ノルウェーとリヒテンシュタインの例は愛子天皇を否定:ヨーロッパ王室での男女平等は改正後誕生の子に限定

ヨーロッパのロイヤル・ファミリーで男女の差別をやめるところが増えて、最後まで女王を認めていなかったリヒテンシュタインもついに継承法を改正した。

ただ、このほど崩御されたノルウェーのハーラル5世の継承者は、長子が女性だが弟のホーコン皇嗣が継いだし、リヒテンシュタインも皇嗣アロイス公の次女にはあいかわらず継承権がない。

新原則は新たに生まれてくる子から適用するのがヨーロッパでも常識で、日本における愛子天皇論のような非常識な主張はヨーロッパでは相手にされない。

ノルウェーは改正前の世代に旧ルールを適用

ノルウェーのハーラル5世が8月28日に崩御されて、第2子で長男のホーコン8世が新国王となった。ノルウェーは1990年5月29日の憲法改正で、男女を問わない長子優先制へ移行した。ただし経過措置があり、1990年以前生まれは男子優先、1971年以前生まれにはさらに旧規定が適用されることになった。したがって、前国王のもとでの順位は以下のようになっていた。

ホーコン8世 Wikipediaより

男女平等の新原則が適用されたら、姉のマッタ・ルイーセ王女が女王になるはずだが、上記の原則に従い、ホーコン皇嗣としての地位が維持された。

順位 人物 生年 ハーラル5世との関係 適用される継承原則
1 ホーコン王太子 1973 長男 1990年以前生まれなので男子優先
2 イングリッド・アレクサンドラ王女 2004 ホーコン長女
3 スヴェレ・マグヌス王子 2005 ホーコン長男
4 マッタ・ルイーセ王女 1971 長女 ホーコンの姉
5 モード・アンジェリカ・ベーン 2003 マッタ長女
6 リーア・イサドラ・ベーン 2005 マッタ次女
7 エマ・タルーラ・ベーン 2008 マッタ三女

そして今回、ホーコン国王となったことで、順位は次のようになった。

  1. イングリッド
  2. スヴェレ
  3. マッタ・ルイーセ
  4. ~6. マッタの娘3人

ホーコン国王をめぐるノルウェー王室の事情

ノルウェーの前王妃であるソニア・ハラルドセンはオスロの洋品店の娘である。王子との交際が始まったあと大学に通い、美術史、英語、フランス語などを身につけた。この結婚が認められたのは、日本で美智子さまが皇太子妃になったことも影響したともいわれる。

ホーコン国王の妃であるメッテ=マーリット・ティェッセム・ホイビーは、未婚の母で、元夫はコカイン所持の犯罪歴まであり、彼女自身もドラッグ・パーティーに出入りしていた。オスロ市内のアパートで同棲していたものの、この結婚には反対も多かったが、婚約会見で涙ながらに過去の不祥事を告白し、同様の人たちの救済に力を尽くしたいと決意表明したことが好評で、なんとか国民の支持を獲得することにとりあえず成功した。

あまり大丈夫そうには見えなかったが、ジェフリー・エプスタインとの親密な交流が明るみに出てスキャンダルになっている。2018年に肺線維症を公表し、2026年には肺移植を受けて、公務も難しいが、回復したとしても公務に復帰できるかどうか微妙だ。

結婚前に交際相手との間にもうけた長男がマリウス・ボルグ・ホイビー(1997年生)で、彼には王族身分も王位継承権もないが、2024年以降、元交際相手への暴力などをめぐり捜査・起訴され、2026年6月、オスロ地裁で2件の強姦、家庭内暴力、傷害、薬物犯罪など計34件について有罪とされ、懲役4年を言い渡された。

判決は確定していないが、2026年7月以降は、王室の居邸スカウグムで電子足輪付きの自宅拘禁状態に置かれ、少なくとも9月7日まで継続する決定が出ている。

リヒテンシュタイン公国~オーストリアからスイスに鞍替え

リヒテンシュタインは、スイスとオーストリアの国境にある。18世紀に神聖ローマ帝国のカール6世から諸侯としての地位を認められた。そののちシェレンベルク男爵領とファドゥーツ伯領を購入して、これがたまたまオーストリアとスイスの国境にあったことから、ドイツ帝国に参加せずに独立の永世中立国となった。

第1次世界大戦までは、オーストリアの付属国のようなもので、大公もウィーンに住んでいたが、戦後はスイスの影響下に置かれた。元首の称号フュルストは侯と訳されるが、一方で、リヒテンシュタインは公国と呼ばれ、元首も大公という表現もされる。これは、フュルストの称号は、英語ではプリンス(公、大公)なのだが、神聖ローマ帝国ではヘルツォーク(公爵)の下位、グラーフ(伯爵)の上位に置かれることが多く、しかもヘルツォークがフランス語や英語の公爵、グラーフが伯爵にそれぞれ相当し、侯爵と同じ起源の爵位がドイツにはないということから、英仏で大公と呼ばれていることから生じた混乱である。

ハンス・アダムス2世は有能な事業家として知られ、2002年にウィーンの宮殿を修築し、膨大な美術コレクションをリヒテンシュタイン美術館として公開して話題になった。六本木の国立新美術館で2012年に「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」という展覧会が開かれて話題になった。皇太子のアロイス公が早々に摂政を務めている。

男女平等への改正も遡及適用はなし

2026年8月15日に家法が改正され、それまでの男子のみの長子相続から、男女平等の絶対的長子相続へ移行することが決まった。

ただし遡及適用はされない。新制度が適用されるのは、アロイス世子夫妻の「子供たちから今後生まれる子孫」だけである。

リヒテンシュタイン侯 ハンス=アダム2世 Wikipediaより

したがって、現在生存している王族の順位はまったく変わっていない。

現君主はハンス=アダム2世で、アロイス世子は2004年以来摂政である。

順位 人物 生年 ハンス=アダム2世との関係
1 アロイス世子 1968 長男
2 ヨーゼフ・ヴェンツェル公子 1995 孫・アロイス長男
3 ゲオルク公子 1999 孫・アロイス次男
4 ニコラウス公子 2000 孫・アロイス三男
5 マクシミリアン公子 1969 次男
6 アルフォンス公子 2001 孫・マクシミリアン長男
7 モーリッツ公子 2003 孫・故コンスタンティン長男
8 ベネディクト公子 2008 孫・故コンスタンティン次男
9 フィリップ公子 1946 ハンス=アダム2世の弟
10 アレクサンダー公子 1972 フィリップ長男
11 ヴェンツェル公子
12 ルドルフ公子

アロイス世子の第2子はマリー・カロリーネ公女(1996年生)で、新原則が適用されたら第5位のはずだが、遡及適用されないので、相変わらず継承権がない。

アロイス世子 Wikipediaより

なお、アロイスの妃のゾフィー・イン・バイエルン(1967-)は、ジャコバイト(名誉革命を否定する王党派)の支持するイングランド・スコットランド王位の継承予定者でもある。伯父のバイエルン王家家長フランツに子供がないため、伯父と父マックス・エマヌエルの後はゾフィーが名目的なイングランド・スコットランド女王ソフィアとなり、その後は長男のヨーゼフ・ヴェンツェルが後継者となる。

愛子内親王 宮内庁インスタグラムより


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