょう。まず日本を見ると長期国債の金利上昇と利上げ見込みが懸念材料になっています。長期国債が上がっているのは日本だけではなく、世界的現象であります。東大の伊藤元重名誉教授は「インフレへの転換の影響もあるだろうし、積極的な財政運営の影響もある」(産経)と述べ、エコノミストの上野泰也氏は「トランプ要因に加えて、高市早苗内閣の『責任ある積極財政』や、AI(人工知能)関連企業による多額の資金調達」(日経)と述べています。

高市首相 首相官邸HPより
経済運営の原則論として、民間投資と政府部門の投資はある程度相互補完の関係であるべきです。つまり民間投資が減退した時、政府部門が投資を行い、経済の失速を防ぐという発想です。一部の専門家が高市氏の責任ある積極財政に異論を示すのは民間部門の投資がバブル期を抜いて過去最高の120兆円レベルにあるにもかかわらず、政府部門もアクセルを吹かそうとしているからであります。これが財政不安のみならず、インフレ要因になっているわけです。
インフレは往々にして株高を伴うことがあります。80年代のバブルの時もそうでしたね。そしてあの時を思い出すと日銀や政府が景気の熱さましに躍起となり、金融の引き締めを急激に行い様々な規制を行ったことで一気に失速しました。今回、日銀はあの時同様、引き締めのペースを加速するかもしれません。ただし、政府部門はアクセルを吹かすのですね。このちぐはぐ感がいわゆる未体験ゾーンになると思います。
では世界に目を転じてみましょう。まず戦争が与える影響ですが、イラン戦争の影響度は読みにくいところです。トランプ政権はイランをあらゆる制裁を通じて封じ込めようとしていますが、私から見るとイラン国内にアンチ アメリカ派を加速度的に増やしているように見え、そのために防衛費を増大し、仮想敵国が増え、ブロック経済化に似たような事態が進んでおり、世界でインフレとなっているように見えるのです。
次に少し前に私はこのブログで厳しい言葉で指摘しましたが、ベッセント氏の指導力が地に落ちつつある点であります。特にこのひと月の間の3つの失敗、つまり円の協調介入、アメリカ超長期債の利回りを短期国債を使ったオペレーション ツイスト、イランへの最も強力な経済制裁と銘打った発表が期待外れとなったことです。これらは既に金融専門家の間では公然と語られている状況であり、ベッセント氏の失地回復が望まれるところです。
最後にもしも誰も予想していない経済問題が起きるとしたら一つ候補があります。それはシンガポールのラディアント ワールドという資源商社で起きている大規模な不正と偽造書類提出問題であります。この会社の取引規模は年間1.4兆円程度なのですが、他にも関連会社があり、全体像が見えていません。この会社の不正取引を巡り資源世界最大手の一角、グレンコアが引当金を充てたほか、みずほ、ドイツ銀行、ソシエテジェネラルなどが訴訟に踏み込みます。問題は鉄鉱石の取引量が年間7000万トンあり、流通の目詰まりなどが起きる可能性であり、このような問題は奥底が見えず、不安を煽りやすいとみています。
世の中は常に先が読めないのですが、今年の秋はそのエレメントが多いと思います。習近平氏の訪米もありますし、ウクライナ戦争もステージが変わる可能性があります。イスラエルの総選挙もあり、現状、ネタニヤフ氏が窮地にあるとされる中、どのような結果をもたらすかも注目です。そういう意味では市場が安定飛行するかどうかは何とも見通せず、乱気流も無きにしも非ず、という気がしています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月1日の記事より転載させていただきました。






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