大和ハウス「戸建ての部門」23道県撤退が示す「地方では家が安くならない」未来

大和ハウス工業は、新築一戸建て住宅事業を大幅に再編し、2027年4月から北海道から鹿児島までの23道県で事業から撤退する。東京や大阪など需要が見込める都市圏に経営資源を集中し、収益性を高める狙いだという。

今回の再編で注目されるのは、地方で住宅需要が落ち込む中、大手住宅メーカーが値下げによる販売拡大ではなく、供給そのものを縮小する判断に踏み切った点である。

どう見ても庶民が買えるグレードではない住宅の大和ハウスCM 同社動画チャンネルより

「売れなければ安くなる」が起きない

一般に需要が減れば価格も下落すると考えられがちだ。しかし住宅の場合、土地価格が下がっても、木材や鉄鋼、住宅設備、人件費などの建築コストは全国的に上昇している。

地方では土地が安くても、建物価格まで大幅に下げることは難しい。このため、需要減少がそのまま住宅価格の低下につながるとは限らない。

むしろ、需要減少によって採算が悪化すれば、住宅メーカーは値下げを進めるのではなく、低採算地域から撤退する可能性が高まる。

「新築住宅が売れなくなれば住宅価格も下がる」という従来の見方とは異なり、需要減少が供給縮小につながる構図が鮮明になってきた。

大和ハウスは「安い住宅」を追わない

大和ハウスは、注文住宅についても高価格帯へのシフトを進めている。自由設計型の注文住宅では、原則として5000万円以上の商品に重点を置く方針とされる。

資材費や人件費が上昇する中、低価格帯で販売戸数を追うよりも、高付加価値住宅に集中した方が収益性を確保しやすい。

業界最大手の大和ハウスがこうした方向に動く意味は小さくない。他の大手住宅メーカーも同様にコスト上昇と人口減少に直面しており、採算の取れない地域や価格帯から撤退する動きが広がる可能性がある。

地方は「人口減→供給撤退→人口減」のループへ

問題は、住宅メーカーの撤退が地方の人口減少をさらに加速させる可能性があることだ。

大手メーカーが撤退すれば、地方では地場工務店が住宅供給の中心になる。しかし、職人不足や事業者の高齢化が進めば、地域によっては住宅を建てる選択肢そのものが減少する。

その結果、若年層や子育て世帯にとって住宅取得のハードルが上がり、東京や大阪など大都市圏への人口流出がさらに進む可能性がある。

需要減少、供給撤退、人口流出、さらなる需要減少という悪循環が形成されれば、地方の住宅市場は一段と縮小する。

大和ハウスは「新時代のトヨタ」になるか

一方、大和ハウスは国内市場の縮小を海外展開で補う戦略を進めている。米国を中心とした海外住宅事業はすでに大きな収益源となっているという。

国内では都市部と高価格帯に集中し、海外では成長市場を取り込む。人口減少が続く日本で無理に販売戸数を増やすより、海外市場に成長余地を求める方が合理的との判断だ。

日本の住宅メーカーが培ってきた設計、施工管理、品質管理などのノウハウを海外で展開できれば、住宅産業が自動車産業のような輸出型・海外展開型産業へ変わる可能性もある。

今回の23道県撤退は、単なる地方支店の整理ではない。人口減少時代の住宅市場が「価格下落」ではなく「供給撤退」によって調整され始めたことを示す象徴的な動きといえそうだ。

大和ハウスHPより

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