世界最大の時価総額を誇るNVIDIAを、英Economist誌が特集している。ドットコム・バブルの最盛期にそれを否定する特集を組んで話題を呼んだ同誌にしては珍しい楽観的な記事である。

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NVIDIAの時価総額は5.4兆ドル。2027年には純利益3700億ドル、2029年には売上高1兆ドルに達する可能性があるという。AIブームの中心にいるのはOpenAIのサム・アルトマンではなく、GPUを供給するジェンスン・フアンである。
実際、NVIDIAの成長速度は異常なほどだ。2026年8月発表の四半期決算では売上高962億ドルと前年同期比106%増、データセンター部門は890億ドルと117%増。粗利益率は75%に達している。問題は、この成長がいつまで続くのかである。
「AIの中央銀行」になったNVIDIA
NVIDIAは、もはや単にGPUを売る会社ではない。データセンター事業者やAI企業に出資し、資金を提供し、保証まで付け、その資金で自社のGPUを買ってもらう。こうした取引を含むNVIDIAのコミットメントは巨大化しており、「AIの銀行」「AIの中央銀行」とまで呼ばれている。
ここには当然、循環取引ではないかという疑問が出てくる。NVIDIAがAI企業に金を出す。そのAI企業がNVIDIAのGPUを買う。NVIDIAの売上と利益が増え、その利益をまたAI企業に投資する。
実際、NVIDIAは一部のAIクラウド企業を支援する仕組みで、売れ残った計算能力の買い戻しを保証するような契約まで導入していたと報じられている。どこかで見た風景である。
2000年にも「世界で最も価値のある会社」があった
2000年3月、Cisco SystemsはMicrosoftを抜き、時価総額5554億ドルで世界最大の企業になった。インターネットの通信量は爆発的に増える。だからルーターや通信設備はいくら作っても足りない――。
理屈は間違っていなかった。実際、その後インターネットは世界を変えた。ところがシスコの株価はバブル崩壊で急落した。会社は生き残ったが、株主にとって「インターネット革命が正しかった」ことと「2000年のシスコ株を買ったことが正しかった」ことは同じではなかった。
さらに悲惨だった企業もある。当時シスコと並ぶ通信機器大手だったカナダのノーテル・ネットワークスは、2009年にカナダで債権者保護を申請し、米国子会社もChapter 11を申請した。市場から資金を調達できなくなり、40億ドルを超える無担保債務や年金債務を抱え、最終的には事業を切り売りすることになった。
AT&Tからスピンオフしたルーセント・テクノロジーズも、倒産こそしなかったが、2006年にAlcatelと統合してAlcatel-Lucentとなり、2016年にはNokiaの傘下に入った。独立企業としてのルーセントは消えたのだ。
AI革命が本物でもNVIDIAが勝つとは限らない
ここに現在のAIブームを考える重要な教訓がある。インターネット革命はインチキではなかった。それでもノーテルは消え、ルーセントも消え、シスコさえ株主に巨大な損失を与えた。つまり、
「新しい技術が世界を変える」ことと、「その技術の覇者とみられている企業が高収益を維持する」ことはまったく別の話なのだ。現在のNVIDIAにも同じ問題がある。
AIの利用量が今後100倍になったとしても、GPU需要が100倍になるとは限らない。モデルの効率化も進む。Google、Amazon、Microsoft、MetaなどNVIDIAの大口顧客は、自社製AIチップへの投資を拡大している。BroadcomなどもカスタムAIチップ市場を急速に伸ばしている。
NVIDIAが現在享受している75%という驚異的な粗利益率が、永遠に維持できる保証はない。むしろ、これほど儲かる市場には必ず競争相手が殺到する。それが資本主義である。
バブルで最後に勝利するのは消費者
Economistの楽観論にも根拠はある。NVIDIAはドットコムバブル時代の通信設備会社よりはるかに強いキャッシュマシンだ。2026年度の売上高は2159億ドル、純利益は1201億ドルだった。
つまり赤字企業に借金して商品を買わせているだけではない。NVIDIA自身が巨額の現金を稼ぎ、それを次のAIインフラに再投資している。仮に賭けに失敗しても、まず損をするのはNVIDIAの株主である。
これは政府による産業政策とは違う。ジェンスン・フアンが自社の金を賭け、株主もそれを承知でNVIDIA株を買っている。成功すれば莫大な利益を得るし、失敗すれば損をする。資本主義とは本来そういうものだ。
しかし投資家にとって重要なのは、AI革命が成功するかどうかだけではない。その革命から生まれる利益のうち、NVIDIAがどこまで取り続けられるかである。2000年、インターネット革命を疑った人間が間違っていたわけではない。インターネット革命を信じてノーテルやルーセントを買った人も間違ったのである。
25年後、NVIDIAは「AI時代のシスコ」として生き残っているのだろうか。それともノーテルやルーセントのように忘れられるのだろうか。
一つだけ間違いないことがある。NVIDIAやOpenAIの株主が大きな損害をこうむっても、シスコのルータやノーテルの光ファイバーが残ったように、AIのインフラは残る。バブルで最後に勝利するのは消費者なのだ。







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