14歳未満の女子生徒のスカーフ着用禁止

長い夏季休暇は終わり、9月に入ると新学期が始まる。オーストリアでは2006/27年度から14歳未満の女子生徒を対象にヘッドスカーフ(ヒジャブ等)の着用が禁止される。法律で「イスラムの伝統に基づき頭部を覆うもの」と定義されるヘッドスカーフは、公立・私立学校において禁止される。ただし、修学旅行や校外での学校関連行事、ホームスクーリング(在宅学習)などの場合には例外が認められる。

スカーフ着用禁止を発表するプラコルム欧州統合家庭相(中央)2025年9月10日

法的にスカーフ着用を禁止する試みは同国では今回が2度目だ。 オーストリア政府は2019年にも同様の禁止法を可決したが、2020年に憲法裁判所が「平等原則に反している」と違憲判決を下した。 その理由を「イスラム教徒の女性のみを対象としており、国家の宗教的中立の原則に反する」というものだった。

現政府は、憲法裁判所の懸念に対処するため、専門家と連携し、法的選択肢の検討、法的枠組みの策定、専門家の経験収集のための集中的な作業などを行ってきた。少女のエンパワーメントを図るだけでなく、親、教師、少年、そしてイスラム教コミュニティの積極的な参加を促すことを目的とした付随措置が講じられてきたというのだ。

オーストリア政府は昨年9月、14歳未満のヘッドスカーフ着用禁止の閣議決定した。新法案は、実質的にイスラム教の伝統に基づくヘッドスカーフ(ヒジャブなど)のみを狙い撃ちで禁止しており、キリスト教や他宗教のシンボルは対象外(着用・掲示が可能)となっている。キリスト教の十字架・ユダヤ教のキッパなどは、これまで通り学校での着用が認められている。

クラウデイア・プラコルム欧州・統合・家庭相は「キリスト教の十字架やユダヤ教のキッパは歴史的な文化、あるいは単なる信仰の象徴である」とする一方、14歳未満の女子が着用するヘッドスカーフは「少女を男性の視線から隠し、早期に性的対象化させるための抑圧の象徴(または政治的イスラムの象徴)」であると定義し、明確に区別している。同相によれば、「スカーフは明らかに抑圧の象徴だ。世界中で女性がベールをかぶっている場所を見れば、イスラム過激派が台頭し、女性の権利が踏みにじられている所が多い」というのだ。

ちなみに、違反に対しては、まず対話などの措置を通じて対応することが定められている。最初の違反があった場合、学校側は当該生徒および少なくとも1人の保護者と話し合いを行わなければならない。さらに違反が続いた場合は、管轄の学校当局が介入する。その後、児童・青少年福祉機関が関与することもある。違反が継続した場合にのみ、保護者に対して150ユーロから800ユーロの行政罰金が科される。罰金を徴収できない場合には、最大2週間の代替拘禁(罰金未納による拘禁)も規定されている。

新学期の開始を目前に控え、ニーダーエスターライヒ州のヨハンナ・ミクル=ライトナー知事(国民党)は、オンライン上での「ボイコットの呼びかけ」や、禁止措置を回避しようとする動きが活発化してきたことに懸念を表明、「法に対する意図的な挑発だ」と非難し、クリストフ・ヴィーダーケーア教育相(NEOS)に対し、法定罰金の上限を現在の800ユーロから2,500ユーロに引き上げるよう求めている。

一方、今回の14歳未満を対象とした新たな規制についても、多くの法曹関係者や人権団体、ムスリム保護者から「法的に維持不可能であり、基本的人権に反する」としてすでに複数の訴訟が提起されており、オーストリアのイスラム教共同体(IGGO)も「スカーフ着用禁止措置は子どもと民主主義を犠牲にする象徴的な政治行為だ」と批判。イスラム系家庭では、憲法裁判所へ異議を申し入れる動きも出てきていることから、着用禁止法が施行された後、学校と14歳未満の女子を持つイスラム教徒の家族との間で衝突する事態が十分予想される。

ところで、ここで特筆すべき点は、保守中道「国民党」主導の現政府はプラコルム欧州統合家庭相がここにきて政治的イスラム(ポリティカル・イスラム)の活動禁止を提案するなど、イスラム教への締め付けを強化してきていることだ。

オーストリアでは移民排斥を掲げる極右政党「自由党」が非常に強い支持を集めている。保守中道である国民党としては、反イスラム・反移民の姿勢を打ち出すことで、自由党に流れている保守系有権者の支持を繋ぎ止めたいという政治的思惑があるものと見られている。

参考までに、政府の公式調査(統合バロメーター)によると、オーストリア国民の72%が「移民の統合がうまくいっていない」と回答している。特に、過去10年間に急増した不法移民や難民の受け入れに対し、国民の68%が「限界を超えている」と感じており、イスラム教徒との共生に否定的な感情を持つ国民が約3分の2(66%)に達している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント