「まんじゅうや」と「だんごさん」は当選無効:もう自書式投票ってやめたら?

選挙で「まんじゅうや」と書いたら、その1票は誰に投じたことになるのか。そんな冗談みたいな問題で、市長の当落がひっくり返った。

共同通信

2025年11月の茨城県神栖市長選では、新人の木内敏之氏と現職の石田進氏が、そろって1万6724票という完全な同数になった。公職選挙法の規定によりくじ引きが行われ、木内氏が当選した。ところが、その後の審査で木内氏の票として数えられていたまんじゅうやだんごさんの2票が問題になった。

「まんじゅうや」は木内氏なのか

木内氏の実家は老舗の和菓子店で、本人も地元で「まんじゅうや」と呼ばれてきたという。しかし茨城県選挙管理委員会は2026年4月、この2票を無効と判断した。その結果、木内氏の得票が石田氏を下回り、木内氏の当選を無効とする裁決を出した。

木内氏はこれを不服として東京高裁に提訴したが、9月3日、高裁も県選管の判断を支持した。「まんじゅうや」「だんごさん」は普通名詞であり、神栖市のどこでも木内氏を指す通称として定着しているとは認められない、という判断だった。市内にはまんじゅうや団子を扱う和菓子店が少なくとも9軒あることも指摘された。

法律論としては理解できるが、そもそも有権者が候補者名を手書きしなければならない制度を続けているから、こんな裁判が必要になるのではないか。

なぜ候補者名を手で書かせるのか

日本の国政選挙では、投票用紙に候補者名を有権者自身が書く自書式が採用されているが、これは今や世界でも日本だけの制度だ。

公職選挙法67条も、同法68条に反しない限り、「選挙人の意思が明白」であれば有効にするよう求めている。つまり開票所では、人間が筆跡と文字を見ながら「これは誰に入れたつもりなのだろう」と推理する作業が発生する。

今回の神栖市長選は、その不合理が極端な形で現れただけだ。たった2票について、選管が審査し、県選管が裁決し、ついには東京高裁まで判断することになった。民主主義の制度として、あまりに非効率ではないか。

名前を印刷して○をつければいい

解決策は難しくない。候補者名をあらかじめ投票用紙に印刷し、投票したい候補者の欄に○をつければいい。公職選挙法にもすでに「記号式投票」という制度があり、地方選挙では自治体が条例を定めれば採用できる。

知事選5自治体、市区長選100自治体、町村長選111自治体が採用していた。政府自身も、記号式には「投票の効力の判断が容易」「選挙争訟が減少する」「投票の秘密を確保しやすい」といった利点があると認めている。

実際、1994年の公選法改正では衆議院選挙にも記号式が導入される予定だった。ところが翌年、参院選との方式の違いや候補者名入り投票用紙の印刷などを理由に、自書式へ戻された。これは名前を知られている現職を有利にするためだった。

「字を書くこと」を民主主義と取り違えるな

世の中がデジタル化された時代に、手書きで投票するのは非効率であるばかりでなく、今回のような混乱をまねく。そのメリットは何もない。

高齢者や障害のある人、漢字を書くのが苦手な人にまで候補者名を自書させ、誤記すれば無効票になる。「まんじゅうや」が木内氏なのかどうかを裁判で議論する必要など、本来はないのだ。候補者名の横に○をつければ、この騒動は最初から起きなかった。

デジタル化だDXだと叫びながら、投票所では紙に鉛筆で候補者名を書かせ、その文字の解釈をめぐって裁判をしている。「まんじゅうや」騒動を笑っている場合ではない。これを機に、日本も自書式投票をやめて記号式に変えてはどうだろうか。

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