黒坂岳央です。
物価が上がると、「便乗値上げをやめろ!」と企業を名指しで批判する人が出てくる。「原材料価格は10%しか上がっていないのに、販売価格は20%上がった!」「仕入れ価格が下がったのに、値下げしていない!」こうした愚痴だ。
彼らはこうした情報を調べて「この会社は不誠実!」「不買しろ!」とSNSで憤るのである。だが厳しい事をいうと彼らは時代に取り残されると思っている。企業に憤る時間、働いたほうが遥かに合理的だ。

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値上げは悪ではない
そもそも、企業が「原材料以上に値上げする」ことの何が悪いのだろうか。冷静に考えれば、これは市場経済において当然の行動である。
企業の存在目的は社会奉仕ではない。利益を出し、従業員に報酬を払い、株主に還元し、事業を継続させることだ。
原材料が10%上がったタイミングは、需要と供給、競合の動向、為替、人件費上昇分の吸収など、あらゆる要素を織り込んで価格を再設定する絶好の機会でもある。「原材料費上昇分だけ機械的に転嫁しろ」という発想は物事の表面しか見ない単眼思考といえる。
値上げできる企業とは「顧客がその価格でも買い続けてくれる」だけの高い付加価値を提供できている企業だ。値上げに耐えられない企業は、その程度の価値しか提供していなかったということであり、市場から淘汰されるのが健全な姿である。
デフレマインドからの脱却
この問題の根底には、日本人に染み付いた悪しきデフレマインドがある。
我が国では長い間、「安いことはいいことだ」という考えが常識的になっていた。値下げ努力をする企業が称賛され、割高な会社は「あそこは守銭奴で誠実ではない」などと言われてきた。
だがどちらかというと、世界的なインフレトレンドに否定的な企業ほど不誠実という見方も出来る。なぜなら、値上げをしないということは、多くの場合は商品原価やそこで働く従業員の給与を削るからだ。
「商品を安くしろ」という消費者の要求は、「自分が買う商品を安くするために、企業やそこで働く人が高い報酬を得ることを諦めろ」と言っているのと同じである。
ひいては「安くしろ」と怒っている本人の給与も削られてもいいといっている。本人はその自覚がないまま「とにかく安く(ただし自分の給与は安くするな)」と言っている。これはズレた主張だ。
怒る時間、働いた方がいい
冷静に考えれば、不買運動やSNSでの糾弾や愚痴にもお金と時間がいる。
仮に1日30分、この手の「正義の発散」に費やしているとすれば、年間で180時間以上になる。これをスキルアップや副業、資格取得、あるいは単純に休息に充てたほうが、本人の生涯所得や幸福度への寄与ははるかに大きい。
企業を叩いても自分の給料は1円も上がらない。むしろ、値上げに怒る人は自分の労働市場での価値を高める努力をした方が合理的だ。1日30分、仕事を増やせばそれで商品の値上げを十分吸収できる。
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どれだけ怒っても上がった値段は戻らない。「待てば安くなる時代」は終わったと考えて、「待てば高くなる時代」に適応した働き方に合わせるべきだ。そうしなければ時代遅れとなって取り残されてしまうだろう。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)






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