ドイツ州議会選挙でAfDが第1党に:欧州に「極右勢力」は拡大するか

ドイツ東部ザクセン=アンハルト州で9月6日に行われた州議会選挙で、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第1党となった。AfDの得票率は約44%に達し、2021年の20.8%から倍増した。

AfDのジークムント州首相候補(中央)とワイデル共同党首(左)、クルパラ共同党首

一方、メルツ首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は20%にも届かず、大敗した。AfDは単独過半数にはわずかに届かなかったものの、ドイツの州議会選挙で右派政党がこれほど圧倒的な第1党となったことは、戦後ドイツ政治の大きな転換点である。(reuters.com)

「防火壁」はAfDの延焼を止められなかった

ドイツの主要政党はこれまで、AfDとは連立しないという防火壁(Brandmauer)を設けてきた。ドイツの国内情報機関はAfDをナチスにつながる右翼過激派として位置づけ、CDUや社会民主党(SPD)などは、AfDとの協力そのものをタブー視している。

今回もAfDが過半数を取れなかったため、州政府を掌握するとは限らないが、問題は防火壁がAfDへの支持を減らすどころか、むしろ支持率が上昇していることだ。

旧東ドイツ地域のザクセン=アンハルト州では、有権者の連邦政府への不満が極めて強い。西部との経済格差、人口減少、雇用不安が残り、移民政策やウクライナ支援への反発も強い。ロシアとの関係改善を求める住民も西部より多い。(Reuters)

欧州では右派が「例外」ではなくなった

同じ現象はドイツだけではない。フランスではマリーヌ・ルペン率いる国民連合(RN)が2027年大統領選の世論調査で首位を走っている。8月の調査でもルペンは第1回投票で35~38%程度を獲得すると予測され、決選投票でも有力候補となっている。(Yahoo! News)

イタリアではジョルジャ・メローニ首相の右派政権がすでに約4年続き、2026年9月には戦後イタリアで最長の政権となった。かつて「極右政権の誕生」と警戒されたメローニ政権だが、現在では欧州政治の主要プレイヤーの一つになっている。

2024年の欧州議会選挙でも、欧州保守改革(ECR)、欧州の愛国者(PfE)、主権国家の欧州(ESN)の3会派を合わせれば右派が187議席となり、全720議席の約26%を占めた。これらをすべて一括して「極右」と呼ぶことには無理があるが、欧州統合に批判的な勢力が拡大している。(EU)

移民問題を無視した代償

右派勢力の拡大には共通するテーマは、移民問題である。欧州では長年、移民政策への懸念を口にすること自体が「排外主義」と批判されたが、大量の移民・難民を受け入れれば、住宅、学校、医療、治安、社会保障に問題が生じるのは当然である。

こうした不満を既成政党が十分に吸収できなかったため、AfDやRNのようなナショナリズムを看板とする政党がその受け皿となった。彼らを「極右」と呼んで政治的に隔離しても、有権者が抱える問題が消えるわけではない。

「極右」の拡大ではなく政治の軸が右に動いている

欧州で「極右勢力」がさらに伸びる可能性は高いが、正確には極右だけが伸びているのではない。欧州政治そのものが右へ動いている。デンマークの社会民主党は厳しい移民政策を採用し、ドイツやフランスでも国境管理の強化が議論されている。

移民政策への疑問を「極右」と封印し、EUへの不満を「ポピュリズム」と片づけ、治安への懸念を「偏見」と説教してきた。その結果、既成政党ではなくAfDがその不満をまとめて回収した。国政選挙で多数派になる可能性もある。

ドイツ人が突然「極右化」したのではなく、EUや既成政党が「きれいごと」で封印してきた移民への違和感が顕在化したのだ。その意味では、公民権運動以来の黒人への優遇措置が見直されているアメリカとも共通の傾向である。

「極右が拡大している」と嘆く前に、その極右をここまで育てたのは誰だったのか。欧州の既成政党は、そろそろその問いに答える必要がある。

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