沖縄県知事選のさなか、現職の玉城デニー知事の公式SNSから看過できない投稿が発信された。
9月1日、玉城氏の公式Xに、自民党本部が知事選への立候補を取りやめた下地幹郎氏と「裏取引をした」と断定する投稿が掲載された。「令和の琉球処分」「沖縄の自治を軽んじる自民党本部」といった強い表現も並んでいた。その後、投稿は削除された。
玉城氏は翌2日、SNS担当者が投稿したもので「手違いだった」と陳謝。「不確かな情報」を積極的に拡散する意図はなかったと説明した。
しかし問題は、投稿するアカウントを間違えたかどうかではない。
「誤投稿」と「誤情報」はまったく違う
玉城デニー知事に対する相次いだ批判もここに集中している。
仮にスタッフが投稿先を間違えたのだとしても、「自民党本部と下地氏が裏取引をした」という文章は、誰かが作成したものだ。しかも、その根拠は示されていない。自民党本部と下地氏はいずれも裏取引を否定している。
それなら玉城陣営が説明すべきなのは「なぜ本人のアカウントから出たのか」だけではなく、「裏取引をしたと断定した根拠は何なのか」である。
さらに同趣旨の内容は公式LINEにも配信されていた。そうなると、単にXでアカウントを切り替え損ねたという話だけでは説明しにくい。
玉城氏の支援組織は、政策協定が結ばれた背景が表に出てこないことを「裏取引」と表現したと説明している。しかし、通常「裏取引」という言葉から、有権者が単に「交渉過程が公開されていない」という意味だけを受け取るとは考えにくい。
実は選対本部長が街頭演説で発言していた
さらに問題なのは、この「裏取引」という表現が、スタッフの思いつきではなかったことだ。
玉城氏陣営の選対本部長を務める高良沙哉参院議員が、告示日の応援演説で実際に「裏取引」があったと主張していた。問題のSNS投稿は、その演説内容をもとにしたものだったという。
だとすれば、これはSNS担当者一人の操作ミスとして処理できる問題ではない。
玉城デニー陣営の内部で、根拠を確認しないまま「裏取引」という強い政治的メッセージが共有されていた可能性こそ問われるべきだろう。
「誤情報に気をつけて」と言っていたのは誰か
皮肉なのは、玉城デニー知事自身がこれまで選挙をめぐるSNS上のフェイクに対し繰り返し批判してきたことだ。
今年5月には、辺野古沖の転覆事故をめぐるSNS情報について「間違った情報で判断されてはならない」と訴えていた。
8月にも、自身を支える勢力をめぐる自民党県議の発言について「事実無根」と反論し、「公職にある人が発言で誤解を広げることがないようにしてほしい」と批判していた。
もちろん、その言葉は、そのまま今回の玉城陣営にも当てはまる。
相手側の不正確な発信には「誤解を広げるな」と厳しく注文を付けながら、自分の公式アカウントから根拠の示されない「裏取引」という断定が出れば「手違いでした」で終わる。それでは説得力を欠く。
そして、沖縄タイムスのような地元メディアは、玉城デニー知事への批判は妨害行為と断定するが、相手陣営に対する妨害行為にはだんまりである。
選挙だからこそ「手違い」では済まされない
もちろん、自民党本部が県連を通さず下地氏と政策協定を結び、下地氏が告示直前に出馬を取りやめた経緯について、政治的に批判したり疑問を呈したりすること自体は自由である。実際、その経緯は地元でも大きな議論になっている。
しかし「不透明ではないか」と問うことと、「裏取引をした」と事実として断定することは違う。まして現在は知事選の真っただ中である。現職知事の公式SNSは、匿名アカウントとは社会的な重みがまったく違う。
必要なのは「投稿先を間違えました」という説明ではない。「裏取引」という断定に根拠があるのか。ないのであれば、その表現を明確に撤回し、下地氏と有権者に説明することだ。
玉城氏自身が言ったように、選挙は「間違った情報で判断されてはならない」のである。その原則は、政治的な敵だけではなく、自分自身にも適用されなければならない。













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