ドイツの16ある連邦州の一つ、東部に位置するザクセン=アンハルト州で6日、州議会選挙(有権者数約170万人、定数83議席)が実施され、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が得票率約44.4%(暫定)で第1党を確実したが、選挙前に掲げてきた目標の絶対過半数には1議席足りなかった。AfDの筆頭候補者ゥルリヒ・ジークムント氏(35)は「我々は歴史を書いた」と表明、AfDにとって最高の選挙結果を喜んだ。一方、スヴェン・シュルツェ州首相が率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)は得票率約18.2%と惨敗、前回比(2021年)で得票率を半減させた。ドイツ公共放送ZDFによると、投票率は約78%と旧東独州での歴代最高を記録した。有権者の州議会選への関心の高さを示したものと受け取られている。

AfDの筆頭候補者ジークムント氏とアリス・ワイデル党首 ジークムント氏SNSより
選挙管理委員会の暫定結果によると、AfD44.4%。CDU18.2%、左翼党9.2%、社会民主党8.8%、緑の党8.7%だ。議席数ではAfD41議席、CDU17議席、左翼党9議席。社会民主党と緑の党は8議席だ。AfDは選挙戦では「45%プラスα」を掲げ、絶対過半数42議席を目指してきた。
ジークムント氏は「全ての政党と連立交渉する用意がある。AfD主導の新政権は全ての国民に奉仕する政権だ」と強調し、国民に結束を呼び掛けた。
最終的結果を見ないと断言できないが、他の政党がAfDとの連立を拒否している現時点では、①AfD単独政権の発足、②CDU、SPD、左翼党、緑の党の4党連立政権の2通りが考えられる。新政権の発足まで時間がかかるものと見られる。
ちなみに、BSWが州議会に議席を確保した場合、AfDによる少数与党政権が誕生する可能性が取り沙汰されている。BSWの創設者ザーラ・ワーゲンクネヒト氏は、州首相選出の決選投票で棄権するといった形で、AfD候補が州首相に選出されるのを同党が支援する可能性を示唆している。いずれにしても、同州の情報機関から「確実な右翼過激派」と認定されているAfDが州首相の座を獲得すれば、単に州レベルだけではなく、連邦レベルの政治にも大きな影響を与えることは必至だ。
ジークムント氏(Ulrich Siegmund)は、1990年10月25日生まれ、35歳、旧東ドイツのハーフェルベルク出身。ザクセン・アンハルト州議会議員(2016年~)、同州議会AfD会派共同委員長(2022年8月~)を務めている。2016年にザクセン・アンハルト州議会選挙に初当選。2022年からは共同委員長(院内総務)を務め、州議会における実質的な野党トップ(野党党首)として活動してきた。 若きリーダーとしてSNS戦略に長けており、TikTokをはじめとするSNSのフォロワー数は70万人を超え、特に若い世代や現状への不満を抱く層から熱狂的な支持を集めている。
独週刊誌シュピーゲル誌(8月14日号)から「ドイツで最も危険な男」と烙印されたジークムント氏は移民の「再移住」(レミグレーション)計画への関与や、外国人に対する排外的な発言により、民主主義体制の脅威として監視対象となっている。2024年初頭、ポツダムで開催された右翼過激派の秘密会合に参加していたことが報じられ、ドイツ全土で物議を醸した。さらに、司法の独立性への攻撃や、歴史教育におけるナチス時代の相対化といった政策を推し進める一方、TikTok等のSNSで温和なイメージを演出してきた。
選挙戦では、旧東ドイツ製の原付きバイクを駆って各地を巡るなど、親しみやすさと愛国心・懐古主義をアピールする独自のスタイルで支持を広げた。既成政治への不満を背景に、「ドイツ初のAfD所属の州首相」の座を狙ってきた。
選挙期間中、AfDの主張は過激化してきた。もし政権を担うことになれば、強制送還の断行(デポーテーション・オフェンシブ)」、州間放送協定の破棄、「出産祝い金」の支給、公立学校でのレインボーフラッグ掲揚の禁止、そして民主主義推進に関わる団体への資金提供打ち切りなどを実施する計画を明らかにしている。また、ジークムント氏はシュルツェ氏との討論の中で、州の国内情報機関を再編する計画を発表した。また、メルツ政権のウクライナ政策に反対し、対ロシア制裁の解除や独露貿易関係の復活を主張している。
なお、ドイツ民間放送ニュース専門局ntvの世論調査によると、メルツ首相が率いる与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)は支持率約21%でAfDの28%に大きく差を付けられている。CDU/CSUと連立を組む社会民主党(SPD)は13%だから、両党の支持率は34%に過ぎず、メルツ政権は完全な少数派政権だ。今月20日に実施予定のベルリン市(特別州)と北東部メクレンブルク・フォアポンメルン州の議会選でもメルツCDUは苦戦を強いられている。メルツ首相の退陣を求める声がCDU内からも聞かれ出した。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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