
政府は、省エネとCO2削減を理由に、家庭用給湯器の高効率化を進めている。ガス給湯器では、排気の熱も利用する「潜熱回収型」、いわゆるエコジョーズの普及を促す政策である。
2028年度からは、ガス給湯器メーカーに対し、出荷する製品全体の平均効率を現在より引き上げる目標が課される。制度上、従来型給湯器の販売を直ちに禁止するものではない。だが、メーカーが目標を達成しようとすれば、潜熱回収型の比率を高めることになる。消費者が交換時に選べる従来型の機種は、次第に減っていく可能性が高い。
問題は価格である。さまざまな販売店の小売り価格を調べると、小型の16号給湯専用機でも、潜熱回収型は従来型よりおおむね2万~4万円高く、中心的には約3万円の追加負担になる。
政府は、高効率機器ならガス代が下がり、長い目で見れば元が取れると説明する。東京ガスの試算でも、一人暮らし世帯が従来型からエコジョーズに替えると、月244円、10年間で2万9,294円のガス代の節約になるという。これならば、何とか元は取れることになる。
しかしながら、これは平均的な使用量を前提とした計算である。
実際には、単身世帯の給湯需要には大きなばらつきがある。毎日浴槽に湯を張る人もいれば、シャワーだけで済ませる人もいる。出張や帰省で家を空ける期間が長い人もいる。近年よく聞く「風呂キャン」のように、入浴頻度そのものが低い生活もある。
例えば、給湯を毎日5分間のシャワーだけで済ませると仮定すると、エコジョーズへの交換費用3万円の回収には20年以上かかる計算になる。
メーカーが示す点検・取替えの目安は10年である。20年以上かけなければ回収できない投資は、標準的な取替え期間内には元が取れない。
これだけではない。政府は、2034年度に向けた新制度を取りまとめ、ヒートポンプ給湯器や家庭用燃料電池を含む高効率給湯器の比率を、いっそう高める方針である。
ここには、昭和時代の家族世帯がお風呂を使うときのように、大量のお湯を供給するという発想が暗黙裡に残っているように思える。
しかし日本では、世帯人数はどんどん減っている。単身世帯の割合はすでに全世帯の4割近くを占め、なお増え続けている。必要なお湯の量が少ない世帯にまで、高価な給湯器を導入させるとしたら、それはいくら省エネだといっても、多くの費用負担をもたらすことになる。
省エネ規制は、平均的な家庭についての計算だけで決めてはならない。単身者や、短時間シャワーを浴びるだけの人、お風呂にお湯を張ることが少ない人々に、むやみに高価な給湯器を押し付けてはならない。
2028年、そして2034年に向けた給湯器の省エネ規制は、それが国民にとっての負担増になることがないかという観点から、見直すべきではないだろうか。
なお本稿についてさらに詳しくは下記のワーキングペーパーを参照されたい。
ワーキング・ペーパー(26-018J)家庭用給湯器規制の「2028年問題」と「2034年問題」

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