
国債について、めちゃくちゃなことを言う人がいる。
「固定金利だから、金利が上がっても関係ない」
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いや、笑い事ではないのですよ。この2つ、どちらも結論が真逆になるタイプの間違いだから。前者を信じると「いくら発行しても平気」になり、後者を信じると「金利が上がっても財政は痛まない」になる。両方とも違う。
そして、あなたがそういう話を読んでいる間に、市場のほうが先に動いている。
長期金利の指標である新発10年国債の利回りが、一時2.985%をつけました(日本経済新聞、9月1日10時11分更新)。このあとあっさり大台を超えた。
共同通信は日本相互証券の情報として、3%を付けた1996年10月以来、約30年ぶりの水準だと報じています。前日の米長期金利上昇(米10年債が一時4.76%台)、日銀の利上げ加速観測、そして前日に報じられた2027年度予算の概算要求総額が過去最大の143兆円前後に膨らむ見通し。国債が売られる材料が、きれいに並んだ。
というわけで今日は、そういうことを言っている人たちに向けて、日本の国債とは何なのか、そしていま何が最大の問題なのかを説明しようと思う。
言いたいことは3つ。
- 国債は紙幣ではない。政府の債務であり、満期があり、利払いがあり、市場価格が動く。日銀が発行する紙幣・当座預金とは、発行主体からして別物。
- 「固定金利だから金利は上がらない」は、半分正しくて全部間違い。個別の銘柄のクーポンは確かに満期まで動かない。しかし国は毎年、満期が来た分をその時点の金利で借り換えている。普通国債の平均残存期間は9年5か月。10年ちょいで残高全体が新しい金利に入れ替わる。
- いま最大の問題は、その入れ替わりがまだ始まったばかりだということ。普通国債残高1,145兆円に対して、平均利率はまだ0.98%。ここが3%台に置き換わる過程が、これから10数年かけて進む。
数字の骨格
| 利払費 | |
|---|---|
| 2026年度(予算) | 13.0兆円(前年度当初比 +23.9%、過去最大) |
| 2029年度(財務省試算) | 21.6兆円 |
| 2040年度(本記事の試算) | 約44兆〜72兆円 |
2029年度までは財務省の公表値です。2040年の数字はわたしが組んだ機械的試算であって、政府の見通しではありません。前提を変えれば結果は大きく変わる。前提は全部この記事に書きました。
違います。全部違う。
| 国債 | 紙幣・日銀当座預金 | |
|---|---|---|
| 発行主体 | 政府 | 日本銀行 |
| 性質 | 政府の債務 | 中央銀行マネー |
| 満期 | ある | ない |
| 利払い | 原則ある | 紙幣にはない |
| 償還 | 必要 | 償還期限なし |
| 市場価格 | 変動する | 1万円札=1万円 |
政府が10兆円の国債を発行しても、それだけで世の中の紙幣が10兆円増えるわけではない。銀行や投資家が、すでにある預金などを使って買うからです。
もちろん両者は無関係ではありません。日銀が国債を買えば「国債 → 日銀当座預金」という形で中央銀行マネーが増える。だから関係は深い。だが同一物ではない。「同じ」と言った瞬間に、満期も利払いも価格変動も消えてしまう。消えていないから、いま金利上昇が問題になっている。
ついでに言っておくと、「自国通貨建てだからデフォルトしない」も、正しいけれど不十分。円建てである以上、「円がなくて払えない」タイプのデフォルトは起こりにくい。しかし極端な財政ファイナンスをやれば、名目上100万円を返せても、円安とインフレでその100万円の実質価値が大きく削られる。
デフォルトリスクが低い ≠ 財政リスクがない
自国通貨建て国債で問われるのは、支払い不能かどうかではなく、通貨価値と、他の予算を圧迫するかどうか。後者が今日の本題です。
これは、正しい前半に間違った後半をくっつけた、いちばんタチの悪いやつ。
固定利付国債の表面利率(クーポン)は発行時に決まり、その銘柄については満期まで変わりません。
今日ニュースになっている指標銘柄、10年利付国債(第383回)で見てみましょう。
- 表面利率:年2.7%
- 応募額:6兆1,448億円 → 募入決定額:1兆9,631億円
- 募入平均価格:99円77銭(募入平均利回り 2.729%)
- 発行日:令和8年7月3日/償還期限:令和18年6月20日
この銘柄は、令和18年6月20日の償還まで、ずっと年2.7%を払い続ける契約です。ここは動かない。ここまでは合っている。
クーポンが固定だからこそ、価格が動く。
額面100円で年3円もらえる債券があるとします。国債は株と同じで発行済みの物を売り買いするのです。
- 人気が出て 100円 → 105円 になれば、105円払って年3円しかもらえないので利回りは下がる
- 売られて 100円 → 95円 になれば、95円で買って年3円もらい満期に100円戻るので利回りは上がる
国債価格↑ → 利回り↓
国債価格↓ → 利回り↑
「長期金利が上昇」というニュースは、多くの場合「市場で国債が売られて価格が下がっている」という意味でもある。買った時より国債利率が下がれば得をするし上がれば損をします。
第383回で言えば、7月の入札では99円77銭で買われた。今日の利回り2.985%を価格に直すと、単価はおよそ97円60銭(わたしの概算)。額面100万円分を入札で買った投資家は、2か月で2万円強の含み損を抱えている計算になります。「固定金利だから関係ない」は、この人たちの前では言えない。
こっちが本丸。
国は、満期が来た国債を現金で返しているわけではありません。借換債を発行して、その時点の金利で借り直している。
どれくらいのペースか。財務省の数字があります。
- 普通国債残高:1,145兆円(令和8年度末見込み)
- 普通国債の平均残存期間:9年5か月(令和8年3月末)
平均残存期間が9年5か月ということは、毎年ざっくり残高の1割強が満期を迎え、その時点の市場金利で借り換えられるということ。10年ちょいで、残高全体が新しい金利に入れ替わる。
つまり「固定金利だから関係ない」の正しい版はこうなります。
明日いきなり利払費が跳ね上がることはない。
しかし一度上がった金利は、10年かけて確実に効いてくる。
安心材料と警告が、同じひとつの数字から出てくる。ここが国債のいやらしいところです。
ここも押さえておきたい。国が勝手に決めているわけではありません。
財務省が「10年国債を○兆円発行します」と告知し、証券会社が価格を入れて入札する。高い価格=低い利回りの注文から順に採用される。要はオークション。
第383回の入札では、応募6兆1,448億円に対して募入決定は1兆9,631億円。額面100円の債券に対する平均落札価格が99円77銭。100円を割っているのは、市場が「クーポン2.7%では足りない、2.729%出せ」と言ったということです。
国は、市場から金利を提示される側。決める側ではない。
超長期はもっと厳しい。
| 銘柄 | 入札日 | 表面利率 | 募入平均利回り |
|---|---|---|---|
| 20年債(第197回) | 令和8年8月20日 | 3.7% | 3.698% |
| 30年債(第91回) | 令和8年8月6日 | 4.0% | 3.937% |
30年はもう4%に手が届いている。
よく聞かれるので書いておきます。
年2回(半年ごと)。日付は銘柄ごとに固定で、償還日と同じ月日。財務省が公表している実際の銘柄で確認できます。
| 銘柄 | 利払日 | 償還期限 |
|---|---|---|
| 新窓販国債・10年(第382回) | 毎年3月20日および9月20日 | 令和18年3月20日 |
| 新窓販国債・2年(第485回) | 毎年6月1日および12月1日 | 令和10年6月1日 |
| 個人向け国債・変動10年(第197回) | 毎年3月15日および9月15日 | 令和18年9月15日 |
金額のイメージは単純です。
→ 半年ごとに約1万5,000円ずつ(税引前)
国債の利子には20.315%が課税されます。個人向け国債の資料に税引後利率が併記されているのは、このため。
注意点がふたつ。
- 初回の利子だけは半年分でないことがある。利払日は固定だが、発行日はその半年前ぴったりとは限らない。第383回は令和8年7月3日発行で利払日は12月20日と6月20日だから、初回は半年に満たない日数分になる。
- 個人向け国債の「変動10年」は利率自体が半年ごとに変わる。「基準金利×0.66」(下限0.05%)で決め直される。2026年8月募集分(9月15日発行)の初回適用利率は年1.87%。
普通の国債と個人向け国債は、まったく別物として考える必要があります。
普通の利付国債は市場で時価売却する。さっきの第383回の例のとおり、金利が上がっていれば売却損が出る。逆もある。
個人向け国債は市場で売らない。発行から原則1年経過後、国が額面で買い取る。元本割れしない。ただし代わりに、
直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685
が差し引かれます。0.79685を掛けているのは、利子受取時にすでに20.315%が源泉徴収されているぶんの調整(財務省の説明による)。
- 普通の国債 → 時価で売却(値上がり益も値下がり損もある)
- 個人向け国債 → 国による中途換金(元本は守られるが、直近1年分の利子を返す)
ここからが本題です。
答えは、1,145兆円の残高が、まだほとんど低金利時代のクーポンのままだということ。
普通国債の利率加重平均の推移を見てください。

出所:財務省「普通国債の利率加重平均の各年ごとの推移(昭和50年度末以降)」、日本経済新聞(2026年9月1日)
2022年度に底を打ち、上昇に転じてはいる。だがまだ0.98%。市場は今日、10年物に2.994%を要求してきた。その差、約2%が、これから10数年かけて残高に流し込まれていく。
流れをつなげるとこうなります。
最後の一行がすべて。
すでに数字に出ています。令和8年度予算の利子及割引料は13兆371億円。前年度当初の10兆5,230億円から23.9%増で過去最大。予算積算金利は令和7年度当初の2.0%から3.0%に引き上げられました。
そして財務省の「令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(令和8年2月)は、こう見込んでいる。
| 年度 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | 2029 |
|---|---|---|---|---|---|
| 利払費(兆円) | 10.5 | 13.0 | 15.5 | 18.5 | 21.6 |
| 国債費(兆円) | 28.2 | 31.3 | 34.7 | 38.0 | 41.3 |
[試算-1]経済成長3.0%ケース(10年金利:3.0%→3.2%→3.4%→3.6%)。4年で倍増します。同じ試算は、金利が前提より+2%上振れした場合、令和11年度の国債費が41.3兆円→48.9兆円(+7.6兆円)になるとも書いている。
公表されているのは、ここまで。
誰も出していないので、財務省の公表データだけを 材料に自分で組みました。
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 出発点の普通国債残高 | 1,145兆円(令和8年度末) | 財務省 |
| 出発点の利率加重平均 | 0.98%(令和8年3月末) | 財務省 |
| 平均残存期間 | 9年5か月 → 毎年 1/9.42 が借換え | 財務省 |
| 基礎的財政収支 | 2029年度の+4.7兆円で横置き | 財務省試算-1を延長 |
| 残高の増え方 | 各年度の財政収支赤字(=利払費-PB黒字)分だけ増加 | 財務省試算の定義に合わせた |
毎年、①残高の 1/9.42 が満期を迎えて新発金利で借り換わる、②財政赤字分が新発金利で新規発行される、③残りは従来のクーポンのまま。この3つを加重平均して翌年の平均利率を出し、残高に掛ける。
単純な「残高×加重平均利率」は一般会計の利払費より1割ほど小さく出る(割引料や借入金利子、予算上の保守的な積算が入らないため)。そこで係数1.10で補正しました。この補正を入れると、モデルは財務省試算-1の2027〜2029年度(15.5/18.5/21.6兆円)をほぼ再現する。だから延長にも一定の意味がある、という立て付けです。
- 試算A:新発金利が令和8年度の予算積算金利3.0%のまま横ばい
- 試算B:財務省試算-1に沿って2029年度3.6%、その後2037年度に4.0%へ、以降横ばい
- 試算C:2035年度に5.0%まで上昇、以降横ばい

出所:財務省「令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」ほか、および筆者試算
利払費(兆円)
| 年度 | 試算A (3.0%) | 試算B (4.0%へ) | 試算C (5.0%へ) |
|---|---|---|---|
| 2026 | 12.3 | 12.3 | 12.3 |
| 2029 | 20.9 | 21.8 | 21.8 |
| 2030 | 23.4 | 25.2 | 25.2 |
| 2035 | 34.2 | 41.3 | 45.9 |
| 2040 | 43.7 | 58.2 | 72.1 |
そのときの普通国債の平均利率
| 年度 | 試算A | 試算B | 試算C |
|---|---|---|---|
| 2026年3月末(実績) | 0.98% | 0.98% | 0.98% |
| 2030 | 1.92% | 2.11% | 2.14% |
| 2040 | 2.72% | 3.48% | 4.22% |
普通国債残高
| 年度 | 試算A | 試算B | 試算C |
|---|---|---|---|
| 2026 | 1,145兆円 | 1,145兆円 | 1,145兆円 |
| 2040 | 1,484兆円 | 1,554兆円 | 1,601兆円 |
① 金利がこれ以上1ミリも上がらなくても、利払費は3倍以上になる。
試算Aは新発金利3.0%横ばいの想定です。それでも2040年に43.7兆円。0.98%が3.0%に置き換わっていく効果だけで、ここまで増える。「これから上がるかどうか」以前に、すでに決まっている分がある。
② 2040年になっても、平均利率は新発金利に追いつかない。
試算Bで新発金利が4.0%でも、残高全体の平均は3.48%どまり。過去の超低金利債がまだ残っているからです。追いつかないのに、利払費は58兆円になる。
③ 増えた利払費が、次の借金を生む。
利払費が増える → 財政赤字が増える → 残高が増える → 利払費がさらに増える。試算Cで残高が1,601兆円まで膨らむのは、この循環のせい。金利上昇は単発のコスト増ではなく、自己増殖する。
④ 他の予算との比較。
令和8年度の社会保障関係費は39.1兆円。試算Bの2040年の利払費58.2兆円は、これを大きく上回る。名目3%成長で税収が2029年度の95.5兆円から2040年度に132兆円まで伸びたと仮定しても、利払費は税収の44%を食う(Aで33%、Cで55%)。令和8年度は13.0兆円÷83.7兆円で16%だから、負担は2.7倍前後になります。
正直に書いておきます。
- 政府の見通しではない。財務省の公表値は2029年度まで。それ以降はわたしの機械的計算です。
- 基礎的財政収支を+4.7兆円で横置きした。高齢化で社会保障費が伸びればPBは悪化し、数字はもっと悪くなる。増税や歳出改革が進めば改善する。名目成長でPBが自然に改善する効果も入れていない。ここが最も振れる。
- 発行年限構成が現状のままと仮定した。2026年度の国債発行計画では超長期債の発行額が減らされている。短期化が進めば、金利上昇はもっと速く利払費に伝わる。
- 日銀の国債保有と国庫納付金を織り込んでいない。日銀保有分の利子は国庫納付金として一部が国に戻るが、日銀の逆ざやが拡大すれば納付金は減る。国債利子は全部日銀から国庫に戻るとか完全なるデマです。
- 補正係数1.10は2027〜2029年度でのフィッティング。遠い将来もこの比率が保たれる保証はない。
それでも桁の感覚としては意味がある。2040年の利払費は「20兆円台」ではなく「40兆〜70兆円台」だ、というのがこの計算の答えです。
ここまでは利払費だけの話でした。しかし2040年の日本の家計を考えるなら、もっと大きいものが同時に効いてくる。社会保障です。
政府が2040年までの見通しを出しています。内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省の連名による「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(平成30年5月21日、経済財政諮問会議提出)です。
社会保障給付費(年金・医療・介護・子育てなどの給付の合計)は、計画ベース・経済ベースラインケースでこう伸びます。
| 2018年度 | 2025年度 | 2040年度 | |
|---|---|---|---|
| 合計 | 121.3兆円 | 140.2〜140.6兆円 | 188.2〜190.0兆円 |
| 年金 | 56.7兆円 | 59.9兆円 | 73.2兆円 |
| 医療 | 39.2兆円 | 47.4〜47.8兆円 | 66.7〜68.5兆円 |
| 介護 | 10.7兆円 | 15.3兆円 | 25.8兆円 |
| 子ども・子育て | 7.9兆円 | 10.0兆円 | 13.1兆円 |
| その他 | 6.7兆円 | 7.7兆円 | 9.4兆円 |
2025年度の約140兆円から、2040年度は約190兆円。15年で約50兆円増える。介護にいたっては2018年度の2.4倍です。
給付費のうち、保険料で賄う分と税(公費)で賄う分は同じ資料に分けて示されています。
| 2018年度 | 2025年度 | 2040年度 | |
|---|---|---|---|
| 保険料負担 | 70.2兆円 | 81.2〜81.4兆円 | 106.1〜107.0兆円 |
| 公費負担(税) | 46.9兆円 | 57.8〜58.0兆円 | 79.5〜80.3兆円 |
税で払う分は2025年度の約58兆円から2040年度に約80兆円へ、22兆円ほど増える。これが、さっきの利払費と同じ財布から出ていきます。
社会保障の公費負担と、国債の利払費。この2つを並べてみます。

出所:内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」、財務省、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」、および筆者試算
社会保障の見通しは2018年に作られたもので、当時のベースライン(名目成長率1%台、物価上昇率1%台)が前提です。いまの物価はそれより高い。一方、利払費のほうは私が名目3%成長を前提に計算しています。前提が違うので、この2つを単純に足すのは厳密ではありません。
ただし、ズレの向きははっきりしています。物価と賃金が2018年の想定より高く推移すれば、社会保障給付も名目では膨らむ。つまり80兆円という公費負担はむしろ控えめな数字です。合計138兆円は、大きめに出した数字ではありません。
2025年度の68.4兆円が、2040年度に138.1兆円。15年で約2倍、増加額は約70兆円です。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位・死亡中位)によれば、2025年から2040年にかけて日本の人口はこう動きます。
| 2025年 | 2040年 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 総人口 | 1億2,326万人 | 1億1,284万人 | ▲1,042万人 |
| 生産年齢人口(15〜64歳) | 7,310万人 | 6,213万人 | ▲1,097万人 |
| 65歳以上 | 3,653万人 | 3,929万人 | +276万人 |
| 高齢化率 | 29.6% | 34.8% | +5.2pt |
同推計の老年人口指数は2025年の50.0から2040年には63.2へ上昇します。現役世代2.0人で高齢者1人を支えていたのが、1.6人で1人を支える計算になる。
割り算をすると、生産年齢人口ひとりあたりの「税で払う社会保障+利払費」は、2025年度の約94万円から2040年度には約222万円。2.4倍です。
ここから先は数字そのものではなく、その数字が意味することです。私の読みとして書きます。
① 国の予算は「配る予算」から「払う予算」に変わる。
社会保障の公費80兆円と利払費58兆円は、どちらも政策判断で削れないカネです。年金は法律で決まっており、利払いは契約です。ここが138兆円を占めるということは、教育・科学技術・公共投資・防衛といった「何かをするための予算」が構造的に絞られるということ。積極投資どころではない。
② 増税か、給付削減か、インフレか。逃げ道は基本的にこの3つしかない。
借金でつなぐ、という4つ目の選択肢は、利払費を増やして翌年の穴を広げるだけです。政治的にいちばん通りやすいのは3番目、つまり名目で払い続けて実質価値を薄める方法でしょう。だからこそ、円の価値と物価がこの問題の出口になりやすい。
③ 金利は「日本経済が正常化した証」であると同時に、財政の時限装置でもある。
デフレを脱してインフレと賃上げが回りはじめたこと自体は悪いことではありません。ただしその副作用として、1,145兆円の借金の値札が書き換わる。良いニュースと悪いニュースが同じ現象から出てくる、というのが今の日本の厄介なところです。
具体的に書きます。
④ 社会保険料は上がる。
さきほどの政府見通しには、保険料の見込みまで載っています(計画ベース・ベースラインケース、2018年度賃金換算)。
| 2018年度 | 2025年度 | 2040年度 | |
|---|---|---|---|
| 協会けんぽ 保険料率 | 10.0% | 10.5〜10.6% | 11.5〜11.8% |
| 健保組合 保険料率 | 9.2% | 9.7〜9.8% | 10.9〜11.2% |
| 介護保険 第1号保険料(月額) | 5,900円 | 7,200円 | 9,200円 |
| 介護保険 第2号保険料率(協会けんぽ) | 1.57% | 2.0% | 2.6% |
| 後期高齢者 保険料(月額) | 5,800円 | 6,300〜6,400円 | 8,000〜8,200円 |
手取りは、額面が増えても保険料で削られる。介護保険料は月9,200円、2018年度の1.6倍です。しかもこれは2018年度の賃金水準に換算した数字なので、実際の請求額はもっと大きくなります。
⑤ 住宅ローンの景色が完全に変わる。
長期金利は住宅ローンの固定金利の基準です。3,000万円を35年・元利均等で借りた場合、金利によって返済額はこうなります(筆者計算)。
| 借入金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 0.5% | 77,876円 | 3,271万円 |
| 1.5% | 91,855円 | 3,858万円 |
| 2.5% | 107,249円 | 4,504万円 |
| 3.5% | 123,987円 | 5,207万円 |
| 4.5% | 141,977円 | 5,963万円 |
金利1.5%で借りた人と3.5%で借りた人では、月の返済が3万2,000円、総額で1,349万円違う。同じ家、同じ値段でです。
変動金利で借りている人はさらに直接的です。日銀の利上げ観測が今日の金利上昇の材料のひとつになっている、という報道の意味は、要するにそういうことです。
⑥ 預金金利は上がる。ただし勝てるかは別問題。
金利上昇は借り手には打撃ですが、預金者には久しぶりの朗報です。長らくゼロに張り付いていた預金金利も動く。ただし物価が同時に上がっていれば、実質で増えているかは別の話になります。金利が上がったから得、とは単純にいえない。
⑦ 現役世代が減り、医療・介護に人が吸い込まれる。
同じ政府見通しでは、医療福祉分野の就業者数は2018年度の823万人から2040年度には1,065万人へ増えます。就業者全体に占める割合は12.5%から18.8%へ。
2040年には、働いている人のおよそ5人に1人が医療・福祉で働いている。
一方で就業者数の全体は減ります。同見通しでは2018年度の6,580万人から2040年度に5,654万人。他の産業から人が抜けていくということです。あなたの業界の人手不足は、2040年に向けてもっと厳しくなります。
⑧ 公共サービスは薄くなる。
予算が固定費に食われ、現役世代が減り、人手が医療・介護に回る。この3つが同時に起きると、地方の公共交通、学校、インフラの維持といった「あって当たり前だったもの」から順に薄くなります。国が払えないものは、住んでいる自治体が払えるかどうかの問題に落ちてくる。
ここに書いた⑧までのうち、①〜③と⑧は私の読みです。数字ではありません。数字として政府や統計が出しているのは、社会保障給付費、公費負担、保険料率、就業者数、人口です。住宅ローンの表は単なる金利計算です。どこまでが数字でどこからが解釈かは、区別して読んでください。
国債の仕組み自体は難しくありません。発行時にクーポンが固定され、その後は市場で価格が動き、価格の裏返しとして利回りが動く。利子は年2回、決まった日に払われる。
難しいのは、その仕組みが1,145兆円という残高と噛み合ったときに何が起きるかのほう。
- 「国債は紙幣と同じ」→ 違う。満期があり、利払いがあり、価格が動く。動いているから今日ニュースになっている。
- 「固定金利だから関係ない」→ 個別銘柄はそう。だが国は毎年、残高の1割強をその時の金利で借り換えている。
平均残存期間9年5か月。この数字が、日本にまだ時間があることと、その時間が有限であることを、同時に示している。
2026年3月末の加重平均0.98%は、日本がまだ低金利時代の遺産の上に立っていることの証明です。今日の市場は2.985%を提示してきた。
この差は埋まります。例外なく、時間どおりに。国が「返さない」と言い出さないかぎり、借換えは自動的に進む。あなたが賛成しようが反対しようが関係ない。
埋まりきったとき、利払費は最低でも40兆円を超える。いまの社会保障関係費39.1兆円を追い抜く水準です。これは予測ではなく、1,145兆円という残高と9年5か月という平均残存期間から出てくる算数にすぎません。
しかも、金利がこれ以上1ミリも上がらなくてもそうなる。すでに決まっている分だけで、そこまで行きます。
だから「金利が上がったらどうする」では、もう遅い。問うべきは、増えた利払費の分、何を削るのか。社会保障か、防衛か、教育か。そして決めるのは、たぶんあなたではない。
「国債は紙幣と同じ」と言っている人たちは、そのときもまだ同じことを言っているんでしょうかね。ww

高市首相へのAI家庭教師をしたという安野代表 首相官邸HPより
財務省(一次資料)
- 10年利付国債(第383回)の入札結果(令和8年7月2日入札)
- 20年利付国債(第197回)の入札結果(令和8年8月20日入札)
- 30年利付国債(第91回)の入札結果(令和8年8月6日入札)
- 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債
- 個人向け国債「変動10年」第197回債 発行条件
- 個人向け国債窓口トップページ(中途換金調整額)
- 令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算(令和8年2月)
- 令和8年度財務省所管予算概算(国債費・利子及割引料)
- 財政に関する資料(普通国債残高の累増)
- 普通国債の利率加重平均の各年ごとの推移(昭和50年度末以降)
- 普通国債残高の残存期間別内訳(令和8年3月末現在)
報道
- 日本経済新聞「長期金利2.985%、30年ぶり高さ 米金利上昇・日銀利上げ観測」2026年9月1日
- 共同通信「長期金利上昇、一時2.985%」2026年9月1日10:20配信
筆者による計算
- 第383回の現在単価(約97円60銭)/2040年の利払費試算。前提は本文記載のとおり。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年9月2日の記事より転載させていただきました。







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